「自分で作ってるの?」
ルーシィがリサーナの弁当箱を覗いた。
「うん。私には姉と兄がいてね。4人分作ってるんだ」
「へぇー。すっごい綺麗で美味しそう!それ、何?」
「まぐろのフライ。食べてみる?」
「え、良いの?じゃあ、あたしのどれでも食べていいよー」
差し出された弁当箱から、リサーナは春巻きを選び取った。
「あ、美味しい!」
「ん、こっちも美味しい!これ、中身…もしかしてきんぴら?」
「当たり!」
きゃいきゃいと盛り上がる二人を、ルーシィが食べたまぐろのフライを口に入れながらナツは見ていた。
(なんかオレ…場違いじゃねぇ?)
(周りの皆もそう思ってるよ)
言われてみればさっきからナツに向けられた視線は好意的なものではない。半眼になって弁当を掻き込んだ。
「え、これルーシィが作ったの?」
「うん、あたしも一人暮らしなの」
ルーシィの言葉にナツはぴたりと止まった。急にさっきリサーナが美味いといった春巻きの味が気になり始める。
「オレにもくれよ」
「へ?あ、春巻き?えー、もうこれ一本しかないのに。まぁいいや、はい」
弁当箱には春巻きは2本だけしか入ってなかったらしい。遠慮なくナツは箸で摘まんで口に放り込む。
「ん、美味い」
「あはは、ありがと」
ルーシィは照れたようにはにかんで、手を振った。なんか返すべきか、と思って残り少なくなった自分の弁当箱を見下ろすと、
「ああ、いいよ。男の子はたくさん食べるでしょ」
にこり、とナツを制して笑うルーシィに、ナツは驚いて目を見開いた。
「お前良い奴だな」
「え、いや…こんなことで…」
呆れたようなルーシィの視線にも、ナツはにっと笑ってみせる。
「ナツ、お弁当足りない?」
リサーナが箸を唇に当てて、首を傾げた。
「足りねぇって程じゃねぇけど、まだ食える」
「いいわねぇ、男の子は食べても太らないから」
ルーシィが口を尖らせるのを見て、ナツは何も考えずに返す。
「お前は脂肪付きそうだな」
「ちょっと!何?どういう意味!?」
ぴ、と箸を向けて噛み付いてくるルーシィ。その反応の良さにナツは口元をにやりと歪めた。視線をその開いた胸元にやって、言ってやる。
「肉付きいいじゃんか」
「セクハラ!」
顔を真っ赤にして足をだむ、と踏みつけられた。一拍置いて、ナツの足に痛みが走る。
「いってぇ!おまっ、それ痛すぎるぞ!」
「あんたが悪いっ!」
堅いヒールの角で思い切り良く踏まれた足の甲が、ずきずきと熱を持つ。なんて奴だ。
「今のはナツが悪いわよね」
「ねー」
リサーナが冷たい目をナツに向けるのに、ルーシィが同調する。ナツは痛みで少し涙目になりながら、頬を膨らませた。