オレの顔をした奴がちらっとルーシィを見る。目が合ったんだろう、金髪が揺れた。

「ナツ……?」
「ルーシィ、オレがわかんねえのか?」
「えっ、え?」
「騙されんな、ルーシィ!」

敵意はねえ、みてーだけど。オレのフリしてギルドに潜入してるだけで十分だ。つか、オレが居るときに潜入するってどんだけアホだ。オレがアホみてえじゃねーか、ムカつくな。
ルーシィは戸惑ってんのか動かない。だから、そっちにお前が居るとオレが偽オレみたいに見えるんだっつの!

「ルーシィ、こっち来い!」
「うっせえな、お前。別に良いじゃねえか、ルーシィがこっちに居ても」
「良くねえ!ルーシィ!ハッピーだってこっちに居んだから……あ!ハッピー!」

そうだよ、ハッピーが居るじゃねえか!ハッピーならわかるよな、オレが本物だって!ガキの頃からずーっと一緒だったんだもんな!
でもハッピーはオレの期待したことは言ってくんなかった。

「ナツが二人かあ、ちょっと騒がしいけど楽しいかも」
「ハッピー!?」

偽オレが嬉しそうに笑いやがった。

「はは、さすがハッピー!オレの相棒だ!」
「あい!」
「ちっがーう!オ、レ、の!相棒だ!」
「ちょ、ちょっと待って。本当にどういうことなの?」

ルーシィが片手をおでこに当てた。オレだって知りたい。

「どっちが本物?」
「オレ」
「オレだ!」
「じゃあどっちも本物として」
「そんなんあるわけねえだろ!?」

ルーシィ寝惚けてんのかよ。あれ、でも目がマジだ。

「わかんないわよ。何か変なことして増えたかもしれないじゃない」
「変なことって何だよ?」

そうだ。何も特別なことをした覚えがない。食いモンだって飲みモンだって、いつもと同じだ。リクエストボードや書庫には近寄ってもねえし、魔法のアイテムっぽいモンにも触ってねえ。グレイの口になんか仕掛けられてたならわかんねえけど、グレイだって驚いてるし有り得ねえ。
ぽかーんて口開けっ放しじゃねえか。服着てねえし。

「滅竜魔導士って増えるのか」
「増えるか!」
「どうしよう、私、突然二人になってたら」

ウェンディ、お前、心配そうに言ってっけどよ、今まさにどうしようなんだけど、オレ。

「よし、こうしよう」

偽オレがぽん、と手を打った。

「オレはナツ。お前はナスな」
「誰がナスだよ!」

随分余裕あんじゃねえか。
オレは一歩で距離を詰めた。奴のマフラーをぐい、と引っ張る。

「ぐ、手触りまで一緒かよ」
「そりゃ、オレのだし」
「てめえ……マジで何者だ?何が目的でオレのフリなんてしてやがる」
「だから、オレはナツだ。わかってんだろ?お前だって」
「っ!」

びくりとした。なんだコイツ、見透かしてくる。
確かに、オレはコイツがオレだって思い始めてる。根拠も何もねえけど、そんな気がする。でもよ、オレが二人なんて、そんなん、簡単に認めるわけにゃいかねえんだよ!






焦るナス。


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