熱くはねえけど眩しい。オレは目を閉じて、倒れていくトカゲの気配を追った。多分、ナツも同じだろう。……あれ?地面がねえ?
いつまでも落ちていく感じがする。と、思ったけど今度は何かに引っかかった。

「なんだ!?」
「おわ、わわ!」

何がどうなったんだ。暗い。上向いてんのか下向いてんのかわかんねえ。
焦った瞬間、ルーシィが見えた。

「二人とも、大丈夫!?」
「ん?」
「ルーシィ……ふぎゅっ」

オレとナツは地面に落ちた。そんなに高いとこからじゃない。誰かに抱えられてたような……?
振り返ると、バルゴが居た。その後ろには、トカゲが木を薙ぎ倒して転がってる。

「バルゴが助けてくれたのか?さんきゅな!」
「はい、踏まれそうでしたので。踏まれるのでしたら私が代わりに」
「ルーシィもさんきゅ!」
「うん!」

ナツと仕事、面白ぇな。楽しかったし、合わせ技も色々試してみたい。また、近いうちに仕事行こう。

「ナツ!」
「おう!」

空からハッピーが戻ってくる。オレは右手を上げた。ぱちん、とハイタッチする。

「これで終了ね!」
「今回は報酬全額だろ!」

ナツがルーシィと両手でハイタッチした。そのまま、手を繋ぐ。

――――ん?

「あたし、ソファを新調したいなって思ってたんだよね!」
「ルーシィは家賃が先だろー?」

んんー……?

飛び跳ねるルーシィに、ナツが手の動きを合わせてやってる。変じゃねえ、と思う。オレも、きっとこうする。

けど。なんか、ムカッとする。

そこに居るのはオレだけどオレじゃない。オレはここに居て、二人を見てる。――見てる、だけ。
でもイライラする必要なんてねえのに、なんで……ああ、そうか。オレ、仲間外れにされた気がしてんだ。はっきりしねえけど、多分そうだ。
中に割って入ろうと片足を踏み出す。その足が地面に着く前に、ルーシィとナツの指が離れてった。

「じゃ、報告に行こ!」
「おう!」
「あい!」
「……」

早足で村の方向へと帰るルーシィを、ハッピーが追いかける。結局オレはルーシィとハイタッチしなかった。ナツがしたんだから良いんだけど。良いはずなんだけど。
ナツは動かないオレを振り返った。

「仕方ねえだろ?」
「っ……」

同じオレ、ってイヤなことも多いな。考えてること、筒抜けかよ。
ナツはルーシィの後姿をちらっと見て、呟いた。

「オレが二人になっても、ルーシィは一人なんだから」
「あ……」

そうだ。今初めて気が付いた。当たり前のことなんだけど、言われるまでわかってなかった。

ルーシィは、早い者勝ちなんだ。

「ナツー?どうしたのー?」
「今行く!」

ナツが答えると同時に、オレは走り出した。ナツよりも先に、ルーシィを捕まえるために。

「させるかよ!」
「んぎゃ!」

こんな砂利道で足払いとかかけるか、普通!?しかもご丁寧にオレを踏んづけていきやがって!
オレは転んだ拍子に掴んだ石を、ナツ目掛けて投げた。こんな体勢じゃ当たる可能性は低いけど、暴投でも構わねえんだ。ルーシィもハッピーも居るんだから、ナツが石を無視するわけがねえ。二人に当たらないように落とすか燃やすかするはずだ。時間は稼げる。

「てめえ!」
「へへーんだ、全部防いでみやがれってんだ!」

オレは起き上がりざまに三個投げた。ナツは思った通り、それを避けずに叩き落してる。よしよし。
オレは体勢を整えつつ、投げやすそうな石を探した。ん?トカゲの殻の欠片の上に、黄緑色の石がある。殻に入ってたのかな。
それを投げようと振りかぶったところで、ルーシィとハッピーが振り返るのが見えた。

「何遊んでんのよ、二人とも」
「オイラ達、先行っちゃうよ?」
「うあ、待て待て!」
「置いてくな!」

ルーシィが居なくなったら意味がない。一時休戦して追いかけたオレとナツは、ルーシィを挟んで並んだ。そう、これこれ、隣にルーシィ。いつもの感覚だ。オレが増える前と、変わらない。

ナツの奴が、ちょっとだけルーシィに近かったこと。オレは、気付いていなかった。






取り合い。


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