ストーカー


   




俺は最近やたらとコンビニに通っている。
何故かというと俺の好みのタイプの女の子がいるからだ。
その子はまだ新人さんらしくてバッジには実習中とついているのでレジの対応がなんだかぎこちない、俺はそれをいつも微笑ましく思いながら見ている。
けしてストーカーなどではないぞ。ただ見ているだけだし、ちゃんとお店の稼ぎにも貢献しているし、なんの罪も犯していない。
ただちょっと立ち読みをしながら盗み見ているだけだ、そう、ただちょっと。

「いらっしゃいませぇー」

きっと語尾を上げるように言われたのだろう店独特の掛け声に俺は内心可愛いなあと笑みをこぼして雑誌コーナーへ足を向けた。
今日は確かジャンプの発売日だったっけ…

暫くしてちょこちょこと歩き回っている女の子を何回か見た後満足して俺は商品を見に行こうと雑誌をもとの場所に戻した。
うーん、何食おうかな…
ぶっちゃけ家に帰れば母さんが飯を作ってくれているし、そんなに買うものはないのだけどもなんていうか見せてもらったのにただで帰るって…と俺の良心がそう言っているんだ。イコール最近のお財布事情はなんとなく厳しい。

新発売だとでかでか書いてあったチョコレートを手に取って会計をしてから店を出た。

…のだけども。

「ダメですよ?万引きなんてしたら。」

そう言って男の人が俺の腕を掴んできた。
え?ま、万引き…?

「ちょっ、俺万引きなんてッ」

えっ、えっ、と慌てる俺をよそに男の人は俺の腕を引っ張ってきてまた店のなかに逆戻りだ。なんでそんな誤解が…?
俺は何もしていないのだからと無抵抗について来てのは裏の事務所だった。
こんな作りになっているのか、となんだか感心していると

「座って」

そう言われてパイプ椅子をトントンと叩く男の人。
俺は無言で言われた通りにそこに座ればバッグのなか、見せてくれる?と聞かれた。

「あ、はい…」

俺は無実なんだからとパッと薄っぺらい鞄を開いた。

「えっ?」

そこには小さいけど新しい、見慣れた消しゴムがぽつりとあった。
なんで…?俺持ってたっけ…?

「ほら、やっぱり。万引きだね」

「え、や、違うっ俺万引きだなんてしてない!」

きっとなにかの拍子に入っちゃったんだ、それできっと…。

「じゃあこれは何なのかな?」

「だからっなんかの拍子に…」

そう言って俺は店員さんを見る。
ニコニコと男の人は笑っていた。なんでそんなに笑顔なんだよ…
俺、何もしてないのに…もしかして学校退学とか…?
嘘だろ、もう大学だって決まってるっていうのに、なんでこんな、…

「でも俺は優しいから見逃してあげるよ。もうこんなことはしないよね?」

「っ!!しないです!絶対しないです!」

「…ってことはやったんだ?」

「え、…ぁ、やってない!」

そっかぁ、と笑った男の人にああ、嵌められた。俺はそう思った。
どうやったって男の人は俺を犯人に仕立て上げたいらしかった。なんだってこんなこと…

「…ああ、そんな顔しないでよ、見逃してあげるって言ったでしょう?」

「…でも、…」

俺は半分泣きそうになりながら男の人の顔を見上げた。きっと警察に言われて俺はきっと…

「…はは、なんてね。」

「…え、?」

さっきとは打って変わってな雰囲気に俺は頭にはてなを浮かべた。
さっきは俺のこと疑ってたのに、なんてねって、…?

「大丈夫。これを入れたのは俺だよ」

「え…なんで、」

「なんでって、そうじゃなきゃ俺に会いに来てくれなかったでしょう?」

もうすぐでここでのバイトも終わるから会いに来てくれなくて困るからね。
そう言って笑いながら俺の頭を撫でた男の人に俺はますます頭の上にはてなを飛ばした。

「え、…会いに…?」

「まあ、俺はちゃんと住所しってるけどね。」

なんたって君が教えてくれたから、ね?

ちゅ、とこめかみにキスされて俺の時が止まった。
なんだって?住所を知ってる?何がどうなってるんだ…?
俺の時が止まっている間にもべらべらと男の人はしゃべり続けていて、でも俺の頭にそれは届かなかった。

「恋人なのにね、」

ハッと目が覚めたようにその言葉が頭の中に入ってきた。
恋人、まさか…誰と誰が?

「あの、なにを…?」

「?恥ずかしがってるの?」

手を握られて見つめられる。
な、なんだこれは…いったどうなってるんだ…?
なんだか甘ったるい雰囲気に押されてなにもしゃべれなくなった俺に男の人はクスリと笑った

「あ、お、俺帰ります…っ」

そう言って男の人の腕を振り解こうとしたが腕を掴む力がぐんと強くなってそれは叶わなかった。い、いたい…

「やめ、ろ!」

「どうしたの、リョウくん」

「ぁ、え…?」

どうして、俺の名前を…なんで、

「そんな恥ずかしがらなくたって俺は分かってるよ、うん。」

伝わってるから…
そうつぶやいて固まった俺の身体を抱きしめる男の人。こいつは誰だ

「俺さ、まさか誘ってくれるとは思わなくて…でもいつお邪魔して良いのかなって思ったんだけど、聞く前に勝手に足が動いてて何回か行っちゃった。」

でもリョウくんいなかったね、

「行った、って…どこに?」

まさか、まさか、
俺の頭に嫌な予感が浮かんだ。

「え?どこってもちろん、リョウくんの家だよ」

「なんで…、そんな…!」

「え?だってリョウくん俺に教えてくれたじゃん!…もしかして忘れてんの?なに、思わせ振りだったとか?違うよね?リョウくん、」

「!!…意味わかんねぇ!俺そんなことしてないし!」

ジタバタと腕の中で暴れるが男は離してくれない。このままではいけない、こいつから逃げなきゃ
逃げてそれで警察に行って、こいつを逮捕して貰おう…





ーーーーー


勘違いストーカー




×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -