注意深く続きを拾う。が、喋ったのはレビィだった。しかもぼそぼそと言っていて、断片的な単語ばかりが聞き取れる。

「『可愛い』……『興味ある』」
「っ!?」
「わけわかんねえな、何の話してんだ」
「……?……っ、……」
「ん?」

ふと気付けば、ルーシィがぐったりとしていた。疲れたような顔で焦点の合わない目を投げやりにやや下へ向けている。
そんなに強く塞いでいるつもりはないが、酸欠になったのかもしれない。ナツは彼女の口を押さえていた手を外してやった。

「はあ……あんたね」
「なんかあいつら、お前のこと話してるぞ」
「へ?なんで?」
「さあな」

とにかく、話題にしているのはガジルではなくレビィのようだ。バトルに関係するような話ではない。それどころか、その気配すらない。

「喧嘩してるの?」
「いんあ、そんな感じじゃねえ」

ナツは二人に興味を失った。人の会話に聞き耳を立てるのも飽きている。

「つか、隠れる必要なくね?」
「アンタが隠れたんでしょうが。あっ……ね、ねえ、いい加減離れて」

思い出したかのように突然胸を押してくる。
その仕草が直線的で慌てたものだったので、ナツは意地悪してみたくなった。素直に離れてなどやらず、瞳を覗きこむ。

「えっ?な、なな、ナツ?」

十分に視界を狭めてから、死角になった両手を彼女の脇に差し込んだ。

「ほーれほれ」
「きゃっ!?ちょ、こら!やだ、くすぐった……あはは!」

ルーシィは逃げようとしたが、もちろんナツは足を外さなかった。身を捩らせる彼女を木に縫いとめて、擽り続ける。

「ひゃ、はは、もう!や、あははは!」

黒い影が木の横を通っていく。体格差のためほとんど隠れていたレビィとだけ目が合ったが、ナツはさらりと無視をした。ここでルーシィを手放すのは勿体無い。

「うわあ、イチャイチャしてる……」

レビィの呟きはルーシィの笑い声に潰される。ナツは呆れて聞こえないフリをした。こんなこと、ルーシィとなら日常茶飯事なのだ。女というのは何かとそういう風に見るが、ナツにとってこれは当たり前。きっとルーシィにとっても当たり前。

「あんなの、いつものことじゃねえか」

ナツの気持ちは通り過ぎていくガジルがつまらなさそうに代弁してくれた。こういうときには、やはり男同士通じるものがある、と思う。
ひぃひぃと呼吸を乱すルーシィを抱えるようにして擽りながら、ナツはガジルの背中を一瞥した。気分的には親指でも立てたかったが、今はルーシィに集中する。

ルーシィがきっと今、そうであるように。

「初めからこうすりゃ良かった」
「ひ、ぅ、やっ、あは、あははは!も、もうやめ、て、し、死ぬ……!」

立っていられなくなったのか、ルーシィがしがみついてくる。ナツは求めていたものがやっと手に入った心地で、彼女の体重に逆らわずに倒れた。






自分だけを見てくれる幸福。
お付き合いありがとうございます!



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