スイートロッカールーム




「ちょっ、…佐野っ痛い…っ」

 覆い被さって来た佐野は、俺の腕を一纏めにして俺の自由を奪った。そしてそのまま俺の顎を持ち上げ、キスをせがむように顔を口元に擦り寄せてくる。

「紀田、好きだ……っ」
「や、んんっ……!」

 上背もあってそれに見合うほどに力も強い佐野には、ヒョロヒョロの俺の抵抗なんてアリンコみたいなものだ。
 俺はそのまま佐野のされるがままになって、程なくして蒸し蒸ししている部室の真ん中で押し倒された。

 こうなったのは夏前のちょっとしたゲームでのことだった。

『愛してるゲームやろうぜ!』

 例に漏れず流行りに乗っかったようなその部員の声に、やろうやろうと部員のほぼ皆がそれに乗った。男同士で何を求めているんだと俺は一瞬ゲンナリした。

 『ただの「愛してる」だけじゃ面白くないから、そいつの良いと思うところを言おうぜ』

 最近彼女と別れて寂しいと言っていたヤツがそのゲームにルールを追加していく。俺は特に嫌では無かったし、まあただの部活のノリだと思って付き合った……筈だった。

 そしてみんなで何順かしていた時に、ついに俺に役が回ってきたその相手が、件の佐野だった。

 佐野はよくアニメとかの登場人物に描かれているような爽やか好青年と言った感じそのままで、見た目もスタイルも抜群な為に、愛してるだなんて言葉は絶対に言われ慣れている容姿だ。

 そんなことを思いながらなんでこんな虚しい思いをしなくてはいけないんだ、と考えた。しかしまあその場のノリだと思い膝を突き合わせて佐野と向き合う。

 みんなから見て右から先という事で、その右にいた俺は佐野の整った顔を、真っ直ぐな瞳を見つめた。

「佐野の、何気ない気配りが好きだ
……愛してる」

 佐野が笑いを堪えたのか、佐野の喉がごくりと鳴るのを聞いた。みんなは無言で俺と佐野のやりとりを見ている。笑えよな……。

「俺は、紀田のそういう真っ直ぐな瞳が……綺麗だと思う……愛してるよ」

 本当に女の子に言っているように、眉尻を下げて懇願するように言う佐野に思わずドキリとしてしまった。ほかの部員もそうだったらしく、小さな声で「ヤバイ」と言う声が聞こえた。

「佐野は俺がミスした時とか、いつもフォローに回ってくれて、そういうところヒーローみたいでカッコいいと思う……愛してる」

 特に力を入れられているわけではない部活だが、それなりにプレッシャーなどはある、そしてミスも。でもそんな時いつも佐野が先を読んで助けてくれたりするんだ。本当にヒーローみたいだと思う。

「紀田の優しくて猫みたいな表情が好きだよ、小さいけど変化がわかると凄い嬉しくなって……本当に、愛してるんだ……」

 膝に乗せていた手をパッと取られて思わず視線を逸らしてしまった。

「……ぁ、アウトー!」
「え、今のはズリーだろ」
「いやでも、見てる俺らが照れるわ……」

 部長がそう言った所で、部長に合わせて他の部員がウンウンと頷く。
 まあ確かに……俺も一瞬ガチで言われているように思えたもんな……。
 そんなこんなでみんなが一周して、部員みんなが満足そうに顔を赤くして部室でのお遊びを終えたのだ。

 問題はその次の日の部活後の部室で起こった。
 掃除と鍵当番だった俺と佐野は、部員みんなが出て行った部室で着替えていた。その最中、急に改まったような緊張した声の佐野が俺の名前を呼んだんだ。

「紀田……」
「お、どうしたんだよ……」

 シャツを脱いだ所で佐野が後ろに突っ立っていたのに気付いた。俺のノミのような心臓はビクリと音を上げたが、佐野がなんだか言いづらそうな表情で床を見ているのに気づき首をかしげた。

「……俺も、同じ気持ちだったんだ」
「……?」

一体なんのことだと頭を巡らすが、一向に答えは出てこなかった。全然身に覚えがない話題だった。

「わわ」

 突然手をギュッと包み込まれて、思わず掴んでいたシャツを取り落とした。

「愛してるよ、紀田……」
「…………」

 一瞬言葉を失った俺は、はたと気付く。
 佐野のヤツ、昨日のことを引きずってるな……そう思って俺もやり返すぞと思って鼻息荒く意気込んだ。

「俺も、漫画から出てきたみたいな完璧な王子様の癖に、少し自信ないような佐野が愛しいよ。愛してる」

 ワハハ、どうだ!と心で笑いながら佐野を見つめていると、一気に涙ぐむような表情になった佐野。驚いた声を上げようとしたその瞬間、もの凄い力で抱きしめられた。

「ぇ、え……?」
「俺は、紀田が思っている以上に紀田が好きだよ」

 そう言って顔だけが一瞬離されて、佐野と顔を見つめあった瞬間に、佐野の顔がドアップになった。

「ん?! ん、ぅ……っんう!」

 必死に唇と歯を閉ざしていたが、侵入してきた舌に歯をなぞられて思わず口を開いてしまい、そんな俺の隙を巧く使って、口付けが深くなった。
 いくら遊びだったとして、誰もいない前でこんな事をするのか……?!
 もしかしてみんな隠れてて、どこかで見ているのか?

 そんな考えが浮かんだ俺は思わず抵抗を辞めた。以前、キスもしたことがない童貞だと部員にからかわれた事を思い出したからだった。でも佐野がこういう事すると思わなかったのにな、と少し落ち込んでいると、俺の曝け出している胸に何かが当たる感触。

 思わず佐野を押していた手を外して確認しようとすると、後ろにあったロッカーに頭を押し付けられるようにしてキスで押された。そして、さまよっていた両手の手首を大きな手のひらで一括りにされる。

 胸に触れていたサワサワとした感触はとうとう乳首に達して、思わず叫びそうになったが、開いた口により一層深く佐野の舌が侵入しただけだった。

 それで気付く佐野の違和感に、俺は思わず恐怖した。どう考えても佐野は俺の事を女のように愛撫しているに違いない。
 でも、以前の佐野は彼女だっていたはずだ。それなのになんで俺なんかに、佐野ならよりどりみどりだろうに。

 最初は摘んで、こねるようにしていた指先が、押し潰したり触れるか触れないかでこそばゆくさせたりするようになって、何故か俺の下半身は少し反応してしまう。
 しょうがないだろう、だって俺は健全な青少年だ。相手が誰であれ、刺激されたらそりゃ触発されるに決まってる。

 佐野もその膨らみに気付いたようで、自分の腰を押し付けてきた。その頃には唇も時々離されていたが、ろくな抵抗が出来ずにもぞもぞと腰を動かすだけだった。
 そして押し付けられた腰には硬いものが当たっていた、どう考えたって佐野のアレでしかなかった。
 俺は思わず腰を引いたが、後ろにはロッカーで完全に逃げ場は無かった。それに俺がもぞもぞとしているせいか、佐野のそこにいちいち当たっているらしく佐野が肩を揺らしたりしている。なんて地獄だ。

 そんな意図は無かったのに、佐野の瞳が期待するように潤んでいる。

「さ、佐野……俺はそんな……」
「大丈夫……最後まではしないから。今日はお互いに気持ちよくなることだけ考えよう」

 さも俺のためのように言ってみせる佐野に、俺は何も言い返せなかった。まって、どういうことだよ、今日は……って。まさかまたいつかこういう日が来るのか……?

 ずるりと下着とともにバスパンを下げられて、俺の立ち上がったそこが現れる。それとともにとてつもない恥ずかしさが襲ってきて、思わず小さく声をあげた。

「大丈夫だよ、俺もおんなじ……見て、ほら」

 そう言って俺と同じようにバスパンを下げると、そこからは太く成長した佐野のそこが現れた。
 いやいやまってくれ……どんなものを食べたらそんな大きなものが……?
 俺は佐野のそこを見て、その状態よりも先に見た目の立派さに目を惹かれてしまった。ジッと目を白黒させてそこを見ていた俺に、佐野は恥ずかしそうに笑ってから、優しく俺のものと一緒に握り込んだ。

「ぁっ!」

 突然の刺激に腰が揺らぎ、さらに佐野の熱いそこに触れる。すると佐野も小さく、吐息のような声で喘いだ。

「はぁ……、っ」
「ぅ、ぁ、あ、あ……」

 初めて受ける他人からの甘い刺激に為すがままされるがままな俺は、腰がビクビクと連動するように動いてしまう。佐野は、そんな俺を見て嬉しそうに笑っていた。

「可愛いよ……紀田……もっと喘いでもいいよ」

 恥ずかしくないから声を出して、そう言って耳元で小さく囁かれるとなんだか堪らなくて腰がビクついた。

「ぁ、ぁあっ……んん、ゃあ……」

 流されるようにして声を出した俺に、佐野は舌を出して俺の口元を舐めた。下唇を甘噛みしてから、吸い付くようにチュウチュウと舐められる。
 気持ち悪いとかは思わなかった、尽くしてくれる佐野に好感すら抱いた俺がいた。
 これが童貞の力かもしれない。

「やだ、……さのっ……めろっ……」
「……はっ、なんでっ?」
「……うぅ、っ」

 クチュクチュと卑猥な音が部室の空気を更におかしくさせる。頭までその音で犯されているみたいだ。

「ぁあっ……もう、むりだっ……ン」
「……俺、でそう……っ」
「ん、おれも……っ」

 熱い鉄のような佐野のそれに擦りつけられると、もう何も考えられなくなって流されてしまう。別にこんなのどうって事ないんじゃないか、と頭の中で誰かが言う。ダメなのに、気持ちよくて流される。

「ぅ、あ、あ、……」
「……ふたりで、一緒にいこうねっ」

 鼻の頭にキスをされてからそこをじゅるりと吸われて、びっくりして伏せていた目をあげると、イヤラシイ目をした佐野と視線が勝ち合った。

「よく、鼻に汗かいてるよね。あまじょっぱいね」
「……っ……やめろっ」

 頷かざるを得ない的確な恥ずかしいところを言われて、思わず佐野を睨んだ。しかし佐野は怯むどころか、俺を愛おしそうに見つめるだけで、手も止めやしない。それどころか先の方を擦り合わせて来て、俺は熱い息を吐いた。

「無理、でそ……っ」
「うん……俺も……」

 擦る音が速くなってきて、自然と腰を突き上げるようにしてしまい足がガクガクする。どう考えても俺の今の格好はガニ股だろうし、絶対ダサい。
 ……それなのに、気持ちよくて止められない。

「んああっ……!」

 俺は佐野よりも先にいってしまって、佐野の綺麗に腹筋の割れた腹にかけてしまった。佐野はまだ達しておらず手を動かすので、そのたびに俺はその刺激にビクビクと身体が揺れる。

「も、やっ……ぁ」
「いくよ、かけるねっ……」

 勢いよく飛んできたそれは俺のへそ目掛けて飛んできて、二、三回の勢いでパタパタとかかる。まさか自分の腹に他人の精液がかかるだなんて、夢にも思わなかったことだ。

「あー……夢みたい」

 ぼうっとした顔をして俺の腹を見つめる佐野にゾクリと背中に何かが走る。射精した事で一気に自我が帰ってきたみたいだった。

「一緒にシャワー浴びようか」

 ニコニコとスッキリしたような笑顔でそう言われて、俺は疲れて何も声が出なかった。佐野はそんな俺を見ながら、俺の腹にかかった精液を俺のへそに溜めて遊んでいた。
 もう辞めてくれ……。


 そんなこんなで部室でそんなことをしてしまった日から、佐野は俺に対しての扱いが気持ち悪くなった。……というか、二人きりになると気持ち悪くなる。

 鍵当番の日は勿論、事あるごとに俺と二人きりになると俺の身体を触ってきたり、必要以上に接触をしてくるし……それに流されて何回もそういうことをしてしまっている。

 圧倒的な力の前では抵抗したって意味が無いし、別に実害という実害があまりないような気がするからそんなに嫌でもない。
 ……というか、あんなそこそこ見ないイケメンが、俺の乳首とかを吸ってたり必死にご機嫌伺いしてくると、嫌な気がしなくなってくる。
 だから結局いつもなあなあになって、部室で何回もああいうことをしてしまっているのが現状だ。

 とうとう俺の後ろにも佐野の手は及んでいるが、幸いにも佐野のものは受け入れていない。ていうかあんな大きさ無理だろ……。でもなんとなく気持ちいいことかも知れないってのは分かったけど……。

 それでももし佐野のあの大きなモノを受け入れてしまったら……そしたら、俺はどうなってしまうんだろう。佐野の女にされるのか……?
 ゾクリと背筋に何か冷たいものが走り、授業中だった俺はシャーペンを強く握った。


「紀田……」
「うわ、佐野」

 購買のパン合戦に負けて立ちすくんでいた俺の背後から、佐野の甘く掠れた声が俺を呼んだ。ビクリと肩を上げ後ろを振り返ると、焼きそばパンとコロッケパンを持った佐野が立っていた。

「もしかして負けちゃったの?」
「あ、ああいや……そうなんだよな。まあ仕方ない、どこかコンビニとか……」
「これ、あげる。俺、弁当持ってきてるから……」
「え? いや、足りないから買ったんだろ。自分で食えよ」

 なんとなく施しが怖いと思いそういうと、ちょうど俺の腹がグゥウウウウと化け物のような声を上げた。

「……紀田、ちゃんと食べて。自分の好きな人がお腹を空かせてるなんて、考えられないから……」

 コソリと、周りの人に聴こえないくらいの声で耳打ちしてくる佐野にパンを押し付けられる。
 身体を離した佐野は、俺と一瞬目を合わせてからくるりと踵を返してどこかへ行ってしまった。

 俺は焼きそばパンとコロッケパンを抱えながら、ただ茫然と廊下に突っ立っていた。


 放課後になり、部活が終わり、また俺と佐野の当番の日がやって来た。佐野は案の定着替えている途中にちょっかいを出してきて、そのままロッカーに押し付けられた。

「佐野、もうやめろって」
「どうして……紀田も気持ちいいでしょ」
「でも、変だってこんなの……」

 佐野の厚い胸板をポンと叩く、佐野はその俺の手を熱い手のひらで握って来てそのまま自らの口元に運んだ。

「……かわいい、紀田。好きだよ……」
「や、やめろってそんな……ぅ、ん」

 抵抗しようとした両手を掴まれて、恋人のように手を繋ぎながら手を壁に押し付けられた。そして口も塞がれて、喉まで舌が入って来たのではないかというくらい深く舌を差し込まれて口内を犯される。

「んは、はぁ……」

 息が吸えない、と思ったと同時に口が離されて混ざった唾液がダラリと服に垂れた。股間に熱いものが当たっていたが、佐野が腰を引いたのか突然熱が離れて行った。

「さの……?」
「紀田、後ろ向いて」
「え……なに」

 グルリと身体を反対向きにされて、俺は顔と胸をロッカーに押し付けた。ひんやりしたロッカーの持つ冷たさが、熱を持つ身体を冷ましていく。

 佐野は俺の浮いた尻に手を差し込んでサワサワと撫でて、揉むようにギュッと掴んだ。無意識に力が入ってしまい、佐野はそんな俺を見てかクスリと笑った。
 そのまま揉まれながらパンツが下りていくのを俺は感覚で感じ取った。そして尻の窄まりに指が這っていく。

「う、うしろはだめっ」
「どうして? 最近は気持ち良さそうにしてたじゃん……」
「ぅ、ぅああ……っぁ、あ」

 ズルリ、と少し受け入れるのに慣れたのか、ジェルのようなものを纏う佐野の指が体内に入ってくる。
 最近は気持ち良さそうにしてた…? だからダメなんじゃないか。女の子とのそういう行為だってした事無いのに、初めてこういう事をするのが男で、しかも佐野だなんて。

「! まって、佐野ほんとにダメ……っ」
「大丈夫、力抜いて俺に任せて。……ほら、どんどん入っていくよ、わかる?」
「ぁ、ぁ、あ……さの、むり」

 ブルル、と腰が震えて緩やかな尿意が俺の身体を走った。勃起してる時はおしっこが出ないって本当かよ、普通に漏らしそう。
 ロッカーの冷たさと、熱い身体の相反する熱がより一層尿意を誘う。しかも胎内に侵入して来た指が、内部から腹の中を摩り間接的に膀胱を刺激してくるみたいだ。

「やっぱり顔が見たい……こっち向いて」
「わ、ぁ……あぅ…や」

 指がズルリと体内から出ていったかと思うと、また身体をひっくり返されて、俺の立ち上がった股間が佐野のバスパンに当たってビクリと腰を震わせた。

「かわいい、かわいいよ紀田」
「ぁ……っやめろ、ぅ」

 Tシャツを捲り上げられて、そのまま引っ張るようにして脱がされた。バサリとシャツがどっかへほっぽられて、俺は腰をもぞもぞと動かした。

「ん? 舐めて欲しいの?」
「……ぅ、……」
「いいよ。でもちゃんとお願いできる?」

 カッと顔が熱くなって、足を閉じた。お願いってどういう事だよ、口で言えって事か?
 そんなの、出来るわけない……のに。

「紀田? 早く、言ってみて」
「ぁ……佐野、して」
「ん? なにを?」

 急に亀頭を指でサワサワと揉まれて、腰がビクリとしてさらに佐野の手に擦ってしまう。

「あぁっ……や、佐野……舐めて、おねが……っ」
「ん、わかったよ」

 佐野は満足そうに笑った後、唇に軽くキスをして来た。そしてそのまま下に下がるように、首や鎖骨、胸や腹にもこそばゆいキスを落とす。その間も手がゆるゆると俺の股間を刺激してきて、俺はたまらず佐野の唇を期待してしまう。
 やっと恥毛あたりまで佐野の顔が下がっていき、俺はゴクリと息を飲んだ。

「紀田はこれ、好きだよね。また立ってられる?」
「ん……」

 俺はそれよりも早くして欲しくて、股間を思わず佐野の顔に擦り付けてしまう。だって勝手に腰が動くんだ。お預けされた犬の気分にもなるし……。

「ふふ、可愛い。分かったよ、舐めてあげるから」
「ぅ……ンァ、あ」

 熱い口の中にどんどん飲み込まれていく。足を閉じないように佐野がガードしているので、力の抜けた腰がヘコヘコと動いてしまう。

「ぁ、あ……ぁー……」

 馬鹿みたいに「あ」しか言えずにいた俺は、思わず佐野の髪を掴んだ。
 佐野の口の中で、佐野の厚い舌が俺の股間をキャンディを舐めるようにズルズルと這っていく。そして時たま吸いつくようにジュルジュルと音を立てて吸引される。

「やぁ、さの……やっ」

 また後ろに指を差し込まれて、俺は目が白黒と反転した。そんな両方から刺激を与えられたら確実に死んでしまう……。
 小型犬のような喘ぎ声を上げながら、俺は爪先に力を入れる。もう腰が震えて立っていられない。

「ぁ、ぁ、あ……んーッ」

 指がいつものあの場所にたどり着いたみたいで、そこばかりを徹底的に虐めてくる。俺はその度腰をビクビクと動かしてしまい、佐野の唇に恥毛を押し付けてしまう。
 佐野を見ると、目尻を下げた佐野はジッと俺の顔を見ながら楽しそうに俺の股間をしゃぶっていた。

「ぁ、むり……さの、むり……そこ、や」
「ん……いっぱい濡れてきたよ。好きでしょ、コレ」
「ぅあぁ……ぁ、やだ……だめ」

 首を左右に振りながら、佐野の肩に手を置いた。

「じゃあこっち座って、寝てもいいよ」
「ぅ……」

 俺は言われた通りにロッカーの目の前にあるベンチに倒れ込むようにして身体を乗っけた。
 ひんやりしたベンチに俺の汗が落ちて少し気持ち悪い。

 佐野が俺の足を退けるようにして持って、その間に身体を滑り込ませた。そして佐野は身体をグッと丸めて、俺の股間に顔を埋めた。

「ぁ……舐めるのだめっ」
「はは、締まった」
「ぅう……」

 穴を舌が這って、驚いた俺は思わず佐野の髪の毛を掴んでしまった。佐野は痛がる様子もなく、次は俺の玉を口に含んだ。そして穴にはまた佐野の長い指が突き入れられた。

「んっ……うぅー……」
「ん、結構緩くなってきたね……もういいかな」
「ぅあッ」

 ズルリと佐野の長い指が胎内から抜かれて、思わず腰が跳ねた。佐野はそんな俺の様子をクスリと笑って、俺の無防備な尻を撫でた。

「はぁ……は、ぁ……さのっ」
「ん? 大丈夫、ちゃんとゴムつけるよ。中出しは……また今度」
「ちが、だめ……それ」

 佐野は自分のバスパンを下ろして股間を露出させた。そこは既に立ち上がっていて、蛍光灯の光に当たってテラテラと光っている。

「ほらね。ちゃんと持ってるんだ」
「ぁう……それ、だめだ……」

 ペチン、とゴムを嵌めたソレが音を立てる。俺は佐野の股間から目が離せなくて、ゴクリと息を飲んだ。

「……ぁ」
「かわいい」

 右手を取られて、恋人繋ぎのように手を握られる。そんなことに気を取られていると、俺の蛙のように開いた足を割って入るように佐野がベンチに座った。
 そして俺の尻の下にタオルを押し込んでくる。

「さ、さの……」
「大丈夫だよ、紀田……ちゃんと入るからね」
「ぁ、あ……あ……」

 曝け出された後孔にツルツルと何かが当たる感触。それが何かはもう分かり切っている。ドキドキと心臓の煩いくらいの音がして、口から心臓が飛び出てしまうのでは無いかと思うくらいだった。

「入れるよ……」
「!……ぁ、ぅぐ……ぁ」
「ほら、ちゃんと息して……」
「ぁ、は、無理……っ」

 ズググ、と俺の身体を割るようにして佐野の大きな逸物が押し入って来る。
 ヒューヒューと喉から変な音がして、どこかから空気が漏れているみたいだった。

「はは、手汗すごい……可愛い」
「ハァ……は……ぁ!」
「ぅ……きつい、ね。最後まで、いくね」

 どんどん奥に入っていく感覚がして、肛門が張っている気がする。
 切れないよね、大丈夫だよね……。絶対切れるっていうかもう破れそう……っ!

「ぁ……ァア……!」

 汗がブワッと出て、お腹が急にカッと熱くなった。息が深くできなくて、短く息を吐く事しかできない。目からは生理的な涙も出てきて、身体が自分の意思で制御できないみたいだった。

「……はぁ、やっとだ……ずっと、ずっと夢に見てた」
「ぁ……あ?」
「ここに俺がいるんだね、ちゃんとここまで入ってる」
「ぅう、ぁ……っ」
「あ、ごめんね。びっくりしたよね……」

 急に腹を指で押されて身体がビクビクと痙攣した。な、なんだよ……これ……。

「……夢みたいだ……これも全部あのゲームのお陰だ」
「はぁ……ぁ」
「あの時に勇気を出して良かった。紀田も、同じ想いだったなんて……嬉しかったなぁ」
「や……っ」

 腰が急に掴まれて、佐野が動くような素振りをした。
 驚いて佐野を見上げると、佐野は満面の笑みを浮かべていて、俺の顔を見ると手を伸ばしてきて涙を指で拭った。

「ぁ……」
「今から、気持ちよくしてあげるからね」

 瞬間、身体を佐野に貫かれて俺は声にならない叫びを上げた。目の周りにチリチリとした星がパッと散って、ハクハクと息を吐いた。

「ぁ、ぁ、ァア」

 まるで太い剣で身体を何度も貫かれているみたいだ。気持ちいいのかなんてわからない。身体中がカッと熱くなって、全ての血液が沸騰しているみたいだった。

「ゎ、うっ!」
「……ココ?」
「ぁ、あぁっ…!」

 グリリ、と体内で何か違和感のあるところに切先が当たって俺は声を上げた。すると佐野はとても嬉しそうに目尻を下げた。

「だめ……っ」
「大丈夫、大丈夫。直に良くなるよ……」
「っ……!」

 醜い声を上げそうになり、口を塞いで声を留めた。
 そんな俺を佐野はじっと見ていたのにも関わらず動きを止める事はなく、寧ろ激しくなったような気がした。

「ぁ、わ……ぁッ」
「ふ……かわい」
「ぅう……ァ」

 ベンチがギシギシと今にも壊れそうな音を立てて揺れる。目の前には気持ちよさそうに眉を寄せた佐野が俺を嬉しそうに見ている。
 俺はそんな佐野を見ながら、ただ醜く喘ぐ事しか出来なかった。

「紀田……俺、もうそろそろ……っ」
「ん……ぁ、あ、あ」
「……っ」

 佐野が急に腰を打つ速度を早めて、バツンバツンと肉を打つ大きな音が部屋に響いた。
 お腹のなかがキュウと締まる感じがして、佐野が俺の身体をグッと胸に引き寄せた。

「ぁ、あ」
「……はぁ、は……紀田、好きだ……」
「なん、か、変……腹が……」
「ん……凄い絞められてるよ」

 クスリと笑った佐野の少し熱い息が首元に掛かって、体がびくりと震えた。
 これで終わりか、と息をついた時にネットリとした何かが腹に纏わり付いた。

「……なに」
「……紀田も、気持ちよかったんだね」
「え?」
「ほら……いっぱいでてる」

 嬉しそうに佐野が俺の腹を拭って、眼前に差し出した。そこには白い粘液が糸を引いていて、それで初めて自分が吐精したのだと知った。

「ぁ……あ、うそ……」
「ごめん……また……」
「ぁっ?!」

 腹の中でズグリと動いた佐野に、腰がビクリと反応してしまう。そしてまたさっきより少し弱めの律動が俺の腹を貫きました。
 俺の背中に汗が出てきて、それがベンチと着いたり離れたりして気持ち悪い。

「ぁ、さの……っ」
「…………」

 揺さぶられると口が息を吸うために開いてしまって、涎がダラダラと犬のように垂れてしまう。

「あぁ……勿体ない」
「ん……うぅ、ゃあ」

 佐野が徐に顔を近づけてきて俺の開きっぱなしの口を舐めてくる。口どころか顔中舐められているような気もする。

「あぁ……美味しい」
「ん、ぅう……ぅ!」

 佐野の厚い舌が口の中に入ってくる。喉の方にまで入ってくるみたいにグイグイと強引に口内を掻き乱される。
 その間にも佐野の腰は止まらずに、俺の奥をガツガツと獣のように突いてくる。

「ひ、ぅっ……ぁ、ぐ」

 俺の悲鳴のような声が部室に響いて反響している。視界ではどこかの電灯がチカチカと点滅していて、ぶれる視界の中で俺はだんだんか細くなる悲鳴を上げながらだんだんと意識を失った。


「……紀田。紀田も俺を好きって言ってくれて嬉しかったよ……これからも、大切にするからね」

「愛してるよ、紀田……」


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