神様の手
運命というのは必ずしも良い事や幸せな事ではない。
それはよく知っていた。
例えば中学生の時の席替え、クラスで一番かわいい女の子と隣になった俺はとても喜んだ。
でも女の子は俺の前にいた男と隣が良かったようで、目が悪いと先生に言ってくれないか、と頼んできた。
これも運命。
選ばれた人生、選ばれなかった人生、どっちも運命なんだ。
ガタン
大きな音を立てて車体が揺れた。
扉側にいた俺の身体は次々と人の波に押し潰された。
多分きっと俺はこのまま死ぬのかもしれない。
選ばれなかった人生、これも運命。
俺は嵩張ってくる重みの中、息苦しくて眼を閉じた。
「…やあ、漸く起きたね。」
ぱちりと眼を開けると上に大きな花がぶら下がっていた、そして隣からそんな優しい声。
「あ、えっと…」
白に近い金色の、艶がある長い髪の毛を肩に垂らした美人…という表現を男の人に使っていいのかわかないが…兎に角綺麗な男の人が穏やかな笑みを浮かべて俺を見ていた。
俺はベッドに寝ていたようで起き上がると掛けられていた毛布が胸から滑り落ちた。
「体調に変化はないかな?」
「あ、えっと…大丈夫ですけど…」
どう考えてもここは病院とかいうわけではなさそうだ。なによりこの人から医者という雰囲気は感じない。それに俺の知り合いでもない。
「庭に倒れていたからここに運んだのだけど、迷惑だったかな…?」
「に、庭…?」
「うん。庭と言っても少し離れた所なんだけど、偶然散歩していてね。
そしたら君が倒れていたんだ。」
「庭、なんて…」
俺は電車の中で押し潰されていたはずで、…もしかしたらここは夢の中…?
夢の中だとしてもこの感触といい自分の呼吸といい、リアリティあり過ぎじゃないか?
「ただ、身体に特に外傷はないから貧血じゃないか、って医者が言っていたよ。」
「ひ、貧血…あの、助けて下さって有難うございました。
ところで、ここは何処ですか…?」
「ううん、大事じゃなくて良かったよ。」
そう言ってまたにっこり笑った男の人。
「ここは国の中心にあるお城だよ。」
「お城って、…お城?」
姫路城だとか松本城だとか熊本城だとか?
…そんな訳ないよな、多分俺は本当に頭を打ったりして夢の中にいるのかもしれない。
「うん。お城だよ、僕の名前は知ってたりしないかな?」
「…申し訳ないです、存じ上げません。」
「大丈夫だよ、僕はヴィルヘルム。
ヴィルって呼んでくれたら嬉しいな…君の名前も教えてくれないかな?」
ぶ、ヴィル…やっぱりどう考えてもここは日本では無さそうだ…何処の設定なんだろう?
「えっと、安庭貴史って言います。あっ、貴史安庭です…」
ヴィルさん言える…かな…。
日本語が通じてるって言うのも謎だし…ますますどういう設定なんだろう…。
「ヤスニャ…キフミ?
変わった名前だ、響きが美しいね。」
「あ、…ヤスニャ…ありがとうございます。」
ヤスニワ、なんだけど…言い辛いならまあいいかな。あんまり名前には拘りないし…ニックネームだとでも思えば。
「キフミ、キフミ…キフミ…。
何だか舌の上でキャンディが踊ってるみたいだ。うん…キフミ。」
「ははは……」
少し俺が返答に困って愛想笑いをしているとコンコン、という軽い音で扉が叩かれた。
今気付いたけど、部屋がとても広い…ドアも軽い音はすれど、重厚そうだ…。
「良いよ、入って。」
「…失礼します。
陛下、他所者と一緒のお部屋では少々危険が伴うかと思われます。ですからこの私めをどうかお側に。」
「僕はキフミと二人だけで話したいんだ。
君は十分に役に立ってくれているけど、僕だって男だよ。キフミ位の体躯なら簡単に押し倒せるさ。」
「………」
えっ、なんか俺今ちょっと悪口言われたような気が…。
まさか自分の夢で自分の悪口を言われるとは…。
「それよりもキフミの身体を清めてあげたいんだ。一緒に湯浴みをしても良いかな?」
「…侍女に申し付けますので、陛下はごゆっくりお一人で湯浴みをなさっては如何でしょうか?」
「うーん、…今日はそうするよ。
明日は二人でゆっくり入る事にするからね。」
ね?キフミ。
そうヴィルに振り返って言われるが、良く分からなくてとりあえず頷いておいた。
「キフミ、この人について行って?
大丈夫、変な事はしないよ。そんな事されたらすぐに言ってね?」
「え、あ、…ハイ…?」
とりあえず頷く。
「こっちへ来い。」
「エルラ。…言葉に気を付けて」
「っ…こちらへどうぞ。」
冷たく言い放ったヴィルに、エルラと呼ばれた人はビクリとして言い直した。
そ、そんな怒るほどのことでは…ちょっとぶっきらぼうな言い方だけど別に普通な言い方だったし…。
エルラに誘導されるがままに着いて行く。
後ろを振り返ればヴィルがにこにこと笑顔で、
あ、と、で、ね
と、口パクでそう言った。
「…ちゃんとついて来い。」
エルラの歩幅は俺の2倍あるように思える。
俺が一歩歩くたびに差が開いて行くので、着いて行くには小走りしかなかったが、それでも差は開いて行く一方で、ついにそう言われてしまった。
「すいませんっ…!」
そりゃあ俺は日本人なわけだから足が短い。だからってこんなに違うとは普通思わないだろう…。
「お前、脚短いな。」
「…そ、そうです…ね…。」
「…何故あんな所で倒れていた。乞食か…?」
「こっ…!」
乞食、だなんてそんな…ホームレスか何かに見えるのだろうか、俺。
「…あの、俺は…」
「まあいい。女の前にお前を出すにはいかない、俺が監視をする。」
「あっ、ハイ…」
多分身体チェックの代わりか何かだろうけど、俺はエルラの前で入浴する事になった。
ひとつ分かったこと、
ここは日本ではない、それに夢でもない。
入浴をして改めてわかった。
あんなに水の感触が身体に触れて、泡だってちょっと大きく息を吹けば弾け飛んだ。
俺は生きて、確かにこの世界に存在しているんだ。
「どうだった?」
「あ、とても良いお湯でした…ありがとうございました。」
髪の毛の匂いを嗅がれながらヴィルにそう問われて、俺は答えた。
「ううん、良かった。
…明日は僕と一緒の匂いになろうね。」
「あ、はい…」
一緒の匂いって…あ、石鹸とか高級なの使ってるのかな、ヴィルは。
「ねえ、キフミ。
なんであんなところに倒れていたの?」
身体をヴィルの方に引き寄せられて、背中を預けて座るような体勢になってしまった。
心なしか斜めに立っているエルラの目が厳しくなったように感じる。
…絶対俺の事変なヤツだと思ってるよ…エルラさん。
「俺も、その…よく分からなくて。
記憶が途切れ途切れというか…」
「故郷とかは?」
「あ、の…」
日本だとか、東京だとか言っても信じて貰えそうには無いよな。
俺の身体と顔には異変無かったし、どっか違う人になってしまったとかでは無かったけど、明らかに自分の知っている環境、世界とは違う。
「ん?」
「…覚えて、なくて…。」
こう言うのが一番良いよな。
多分言ってもわかってもらえないだろうし、戻れる手段だって分からなそうな気がする。
「そっかぁ…じゃあ、帰る場所が無いって事だよね?」
「え、…あっそうですね!」
ハッとして気付いたのはこれからの自分の宿。
まさか野宿とか、じゃ無いよな…。
お金だって持って無さそうだし、持ち物だって着ていたものだってあるかすら分からない。
「ここに住みなよ!」
「陛下!」
「大丈夫だよ、キフミは大丈夫。
良い子だよ。ね?」
頭を引き寄せられて、頬ずりをされる。
そういえば、陛下…って言葉も気にかかる。
だって陛下って言葉の前に国王、だとかそんなのが付くよな?
…王族?貴族?…ヴィルはそんな感じの人なのか?
「…陛下、では私がこの…」
「キフミ、だよ。」
「キフミ、様の護衛を私が務めさせて頂きたく存じます。宜しいでしょうか?」
「そうだね、エルラなら彼を任せられるよ。
…でも、万が一キフミの身に何かあったら君を許さないよ?」
「…っ、はい。その様に肝に銘じておきます。」
と言うわけで、俺の意思関係なく話が進み…まあ助かったけど…俺はヴィルのお城に住まわせてもらう事になった。
エルラさんは良い気がしていない様子だったけど、多分ヴィルの言う事には逆らえないらしい…。
食事の後、俺の部屋に案内してもらった時にはあからさまに敵視したような顔で…
「貴様には俺という監視が四六時中付いて回ると言う事を忘れるな。
陛下はお優しいが、誑かそうなどと思うな。
最もその前にこの俺様がお前の正体を暴いてやるからな…」
と部屋の前でそう告げられ、俺は黙って頷いて好きにして良いと言われた部屋に入った。
クリーム色を基調としたような豪華な部屋に息をのんだが、ベッドの上に着くと寝落ちするのは早かった。
「起きて、おはようキフミ。」
「ん……」
また、透けた金色の髪が視界に入る。ユラユラ揺れるそれはとても綺麗だ、俺の少ない言葉じゃ表せられないくらいに。
「おはよう、ヴィル…」
何日か経ったが、未だに俺はここにいる。
ここに居て、普通に生活している。
驚く事に気付いたのは、ここの本が読めるという事だった。日本語というわけでは無いのに、不思議だ。
「今日も書庫に行くの?」
「うん…うん。」
「そっか。偉いね、キフミは。
ちゃんとした学を学んでいたのかな…、」
俺を不思議な色の瞳に映したまま、ヴィルはぼうっと…どこか遠くを見つめたような顔になった。
「ヴィル…?」
「あぁ、ごめんね。
外には出られないけど、誰かに言ってくれれば何か必要なものはお使いに行ってくれるからね。お菓子とか…本とかも、なんでも言いなね。」
「ヴィル…。
うん、ありがとう。」
「今日も僕は仕事があるから、…たまにキフミのこと見に来るね。」
「うん…わかった。
行ってらっしゃい…」
手をひらひらと振りながらにっこりと笑み、ヴィルが部屋の外へ出て行った。
ヴィルに見つけられた事はとてもありがたい。
感謝してもしきれない、…なんだけど…。
「……はぁ…」
やっぱり、ヴィルはこの国で一番偉い人だと言う。
だから、俺が迂闊に外へ出て捕まってしまってはいけないから、と外へ行くのを禁止されてしまった。
だからこの城内しか出歩けない。それにいつもエルラさんと一緒に行動しなければいけない。
この部屋では自由にできるけど、窓はあるのに地面からはとても高いし…まるで塔に閉じ込められているような気分になる。
景色は森ばかりで、街なんてものあるのかと疑いたくなるくらいだ。
「…あ、おはようございます。」
部屋を出ると、案の定何時ものようにエルラさんが部屋の前に立っていた。
「…おう。」
「今日も、書庫に行こうと思います。
すみません、いつも付き合って頂いて。」
「や、別に…仕事だし。
つか…お前、顔色悪いぞ。」
エルラさんは最初とてもトゲトゲしてて、いつも文句を言ってきたりしたが、最近はなんだかとても丸くなった気がする。
警戒心が薄れてきたってことかな?
「そうですか?」
「…朝が食べれないなら、フルーツとかでも食べれば良いんじゃねえの?」
「…そう、ですね。ちょっと聞いてみます。」
お城はとても広い。
なのに、何人かのメイドさんや執事さん達しかいないみたいだった。
あとは護衛の人もいるみたいだけど…何故かあんまり見た事は無い。
だからいつも大体エルラさんに頼ってしまう。
「……」
最近、ここに慣れすぎたせいか日本での事を忘れる事が多々ある。
まだ何日かしか経っていない筈なのに、もう何十年も前の古い記憶みたいだ。
戻った時にちゃんと過ごせるのかな…。
「おい…、今日は寝てろよ。
歩き方、フラフラしてるぞ」
「そんなわけ無いですよ。」
「お前の言う事は聞いてない。
お前が倒れたら俺に跳ね返ってくるんだ、だから今日は大人しくしてろ。」
「ん、…はい…。」
「…チッ。
運んでやるから俺の首に、腕回せ。」
「ぁ、えっ」
瞬間ふわっと、浮遊感。
慌ててエルラさんの首に腕を回した。
まさかこんな事してくれるとは思わなかった。
そういえば意外と面倒見良いんだって前も思った気がする…。
「勝手に部屋入るぞ」
返事をする前に部屋に入っていくエルラさん。
ベッドまで運んで、その上に降ろされる。
吊るされた花たちがゆらりと揺れて、微かな匂いが鼻につく。
「…この花、」
エルラさんはその花に気付いたらしく、それに手を触れようとしてはた、と止まった。
「これは、誰が…?」
「あ、えっとヴィルが毎日持ってきてくれますよ…?」
「陛下が…。
…これは少し毒がある花だ、少量だがめまいなどを引き起こす。」
「えっ」
「それを何故陛下はここへ…。」
エルラさんはポケットから手袋を取り出して装着し、その花たちに触れた。
「窓際に置いておくが、陛下には毒のことは言うな。自分で置いたと言え。
俺がここに入ったと言えばなんて顔をされるかわからないからな」
「あ、ありがとうございます。」
エルラさんは手袋を外し、さっさと出て行ってしまった。
「…あの花、毒があったのか」
あんなに純白で綺麗で、いい香りだってするのに…人は見かけで判断するなってことかな。
そう思ってひとり笑った。
「おはよう」
眼が覚めて、初めて視界に入ったのはヴィルの綺麗な微笑みだった。
「あ、おはよう…」
「ここにあったお花たちは、どうしてあそこへ?」
「あ、綺麗だったんだけど、あそこに飾っている方がいいかな、って。」
「…うん、確かにそうかも。手に届くようで届かない、それもいいかもね。」
「?うん、そう、だね。」
よくわからないけど、とりあえず頷いておいて損はないよね…。
「キフミはいつも僕が知らないことを教えてくれるね。」
「えっ?そうかなぁ…。」
「うん、そうだよ」
例えばなに、なんて野暮なことは聞かないけど…褒めてくれてるのかな…?
そう受け取っておくべきだよね。
「さあ、夕食の時間だよ。起きれるかな?」
「あ、起きれるよ!
あれ…俺そんなに寝ちゃってたんだ…」
エルラさんと別れたのはお昼前だったから、6時間以上寝てたのか…。
そんなに寝不足だったって気はしなかったんだけど…本当にあの花のせいだったりして…なんてね。
「どうしたの?キフミ」
「ううん、なんでもないよ」
「そうなの?
…キフミの考えていることが、全部分かっちゃえば良いのにね。」
そう言って俺の手を握るヴィルに俺はなんて返して良いかわからなくて、曖昧に笑った。
なんだか思いの外ヴィルは俺のことを気に入ってくれてるみたいだ。
「その後、変わりはないか。」
「えっ?」
「あの花だ。」
そう言われてあの白い花がいつのまにか枯れていたことを思い出した。
花ってどれくらいで枯れるのか知らなかったけど、結構持つんだと思った気がする…
「もう花は枯れちゃいましたよ」
「陛下はまたなにかお前にやったりだとかはしてないのか」
「いや、…たまにお菓子とか持ってきてくれるけど…。」
「原料は。」
「え、げ、原料…?」
そんなこと言われてもなあ…。
あ、でもさっきもなにか持ってきてくれた…
俺はいそいそと窓際のテーブルに向かう。
「これ、持ってきてくれるよ。
あんまり、口に合わなくて食べきれないんだけど…。」
「あけてもいいか」
「もうお腹いっぱいだから食べて欲しいな…」
残すのはやっぱり悪いしね。
「……これは…」
スンスンと匂いを嗅いだ後に顔を顰めるエルラ。
俺は首を傾げつつその様を見ていた。
「…お前は多分、陛下に気に入られている。それにつけあがったりもしていない。」
「えっ?…そう、かな…」
「俺も、お前は悪い奴だとは思わない。」
「………」
なんというか、こんな真向から褒められるのは初めてで、恥ずかしい。
ちょっと視線を反らした。
「真剣な話なんだ。
お前はこの城から出た方が良い。」
「えっ?
えっと、やっぱり俺ってお荷物だったりする…?」
やっぱりこんな、居候のくせに手伝ったりしないし、仕事も持ってないやつをずっと住まわせるわけないよな…。
「お前はこの世界を知らなすぎるんだ。ヴィルヘルム陛下のことも、すべて。」
「………」
「きっとお前ならどこかでやっていける。
資金も持たせるが、絶対に陛下に見つかるなよ。
このことも、陛下には絶対に悟られるな。」
そう言ってエルラさんはそのお菓子を持って部屋から出て行ってしまった。
「…もう少しで陛下がここにやってくる。
もう菓子は食べて俺が持って行ったと言え。」
「あ、はい…っ」
エルラさんが出て行ったすぐ後にヴィルが本当に来て、笑顔でさっきのお菓子のことについて尋ねてきた。
俺はエルラさんの言う通りの答えをした、するとヴィルは俺を抱きしめて来る。
俺は不思議に思いながらもヴィルのことを抱きしめ返した。
「気に入ってくれたみたいだから…また、あのお菓子持ってくるね」
「あ、うん…ありがとう、ヴィル。」
なんとなく違和感を覚えるが、エルラさんの言葉が無ければふつうのことに聞こえていたんだと思うと、…。
エルラさんが嘘ついてるとかじゃなくて、なにか勘違いしてるんじゃないかとも取れるし…。
「起きろ」
朝、珍しくヴィルではなくエルラさんが起こしに来た。
聞くとヴィルは急に隣国に出向くことになったらしい。
「今だけしかない。」
「い、今だけ…?」
「もし出ていくとしたら今日しかない。資金はたくさんある、金もここでは価値がある。」
そう言って少し大きな袋を渡してくれるエルラさん。
「ここにはいらないものばかりだ。無くなったって気づきはしない」
「あ、あの俺は…。」
「ここにいてもいい。陛下の隣で死にたいのなら構わない。」
急に渡された袋がずしんと重く感じた。
「…とりあえず、人がたくさんいるところに出ればいい。もし失敗したとしてもお前なら外に出たかったと言えば済む。
だが何回もあると思うな、失敗したらそれだけ寿命が縮まると思え。」
脅されたような気持でエルラさんに導かれ、裏口と言われたところから城の外に出た。
「お前が生き延びることを祈っているぞ」
そう言われて肩を押されて俺は歩き出した。
久々の外なのに、すがすがしいどころか迷子になったような気持ちになった。
少し歩くとだんだんと天気が悪くなってきて、またそこからしばらくして雨がザアザアと降ってきた。
そのころようやく人がぽつぽつといるところに出ていたので、見つけた人たちを頼りに宿泊先を見つけた。
食べ物などを買っている時にお金のことを考えてみたんだけど、俺が思っていたよりもずっと大きな金額を持っていたみたいだった。
意外と知らない土地でもやっていけるんだな、そう思ってその晩は床に就いた。