「半分って言っただろ!」
「お前だって半分以上食ってんじゃねえか!」

夕飯、オレ達はそれぞれ違うものを注文した。オレはファイアパスタセット、ナツはファイアグラタンセット。半分ずつにすれば、違うモン食えて便利だな、って言ったのに。
睨み合ったオレ達の間に、ぴ、と茶色い物が差し込まれた。

「はいはい。二人とも半分以上食べてるんなら、それで交換すれば良いじゃない」

向かいに座ったルーシィが呆れた顔で、フォークに刺したフライを動かしてる。中身は白い。魚だな。

「もぐ」
「あっ、あたしの!」
「っ……」

ナツがルーシィのフライを咥えて、満足そうに笑った。オレの前に置いてあったファイアパスタを掻っ攫って、グラタンをこっちに滑らせてくる。
ハッピーが生魚を一口、ごくん、と飲み込んだ。

「ナツも惜しかったよ」
「……」

オレは口を閉じた。オレもフライに噛み付こうとしたけど、ナツの方が速かった。コイツ絶対、中身考えずに食ったな。
ルーシィの皿にはフライはもう無い。ラストだったのか。ちぇ。
ナツはオレが食うはずだったフライを食べ終えて、口の端に付いた衣を指で弾いた。

「んん、これ美味いな。……んな恨みがましい目で見んなよ、ルーシィ。ファイアグラタン食うか?」
「食べられるわけないでしょ!」
「んじゃ、なんかデザート奢ってやるよ」
「「「へ?」」」

オレとルーシィと、ハッピーの声がハモッた。ルーシィの食べ物を食べたからと言って、オレが代わりに何か奢る、なんて考えたこともない。そんなの、もっとでっかいことをやらかした時だけだ。
ナツはパスタをフォークで掬って、ルーシィを促した。

「何が良いんだ?ケーキか?プリンとかパフェとかもあるだろ?」
「え、ええ?ホントに?」

ルーシィは顔いっぱいに信じられないと書いてたけど、ナツの気が変わらないうちに、と思ったんだろう。付け合せのサラダを弄る手を止めて、真剣に考え始めた。

「新作食べたかったんだぁ。でも、今日はオーソドックスにチーズケーキって気もするし」

嬉しそうだな。奢ってもらうの、そんな好きだったのか。ルーシィだし、無料とかタダとかが好きなんだろうけど……そんな顔すんの、知らなかった。
ナツはカウンターをちらりと見た。ミラが居るかどうか、確認したんだな。デザート作ってもらうなら、ミラに頼まなきゃなんねえから。
オレもなんか頼むかな、フライ食べ損なったし。ルーシィと同じモンで良いか。新作、か、チーズケーキ……って、二つ食うつもりじゃねえだろうな。
ナツがフォークをぴ、と振った。

「二つは止めとけよ。ルーシィは接近戦タイプじゃねえんだから、体重増やしたって良いことねえだろ」
「……素直に太るぞって言ったらどうかしら」
「太ってもルーシィだから、オレは構わねえけど」
「それフォローなの!?って言うか、太るって決め付けてるし!」

なんか、会話に入っていきにくい。オレのセリフ、全部言われてるし。
黙ってグラタンを口に運ぶ。美味い。でも、なんか味気ない。

「ナツ、なんか出遅れてるね」
「……そうか?」

認めたくねえな、それ。
オレはグラタンを食うのに忙しいフリをした。素早く口に入れて、でもいつもよりしっかり噛む。
ナツがカラカラと笑った。

「値段は遠慮すんなよ。ルーシィにはこれから世話になるんだし」
「は、――え?」

ギルドの裏に花壇と小さい畑があって、それに水をやることを、キナナがよく『世話しなきゃ』って言ってる。でもそういうことじゃ、ねえよな?

「世話って、なんだ?」
「オレ、ルーシィんちに泊まるから」
「へ?」
「はい?」
「だってオレんち、オレが増えたら寝るとこねえじゃねえか」

そりゃもっともだ。ソファも床も、今は物で溢れ返ってる。
でもよ。

「そんなん、ダメだ」
「そ、そうよ!言ってやって!」
「お前だけずりぃじゃねえか!オレだってルーシィんちに泊まる!」
「やっぱりか!」

すぱん、と頭が叩かれる。でももう何したって無駄だぞ。決めたからな。

「一人に戻るまで、ルーシィんちで寝泊りする。決定!」
「おー!」
「あい!」
「あたしの許可はー!?」

ナツと目配せして、にやりと笑う。よし、ルーシィのケーキ、オレも半額出してやろっと。






ナツを二人泊めるっていびきの二重奏になるんじゃなかろうか。


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