ダッチちゃん2





俺はもともと生粋のゲイだとか、そう言うものではない。
ただ、あの二人に引きずられるようにしてああいう行為をしているだけであって、普通の女の子と付き合いたい。
できればおっぱいがでかくて、俺より背が小さくて、髪は肩くらいまでがいいかな。それでいて気が強くない子。
どう考えてもあの二人とは正反対だ。

前回の事件からはまあまあ時間が経ってて、俺たちはまあまあ今まで通りの様に戻った。
って言っても最中とかは本当に三人で付き合っている様な感じになってるけど……、それでも普段の生活は大体変わらない。

二人は確かに普段からそんなに恋人っぽい感じの雰囲気では無かったし、普通の人から見たら仲良い二人組とでも思うくらいだったから、そこに一人増えたからと言って仲良い三人組になっただけだった。

結構前からの付き合いだから遊びに行ったらとかはしていたし、その付き合いが増えたぐらいで……あんまり損とかは無いかなぁ……逆に恋人にするみたいに気を使ってもらったりすることもあるし……あれ?なんか思ってたよりいい方向に行ってないか……?

「どうしたんだ、想」

ソファの隣に座っていた翔馬が俺の肩に回していた腕で、俺を引き寄せる。

「あぁ、これ……なんかつまらないなって思って」

「確かに
じゃあこっちを見るか」

そう言って翔馬は青い袋から他のDVDを取り出した。それは俺が観たいと言っていて、公開日を過ぎてしまったデズニー映画だった。

「おおっ観たかったやつ!」

「良かった、これであってたか」

「観ようぜー」

そう、翔馬は結構恋人に尽くす方で、今までの女の子たちにも同じ様な感じで接していたと思う。こういう風に俺が言っていたことを覚えていてくれるし、多分これが世に言うスパダリというやつなのでは、と思うくらいだ。

まあでもその分一緒にいるときは今肩を組まれてるみたいに自分に俺を引き寄せてきたりして、そう言う恋人のじゃれあい的なのは情熱的だ。ソッチの世界の人が側から見たら同類と思われるくらいには人前でもやってのける。

「なあにみてるの」

突然後ろから顔がにゅいと出てきて、俺と翔馬の間に割り込んだ。
そして俺と翔馬を離したかと思うと、ソファの背を跨いで間に入ってきた。

「ああーこれ俺も観たかった
ポップコーンないの」

「……理央、無理やり過ぎるぞ」

「えーだって二人が俺抜きで楽しんでるんだもん
そりゃ割り込むに決まってるでしょ」

俺たちサンコイチでしょー?
画面から目を逸らさずにそう言ってのける理央。
その横顔を見たときに俺はふと思い出した。
理央は確かに前から除け者にされたり仲間はずれにされたりするのが嫌いだった。
理央がバイトだからって他のみんなでケーキバイキングに行ったら、あとでそれを知った理央は物凄い不機嫌になって気に入らないもの全てに当たった。
そのあと理央を入れたみんなでまたケーキバイキングに行くと機嫌は直っていつも通り。
みんな理央が好きだったけど、そういう時だけは気まずい空気になったりした。それだけ理央が俺たちを求めてくれてたってことだったのだろうけど、重いと言われたら重いと思う。

まあそんなだから女の子は大体がメンヘラみたいな子たちばっかりだったし、理央が振ったせいでか自殺未遂をした子もいたみたいだ。理央は重いくせに、割と軽いから普通にクズだってみんなで笑った。理央はそんなことない、と不服そうだったけど、俺的にはそれもそれで酷いと思っていた。

「あー、まあ三人で見ればよくね?
あ、始まったからもう無しな」

翔馬は嫌そうな顔をしていたけど、理央はガン無視で、俺はというともうそんなのどうでもいいと思って画面に集中した。



ひさびさに一人きりの時間ができると何していいのかも分からない。
俺が転がり込んだ形で三人で暮らしているから、大体いつも誰かしらがいるけど今日は二人とも別々の付き合いで今は俺一人だった。

あんまり気が乗らないけどたまには一人で飲みに行こうかな

そう思って財布と携帯だけ持って家を出た。
まあ二人には言わなくても、その前に帰ってくれば良いし。俺だってたまには一人の時間も必要だよな。

そう思いながらも足が向かっていたのは、最近なにかと話題の相席屋だった。
特に何も考えないで歩いていたから、なんだか自分の知らなかった欲に驚きつつも、思うがままにその店の中に足を踏み入れた。

男は行列だったが、ほとんどが何人かのグループで、おひとり様は先に通されるシステムらしい。例によって俺もその行列を横目に直ぐに席に通された。


「え〜モモちゃんかわいいねぇ」

「もう、やめてくださいよ」

髪の毛は赤っぽい茶色で、胸元でくるくると巻かれているし、その胸は確かにでかい。ピンクのニットに白いひざ丈のスカート、わりと好みのタイプ……ではないけど。こういうのがエロかったりするんだよなぁ……まあ、なんていうかよくいるOLって感じだ。

「ねえねえ今日ってさ、これから暇だったりしないの……?」

ちょっとイイ感じになったところで、モモちゃんにそう提案する。
するとモモちゃんは満更でもなさそうな顔をしながらも、考え込むような仕草を見せた。
俺はここぞとばかりに少し情けなそうな顔をしてから、モモちゃんを見た。

「俺今日同居人がみんな帰ってこなくて寂しいんだよね、」

「……ううん……そう、なの」

「まあ、でもモモちゃんが無理っていうなら、俺はまた別の日でもいいよ!」

今日は大人しく一人で寝るよ、と付け足すとモモちゃんは少し考えてからニコリと笑って「しょうがないなぁ」と言った。
うわ、久々にこういうことしたけど、まだ俺こういうのできるんだ……!
モモちゃんは少し俺のタイプからは外れるけど、なぜかこういうのに弱い子に俺は好かれるんだよな……。

俺はウキウキとした表情が抑えられなかったのか、モモちゃんが鼻の下伸びすぎ、と笑った。いやだって久しぶりの女の子なんだもん……なんていう本音は抑えつつも、まだ伸びたままの鼻の下はそのままだった。
下心があってここに来たわけじゃないけど、こういうのもアリだよな。

俺はお会計を済ませて、外で待つモモちゃんの元に走った。


「……え、……?」

「想、待ってたよ」

モモちゃんが誰かと話してる様子でまさか彼氏じゃないだろうな、と思い恐る恐る
近付くと、そこにいたのは考えてもいなかった人物だった。

「り、理央……」

「あれ、本当に知り合いだったの?」

「ね、言ったでしょお?
それで、想はいつおうちに帰って来るの?」

「え……え?」

「想くん、この人と喧嘩して家出してるんだって?」

笑いながらモモちゃんがそう言って、少し馬鹿にしたように俺を見た。
いや、え……家出ってなに……てかなんでモモちゃんそんな親し気に話してるの……。

「だめだよ、迷惑かけちゃ
私はもう帰るから、ちゃんとおうち帰りなね」

そう言って「バイバイ〜」と手を振るモモちゃんに俺は唖然としながらも手を振り返した。
もうなにがなんだかわからなくて、俺は雰囲気に流されるがままだった。

「想くん、ダメじゃん
勝手におうち出ちゃ〜」

そう言って理央が肩を組むようにして俺を拘束してきた。
おかげで理央が怒っているのが良くわかる、それに掴まれた顎が痛い……

「ど、どうしてここが……」

「どうしてって、俺もこの店にいたからに決まってるじゃーん」

「な、それなら同罪じゃね?」

「は? 同罪?
俺が好き好んでこんなむさ苦しい箱のなかに入りたいと思うわけないじゃん」

「え……」

未だかつてない理央の冷静な怒りに俺は頭の上ではてなを飛ばすばかりで、理央の話からはまったく要領を得ない。

「今日、人数合わせで呼ばれたんだよ
俺が行かないなら想のことを誘うなんていうから」

「え……なに?」

「どうせ、想の事だから
俺たちに内緒で行っちゃうでしょ」

「…………」

多分理央が言っているのは高校のあのメンツだと思う。最近は連絡がぱったり来なくなったから、彼女でもできて悠々暮らしているんだろうとばかり思ってたけど……。

「で、でも行った事に変わりはない……だろ」

俺も負けじとそう言って食い下がってみるけど、理央には全然効いていないみたいで、いつもの理央のヘニャヘニャした顔は無く般若の様な顔になっただけだった。

「ああ、そう
そういう事言うんだ? へー」

「へ、わっ……ちょっ!」

肩に回っていた腕がおもむろに腰に回されて、ガッチリと掴まれる。そしてこっちのことなんか御構い無しにズンズンとどこかへ進んで行く理央。

「え、駅の方とは反対じゃん……っ」

「こけるよー」

「こ、こけさせようとしてるのはどっちだよっ」

理央は俺の言葉なんか聞こえてないという風に、どこかへ歩みを進める。
そしてやってきたのは賑わっている道の裏側にあるホテル街だった。その一角に目をつけたのか、理央は突然足を止めた。

「これ被ってて」

「え、うわ……っ」

上着をバサリとかけられて、案山子のように固まった俺。そしてそんな俺を荷物でも運ぶかのように体に寄せて引っ張る理央。

ラブホには珍しいルームキーを受け取るとエレベーターに乗って、目的の階にやってきたが俺が何言っても理央は何も返して来ない。

ようやく部屋にたどり着いてからその上着を取られて、そして口を開いた理央。しかしその口から出た言葉は衝撃的だった。

「脱いで、服」

「へ」

「裸になってよ、はやく」

ソファにボフリと座り突っ立っている俺を見る理央に、俺は思いっきり顔をしかめた。
いつも、そういう時は理央がノリノリで脱がしてくるから……そういう自分からとか、自主的に動いたことは無かった。

「しょ、しょうまも呼ぼうぜ」

「それは俺が決める」

「…………」

「ほら、早くして」

急かすように理央がそう言った。
理央は何もせず俺をジッと見ているだけのようだ。本当に何もして来ない。

チクタクと時間だけが進んで、俺は蛇に睨まれた蛙のように動かなかった。正確には理央が珍しく怖くて動けなかったんだけど……。

「はい、お仕置きねー」

「え……?」

理央はにっこりと笑いながらそう言って、唐突に立ち上がり俺の目の前までズンズンと歩いてきた。

「はい、脱ぎましょうねー」

上着を引っぺがされて、そしてシャツ……次はジーンズ、といったように俺はあっという間にパンイチになった。
パンツも脱がせてくれるのかと思いきや、そこで理央ははたと止まり、また俺をジッと見た。

「ほらそれは脱げるでしょ」

「理央……ごめんて、……」

「口だけの言葉なんて聞きたくない
早く脱いで」

「…………」

ふと理央の高校の時の彼女の一人を思い出して、俺は背筋がゾッとした。そういえば、理央は彼女とガチでバトッた時にその子にはDV紛いな事してたな……まあその子は喜んでたけど、あれはヤバかった……。
まさか今回がそれなんじゃないかと思った俺は、慌ててパンツを脱いだ。

「こ、これでいいだろ」

「うん
じゃ、お尻綺麗にしよっか」

「え……、」

サッと目の前に出されたのはビニール袋で、理央はそれを逆さまにした。すると中からはボトボトと色々なものが落ちてきて、俺はそれらを見て顔を真っ青にした。


「……ぅ、うぅっ……」

「初めてじゃないのにぃ
そんな恥ずかしがられたら、燃えるじゃん」

理央はニコニコと笑いながら俺の尻を掻き回す。
グジュグジュと厭らしいんだか、汚いんだか、よく分からない音が聞こえる。

「あ、あぅ……ぅ、やだ……」

「シャワ洗よりマシだったでしょー
ま、どっちでも俺はイイんだけど、ね」

「ウァアッ……! や、ら、……そこっ」

「はは、想って高速手マンされんの好きだよねぇ」

「あ、あ、ぅ……あぁっ……」

一点を押し潰すように指先でトントンと押されて、堪らなく腰がビクビクと跳ねる。理央とするセックスはなんだかAVのようで、嫌いなのに……拒めない。
翔馬は本物の恋人みたいに、甘く甘く……それこそ砂糖吐くんじゃないかってくらい花のように優しくされる。
そんな正反対の二人のどちらにも喜んでしまうこの身体が、堪らなく憎い。

「これじゃあオシオキにならないねぇ
……でも、これからはどうだろう」

「ひ、ぁああ……ぁ、あ」

馬鹿みたいに喘いで、唾液を垂らしながら獣のように叫ぶ。それでも理央の手は止まらずに、ずっと攻めてくる。

「うーん遅いなぁ……」

理央は俺に手を突っ込みながらも、もう片方の手でスマホをいじりだした。
ひ、酷くないか……?その扱い……。
俺は霞む視界の中で、理央を睨みつけた。

「あ、来たみたい〜」

「……んぁッ」

そう言って理央は俺の中からズルリとゴムを嵌めた指を引き抜いた。
俺が思わず理央を睨むと、理央はふっと笑ってドアへ向かってしまった。

俺は荒い息を整えようとするが、腹の中が未だに熱くて、怠くて……。

「…………ぁれ」

いつのまにか、理央が戻って来ていて、その後ろにはなにかを握り締めた黒髪の人が立っていた。そしてそのなにかを理央に渡した。

「しょーま……」

滲んだ視界でよくよく目を凝らして見ると、その姿は翔馬で、でもなんだか浮かない顔をして俺をぼうっと見ていた。

「うわぁ、グロすぎ」

理央が突然大きな声を上げて、俺と翔馬は思わずベッドに腰掛けている理央に目をやった。
俺からは角度的に見えないが、翔馬には見えているだろうそれに、俺は首を傾げた。

「……な、に……」

「…………」

翔馬がゆっくりベッドへやって来て、枕元に腰掛けた。俺がそっちに視線をやると、なんだか寂しげなような悲しげなような顔をして俺の頭を撫でた。

「今回は翔馬も共犯だもんねぇ
なんもいえないよね」

笑うように理央がそう言って、ガサガサと何かを漁っている。
翔馬はその間も何も言わずに、ただ俺の頭を撫で続けた。

「おーすごぉい
想が喜びそうなやつできたじゃん」

理央が着ているバスローブをジッと見つめていると、理央が嬉しそうに振り返った。

「……え?」

理央のそこが興奮して立ち上がっていたのは何度か当たったので分かっていたが、びっくりしたのはそこじゃない。何かよく分からないものが理央のそこにくっついていた。

「そ、それなに……」

俺はそれから目を離せずに質問すると、翔馬の腕が俺の腕に伸びてきて一纏めにされた。

「ぇ、しょ、しょうま……?」

「…………」

翔馬は悲しげに俺を見下ろすだけで、何も答えようとしない。なんで、なんなんだこの雰囲気……。

「ほら、こっち向いてこれ見なよ」

「だ、だからなんだよそれっ」

俺は翔馬の反応と理央のそれに怖くなって、声を荒げた。

「ペニスサック」

「……?なに、それ……」

「これつけるとデカくなるの
イボイボとかもあったけど、今日はこれね」

「!
……そ、そんなの入らない……」

俺は理央の言っている事と、こらからされることがやっと理解出来て、思わず情けない声を上げた。

「入らないじゃないのー
頑張って入れるんだよ」

想がだけど、そう付け足した理央は俺を嘲笑うかのように笑った。

「むり、むり」

「もーむりむりばっか言ってたらかたつむりになっちゃうよ
なんてね」

「は? ばかばか、やめろって」

翔馬と理央が二人がかりで手を伸ばしてきて、抵抗するもあっさりと俺の身体はうつ伏せにされた。

「浮気したお仕置きだよ」

「し、してないっ」

「未遂でも浮気は浮気だよ」

「ごめんって、謝るから……本当にそれはヤダっ」

ざっと見た感じだけど、20センチくらいはあった。あんなのを後ろにぶち込まれたら、気を失うだけじゃ済まなそうだ。普通の時でも内蔵を突かれてるんだから、すごい衝撃なのに、あんなの本物の凶器だ。余裕で死ぬ。

「……もう遅いよ」

「あぅ……っ」

「わはは、かわいいお尻」

尻たぶを左右に開かれて、にぎにぎと揉まれる。

「そのかわいいお尻を今から引き裂こうとしてるんだろうがッ」

「引き裂くぅ?
お馬鹿だな、かわいがるんだよ」

「翔馬もこんなふざけたこと協力すんなよっ」

唯一動かせる手のひらでポンポンと翔馬のふとももを叩いて反対をするけど、見上げた翔馬の顔は一向に晴れない。

「ごめんね、俺も今回は想が悪いと思うから」

「翔馬はね、家でお土産持って帰ってたんだって
わざわざ俺に相談してきたんだよ、想はなにがいいかなって」

「…………」

俺はハッとして翔馬を改めて見上げると、翔馬はさらに顔が暗くなった。
……翔馬は、今日は友達と鎌倉に遊びに行ったとかで、……うわ、俺酷いやつかも……。
シュンとなった俺を待っていたかのように、がら空きだった尻につるりと嫌な感触が滑った。

「ヒッ」

「そんなわけで、俺とショーマから愛を込めてお仕置きタイム」

「そ、それとこれとは違うっ」

尻を振って、その切っ先から躱そうとするが、太ももを挟まれているせいでこれっぽっちも動かない。

「はーい、いきまーす
力抜かないと本当に切れるからね」

「う、うぅ……ァ、」

「……うん、いけそうだね」

ズヌリと少し冷たい感覚がして、押し入ってくる質量のあるもの。
形はふつうというか、多分ソレに似せて作ってあるからか、よくほぐしてあったそこは少し引っかかりながらも入ったが特に痛いわけでは無い。

「ふ、ふぅ……はぁ、」

「よし、いけるね」

「ン、ぁああ……っ」

またズクズクと少しづつ先を進められて、俺は喘ぎながら荒い息を吐いた。
なんだか、理央は余裕があるみたいでいつものようにがっついては来ない。

「ぁ、は……はぁっ」

あの良いところを掠めたが、理央は気付かずに腰を進めた。
なんだか、焦らされている気分だ。いつも、理央は先を入れた時にちょっと小刻みに動くのがキモチイイのに……って、なんでこんなことを……。

「……わかりにくいな……」

「……んぁああ……っ」

突然ズルリと抜けたそれに反応して腰がビクリと上がってしまった。
まだこれからだったのに……なんだよ、もう……。

「負担掛けないようにって思ったけど、こっち向きはやりにくいね」

「……わ、」

コロリと転がされるように仰向けにされて、結局理央と対面する形になった。理央はやっぱりなんだかいつもとは違って理性的で、……なんだか変な感じだ。

「よし、おっけー」

息を吐いた理央がまた、そこにあてがってきて俺は思わず入れやすいように腰を少し浮かしてしまった。でも、理央は気付かなかったみたいで、俺の顔にキスをしてきた。

「んう……うわ、……」

なんだか理央がやけに普通の人に見えて、それがたまらなく恥ずかしい。
翔馬はいつもよりも影が薄いし、なんだかそれもそれで変だ。だって、いつも俺の上で理央と喧嘩しながら腰振ってるから……。

「んんッ……ぅああ」

腹側のあの出っ張った部分をコツコツされて自然と息が上がる。俺は足が上がってしまって、もっともっととねだってるみたいで……それがイヤダ。


その後俺は一回イったが、理央はイっていないみたいだった。
もしかしたらアレは感覚が鈍るのかもしれない。

「んん〜もういけるかな?」

「ん……?」

俺は余韻に浸りながらも理央を見ると、理央はにっこりと珍しく優しく笑って俺の頬を擦った。
そして俺の力の抜けた手を引っ張って、繋がっているところに持って行った。
そして触ってみて、とささやかれてしょうがなく擦ると、なんだか変な感じ……
……これ、って……まだ、ある……
俺が驚きながら理央を見上げると、理央は

「がんばってね」

瞬間、目の前に星が散って腹のなかで生き物が動き回るような感覚。本当に内側から内臓を突かれるような、そんな感覚。

「ウッ……?!」

「んーなんか引っかかってる」

「ぅあっまって……違うそこ、……ぁあああ」

「もう〜腰引かない、の」

「……ァ、……」


足が天に向かってピンと張るのが視界に入って、それから翔馬のなんだか喜んでいるような顔が見えた。昇天ってこんな感じなのかな。
まるで世界がスローになったような感じのなか、腰からの衝撃だけが雷のように頭を突き抜けていく。

「ッァー……――ッ……」



俺はそこから記憶が無い。

「おはよぉ」

目を覚ますと、理央の顔が眼前に広がった。
理央は俺のすぐ隣で寝転がっていたみたいだった。

「うわッ!理央……」

「やっと目覚ましたね、ゴシュクハクしちゃったよ」

「うそ……そんな時間……」

思わず時計を探すが、どこにかかってるんだかわからない。

「今4時だよ
ショーマは風呂」

耳を澄ますとシャワーかなんかの音が聞こえてくる。
なんかここって割と防音あるんだな。

「なあ、りお……ん?」

俺が異変を感じて喉を擦ると、理央が笑いながら俺の喉を擦って来た。

「凄い叫んでたからね」

「え……さけんで?」

「そうだよ
あ、やっぱ記憶ないかぁ」

そう言って理央が何かを取り出す。
汚いものを掴むような仕草で俺の目の前に出されたソレは見覚えがある。

「……もうそれヤダ……」

「うん俺も
ゴムですらやなのに、これ全然気持ちくないし」

「なんか、記憶ないし……」

「うん、眼がぐるんってしてた」

「えっ!?」

なんだか、うっすらと大変だったのを覚えているような……そうじゃないような……。
でもこのカスカスの声がそれを物語っている。これって結構ヤバいプレイされたんじゃないか……?

「入っちゃいけないところってあるんだね」

「……まじかよ、」

「でも怪我してないでしょ?
優しくしたもん」

そう言って俺の頭を撫でる理央に、俺は疑うような目でねめつける。

「お仕置きだったのにね」

「…………」

すっかり忘れてた……そうだ、俺はそれで理央に怒られてたんだった……。
でも、翔馬には悪い事したな……、いつも情熱的なのに、あんな沈んだ顔初めて見た。

「ご、ごめん……」

「許さない」

「……えっ」

俺は思っても見なかった返答に、思わず俯いていた顔をはじかれるように上げた。
理央の顔は相当怒っているものだと思い込んでいたんだけど……視界に入った理央の表情はなんだかほっとしているような、とりあえず怒ってはいないような表情で……。

「なに……、」

なんだか末恐ろしくなった俺は思わず反射的にそう言ってしまった。

「俺ね、気付いたんだ」

理央が見た事もない普通の表情をして話し出すから、思わず俺も真剣な表情になって口を閉じた。
まるで普通の人みたいな顔するから、なんだかいつもの理央っぽくない。

「俺が翔馬のこと気になったのは、想が翔馬のことを楽しそうに話してるの見てどんな人かなって気になったんだよね」

「ふ、ふーん……?」

い、今さらそんな話を掘り返すのか……?
なんだ……結局翔馬のことが好きだとか、そういう馬鹿馬鹿しい事言い出したりしない……よな……?
なんだか今の理央の雰囲気からして、甘い感じではないような気がするし……。

「でも、きっとそれって別に他のヤツがそう言ったからって俺はスルーしたんだと思う」

「……ん?
……おう、」

「想が翔馬のこと本気で褒めてるみたいだったから、想が言ったから気になっただけで」

「…………」

ん? なんだなんだ、今さら翔馬のことに対しての言い訳か?
いやいやいや、遅いだろ……つか今さらそんな事言って俺がほじくり返してグチグチ言うとでも思ってるのか……?
俺、そんな女々しくないぞ……多分だけど……

「だから俺思ったんだぁ
これって俺けっこー想に本気なんじゃない?」

「…………?」

な、なんだ……いきなり口説くのかよ……びっくりした……。
いや、別に振られるんじゃね?とか不安になったりはしてなかったし……うんうん……。

「今までも本気だったはずなんだけど、最近他のヤツが目に入らないんだよね
想の周りにいるヤツなら一々気になるのに……でもこれって想が一番って事なんだよね?」

「…………」

「俺は今のままで良いって思ってるけど、多分このままずっと一緒にはいられないよね」

理央の視線がふと落ちて、その視線を追って俺も視線をシーツに下げると、手に何かの感触が触れた。
パッと見ると、理央が俺の手を触ったようで、そのまま指が絡むように繋がれて握られる。

「……ずっと、このままがいいなぁ」

「……うん……」

理央がなんだか、今まで見たどの表情よりも真剣そうで。
俺はそれが良くわからなくて、肯定とも否定ともいえぬような返事を理央に返した。

理央はどういう意味でそれを言ったのかはわからなかったけど、翔馬が風呂から出て来てからは普通のいつも通りになったから……別に流してもいいのかな。

「また三人でラブホに来ようね」

朝、帰りの支度をしている時に、先に身支度を終えた理央がベッドに腰かけながらそう言った。こんな時間なのにクソみたいなホテルのエロチャンネルを見ていたその横顔が、なんとも普通で、俺はさっきのやり取りを思い出して、思わず「うん」と返事をしてしまった。

「俺はもうこんな気持ちで来たくは無いな」

「……ご、ごめんて……ちょっと寂しかったんだもん」

俺がちょっとかわい子ぶって翔馬にそう言うと、翔馬は俺の頭を引き寄せてきて「俺もごめんね」と言って胸に押し付けてきた。
ちょろいなーと思いながらも、翔馬に頭を寄せると、後ろから俺を挟み込むようにしてもう一人が駆け寄って抱き着いて来た。

「俺もごめんねー
もう絶対にひとりになんかさせないからね」

理央が言うと本当にその通りになりそうで、俺は少しゾクリとしながらも、その体温にホッとため息を吐いた。


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