ナツは憤慨した。
ガジルは捨てゼリフを残して去っていくし、ルーシィは心配そうな顔をしてギルドの入り口をちらちらと見ている。こっちに集中してくれない。
せっかく本から引き離したというのに、これでは無意味だ。会話にしても悪戯にしても、上の空の彼女では楽しさが半減する。

ガジルの野郎。

ルーシィがまた横を向く。仕方がなく、ナツはまず障害を排除することにした。

「尾けてみようぜ」
「え?ガジルを?」
「おう。気になんだろ?」
「べっ、別に、あたしはそんな……出歯亀みたいなこと」
「……」

言葉は否定だったが、ルーシィはそわそわと肩を揺らした。そんなにガジルが気になるのか、とイラッとする。
それに、言葉の意味がよくわからない。

デバガメって何だ?バガメ?バガ……バカ?

「ガジルはバカで間違いねえと思うぞ」
「へ?え、んん、そう……かどうかはちょっと、あたしからはわかんないけど」
「ああ?」

何故ルーシィがガジルを庇うのか。イライラがあっと言う間にナツの忍耐を突き崩した。じっとしてなどいられない。

「だってほら、ガジルはレビィちゃんの……。あたしが悪口言うのって、なんか、その、悪いかなって思うし」
「何ごちゃごちゃ言ってんだよ。行くぞ」
「えっ、ええ?」

手首を掴んで多少強引に立たせる。ナツが引っ張って行くと、ルーシィは大人しく付いて来た。それも気に入らない。ガジルを追いたいと言っているようなものだ。
ルーシィはわかりやすい。彼女の望むことくらい、ナツには手に取るようにわかる。が、こんなことをわかりたくなかった。
ちっ、と舌打ちする。

「ナツ、なんか……怒ってる?」
「……」

ナツはルーシィを振り返った。確かにイライラはするのだが、怒っているのとは違う気がする。もっとこう、そう、気に食わない。

そしてどこか――寂しい。

「別に。さっさと追うぞ」
「ホントに行くの?」
「んだよ、決まってんだろ」

そうしなければこっちを見てくれないくせに、とナツは眉根を寄せた。まだぎりぎりギルドの床に立っていた彼女を、ぐい、と引っ張る。
ガジルの匂いは女子寮の方角に続いていた。不審に思った直後、そういえばレビィが走り抜けていった、と思い出す。

はっとした。

「そうか、ガジルの野郎……レビィを追ってったんだな」

男が人を追いかけるなど、理由は一つ。勝負するに違いない。場所を変えてまでなどと、どれだけ本気のバトルをするつもりなのか。

「へ?当たり前でしょ?」

ルーシィの肯定を耳に入れて、ナツは彼女の腕を放した。それならば自分も混ざりたい。勝った方と決戦も良いが、できれば二人ともとバトルしてみたい。ガジルとは何度も闘ったことがあるが、レビィと対戦したことはない。






ナツの方が若干マシ……ということもない。


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