ルーシィの部屋は二日ぶりだ。何も変わったところはない。
「「ただいまー」」
「いまー」
「……ただいま、って、あたしが言うセリフよね?」
最後に入ってきたルーシィが鞄を机に置いた。オレは先にソファに、……って。
「お」
「ん」
いつもみたいに向かおうとして、オレはナツにぶつかった。そっか。指定席が一つしかねえもんな。
とりあえず、ソファの端に座る。あれ、これ……オレが二人座ったら、ルーシィが座れなくなるじゃねえか。
ハッピーが隣に飛び乗ってきて、ナツもソファに座った。ぽん、と膝を叩く。
「仕方ねえな、ルーシィはここ座っても良いぞ」
「重いだろ」
「バルゴなら喜びそうだよね」
「お仕置きじゃねえよ。修行になるんだ」
「なるほど。じゃあオレも」
「オイラもー」
「ハッピーは止めとけ、死ぬぞ」
「座らないわよ!」
ルーシィは並んでぽんぽんと膝を叩くオレ達にツッコミを入れて、風呂場に続くカーテンを開けた。
「お風呂の準備してくる。……あんたら、一緒に入るの?」
「はあ?自分と一緒に風呂入りたがるのなんてルーシィだけだろ。変なこと言うなよ」
「……」
言ってやるとルーシィはちょっと膨れて、カーテンの中に消えてった。あ、風呂沸かすの手伝えば良かったかな。ま、良いか。
……ん?なんかナツが、口を手で押さえてる。
「どした?」
「いあ、今の。一緒に入るのかって訊かれただろ」
「おう」
「一瞬、ルーシィと一緒、って意味かと思ったんだよ」
吸い込んだ息の吐き出し方がわからなくなって、オレは鼻から空気の塊を出した。咳き込むのに似た、すっきりしねえ感じ。
ハッピーがこっちを見上げるのが、見なくてもわかる。オレは慌てて、でも表面には出ないように、瞬きだけした。
「ルーシィがそんなん訊くわけねえだろ」
「そうだよなあ。なんだオレ、疲れてんのか」
疲れてる?そうだな、オレも今日は二人に増えて疲れた。そうだよ、疲れてんだ。わけわかんねえ勘違いしやがって。
ハッピーが手を丸めた。ナツを見上げる。
「それ、願望じゃないのー?」
「がっ、願望?」
「んなわけねえだろ」
なんだこれ、落ち着かねえ。誰かをからかうなら、ハッピーに便乗するか無視するか、だけど……オレ相手、ってなるとどっちも出来ねえじゃねーか。
オレはナツから目を逸らした。カーテンが揺れる――あ、ルーシィが出てきた。
「あたしお風呂入ってくるね。飲み物だけ出しとくから、適当に待ってて」
「おう」
ルーシィはオレ達にジュースを出してくれた。ローテーブルに置いて、そのまま脱衣所に入っていく。
ナツがジュースを一気に飲み干した。
「そんな喉渇いてたのか?」
「ちょっとな」
からんと氷が鳴る。ナツは立ち上がって、ベッドに移動した。倒れるようにうつ伏せになったかと思うと、ごろごろと転がる。
「おい、まだ寝るなよ」
どさくさに紛れてベッドで寝ようってんじゃねえだろうな。ルーシィが居ない間にベッドを占領、ってのは、オレが何度もやってきたことだ。信用ならないどころじゃねえ。