自由の国





ここは“自由の国”
みんなは神様という奇跡を信じて、ひたすら俗世間から離れて暮らしている人の集まりだ。

みんながお互いを尊重し、みんなでお互いを助け合う。悪く言えばそれ以外はいらないという考え。

俺はそんな所に生まれた一人だ。
ちなみにあまり神様は信じていないし、ここが自由の国だとも思わない。
むしろ逆だ、不自由の国。

ここの最たる権力者は男で、自分を神様の子孫であり従者だと言う。唯一、生まれる前の記憶が有り、自分には使命があると以前集会で語っていた。
俺は家族がここにいると言うだけであって、ここに居たいとは思わない。
だって、おかしいだろ。

こんな所に囲って、神様を信仰しながら嘘つきの人間に身を捧げる。若い女はその権力者の子供を産むことは義務付けられては居ないが、半ば使命のようなものと感じているし。
そしてそれはあながち間違いでもない、その子孫は神様の末裔として扱われているし、その母親というのも手厚く歓迎されている。

俺は小さい頃からそんな此処を見ていて、すっかり目が覚めたというか…なぜみんな気づかないんだろうと思っていた。

それでも俺はここにとどまっている。
家族がいるからというのもある、だけど…

「ひさし」

「…尊、おはよう」

「おはよう。」

ここは大体が幼い頃から顔見知りで、みんながみんな幼馴染のようなものだが、尊はその中でも幼い頃からずっと一緒に育ってきた。
幼馴染中の幼馴染みたいな、…尊には全て話せる。

ここを出たいと伝えられたのも尊しかいない。
尊はここでは異質だと捉えられることを言う俺を、それも俺の道だ、と笑顔で受け止めてくれた。

尊はここの権力者の右腕のひとり息子で、ボスの家系の次に神聖視されている家系に生まれた。…だから尊はここから出られない。それは生まれる前から決まっていたことで、尊には多分どうしようもないことだ。
だから…俺がここから出たら尊とは一生会えないということを指す。俺は俗世間の人間となるからだ。

尊にはみんな敬語を使い、尊だってみんなに敬語を返す。
本当に神聖視されているようで、尊は優しいからその期待に応えるようなことをいつもしている。

ここには世間から弾かれたお年寄りも沢山いて、独り暮らしのひとがたくさんいる。
みんな助け合うことが重要視されているが、尊はその中でも群を抜けているからかそんなお年寄りの家を毎日回っている。
お年寄りの人からしてみれば尊みたいな神聖な人に毎日会えるんだ。不思議な力を貰えると言っていた。
実際それはあるのかもしれない。だってここの住人は長生きだ。
そして人生を全うした後には国中の人に見送られて、土葬される。
それがここに住む人たちの最後の望みだ。ここで人生を終えると、どんな過ちを犯した人でも極楽浄土に行くとされている。…本当かよ。

ここには悪口なんてものはない。
穢れとされているからだ、どんな人でも何か良いところがあって生まれてきた。それは他の人には無いもので、他の人にそれは真似出来ない。
そんな訳でみんないつもどんな時でも笑顔だし、泣くことは無い。子供が転んだ時くらいだ。
だから俺が尊の側にいても変なやっかみも無いし、逆にみんなに凄いと言われ褒められる。
あんなにも神聖な尊といると眩しすぎて苦しくなりそう、だとみんなが言っていた。尊は人間だぞと言いたくなった。

「あ…」

尊と例のお年寄りの家回りをしている途中、たまに見る人集りが見えた。
多分あれは…、

「琥神」

尊はライガの元に進んでいった。
俺はそれを離れて見ていた。

琥神はここの権力者の正妻の息子で、ここでは尊よりも上の立場である。
…でも、尊の方が何十倍もすごい奴だ。

「よう、尊。
また家を回っているのか、飽きない奴だな。」

「琥神が出来ないような小さな仕事をするのが僕の役目だから。」

「はは、無償の愛ってやつか。」

琥神は馬鹿にしたように尊にそう言った。
周りの信者たちはその悪意ある言葉にも気付かない、それどころか二人を拝み出した。

「…あいつは、」

「僕はそろそろ行くね。
では皆さん、今日も幸福な日を。」

そう尊が言うと信者たちも「幸福な日を!」とそう言った。ここでのさよならのかわりの挨拶だ。

「おい、待て。」

尊が隣にきて、歩き出すと後ろからそう声を掛けられた。
尊が止まって振り返ったので、俺も同じように足を止めた。

「俺に挨拶も無しかよ?永」

突然俺に振られた言葉に少し心臓がドキンと音を立てた。

「…おはよう、琥神。
幸福な日を」

「それだけかよ。
…まあいい、これから俺の所に来いよ」

「………」

琥神は変なところがある。
なぜかはわからないが、尊から俺を取ろうとするんだ。
小さい頃から尊の側にいた俺を尊の信者だと思っているのかもしれない。そんなこともないのに。
だから見つけられるとこういう誘いを受ける。

「尊と家を見て回るから…」

「それは尊の仕事だろう。
俺がこう言ってるんだ、永は来るよな?」

前にもこうやって誘われて、断ったんだ。
そしたら琥神は俺の家にまで来た。俺の母さんは琥神の言うことは絶対という人だから、むしろ喜んで琥神に俺を預けた。…俺の意思は無視で。

そんな母さんだが、別に俺を生贄に出そうとかではない。琥神のやり方が卑怯なんだ。

「…俺は、」

ちらりと尊を見ると固く口を結んでいた。
俺が見ているのに気付くと少し微笑んで「良いんじゃないかな」と言った。
尊はちゃんと人のことを見ている。尊が言うならそんなに心配は無いかもしれない…。

「…行くよ。
母さんに言ってお土産を持って行くから、…」

「そんなのはどうでもいい。
それより早く行くぞ」

早速身を翻した琥神に俺は慌てて尊を振り返った。

「…あ、尊。
幸福な日をっ」

「うん、…幸福な日を。」

俺は琥神の後ろを遅れていかないように足早で歩いた。
琥神の近くは歩いてはいけない事になっていて、尊は例外で隣や琥神に触れられる位置にいれる。
琥神の周りは神聖な場所なので、隣には家族などの近親者や絶対的な信頼があるような関係か伴侶しか許されない。
だから信者も一歩開けて拝むしかない。

「遅い。
横に付け」

突然立ち止まったかと思うとそう言ってくる琥神。
琥神はその決まりを知らないのか…?

「ごめん。
でも隣は神聖な場所だから…」

「お前は穢れでもあるのか?
早く来い。」

「………」

俺は琥神少し斜め横に一歩足を踏み出した。
これでも十分近い方だ。

「…それでいい。」

琥神は少し笑っているように見えた。

琥神の家(というか最早施設だ)に着くと、いつもは立ち入り禁止にされていて上ったことの無い長い階段を使い、未知の階に着いた。
前は琥神は別宅に住んでいたので、ここに来るのは初めての事だった。

琥神は正式に次の代の権力者と決まった為に、ここに移り身を清めているのだと母さんは言っていた。

「お前も近い将来ここに住んで身を清めるんだぞ
だから今のうちに外を楽しんでおけよ」

「え…?」

そういえばここで働いている人はみんな清めなければいけないから、この家の敷地の外には出れないって…。俺はここで勤めることになっているのか…?
…そんなこと、絶対にあり得ない。

「尊とも会える日が限られる、今は会わせてやってるがそれも今だけだ。尊は穢れてるからな」

「……!」

尊が穢れてるだなんて、よく言える…!
尊は琥神なんかよりずっと良い行いをしているし、寧ろ琥神の方が穢れてる…。
そう思っているのに、そんな事を琥神に言う勇気は無かった。

「どうした?永」

「…別に、」

それからとても綺麗な和室で夕食をご馳走になった。
すごく美味しいものばかりで、うちで出されるものとは全然違かった。
琥神は神様の直系の子孫だから、食事は穢れにはならずに元の場所に戻るだけだと考えられていて寧ろ食べられるものたちは幸福だとみんな言う。
俺が食事をするとそれは穢れとなるのに、大きな差だ。

「今日は泊まっていくだろう?
寝室は別だが特別に隣室にしてやる」

そう言われて笑われた。
暗に「嬉しいだろう?」と言われている気がした。
当然だが風呂も別々だ。それでも来客用の風呂というのはとても凄くて、大きな露天風呂だった。穢れは外に放出した方がいいかららしい。

とても良い気分で部屋へ戻ると琥神はすでに部屋で休んでいるとお付きの人に言われ、俺も休めと言われた。部屋は不思議な香りが漂っていて、お付きの人は穢れを落とす為のお香だと言っていた。
俺は持って来ていた本を読み、暫くしてから眠りについた。


なんだか寝苦しくて寝返りを打とうと意識が浮上してハッと気付いた。
俺の腕は何者かに掴まれていて、辺りは何かの光によって明るくなっていた。俺は眠い目を慌てて開けて、起き上がろうとした。

「っえ?…ぁえっ」

俺は裸にされていて、黒い服を纏った人達に腕や身体のあらゆる場所を拘束されていた。

「やっと起きたか。
おはよう、永」

「ら、琥神…?これどうなって、…」

「これからお前の体内にある穢れを排出させるからな
少しキツイが、これも俺とお前の将来の為だ。
止む終えない」

そう言った琥神はサラリと俺の前髪を撫でた。

ここでは人に触れる行為はあまり良い行為では無い。
穢れを他人に移し、他人から貰う可能性があるからだ。琥神なら尚更なので、これが夢で無いのなら罰を受ける対象にもなり得る。

「ぇ、え…なに、…ァっ?」

黒い服を纏った人に、お尻に何か冷たくてドロリとしたものが塗られた。これはなんだ…夢?

「力を抜いていろよ。
出血する可能性があるからな」

少し離れたところで座椅子に座って満足気にこちらを見ている琥神に目を向ける。
これが夢で無いのなら、一体何をしているんだ?

「ぅうう、ああ!!な、なん…」

ツプリと一番汚いであろうお尻に少し細いものが侵入して来た。
初めての感覚にゾワゾワして、背筋に冷たい氷のような感覚が走った。
これは夢じゃ無い…。

奥の方まで来たそれは体内で何かを注入し始めて、腹が膨れるくらいまで何かを注いだ。
暴れるとそれが出てしまいそうで、俺はジッとそれに耐えた。

「…ぅ、うう…」

「俺がここで穢れを浄化してやる。
…遠慮なく出せ」

「うぅ、え…なに、…」

出せ、って…そんな、…。
暫くなにもされずにじっとしていると腹から奇妙な音が聞こえて来て、次第に苦しくなってきた。
そんな俺の様子に気付いたのか、黒い人が大きな桶のようなものを持ってきて俺はそこを跨がされた。

そして俺はもうどうしても我慢が出来なくなって、初めてこんな…他人の目の前で粗相をしてしまった。
…琥神はそんな俺の様を座椅子に座って、やっぱり満足気な顔をして見ていた。

琥神は尊から俺を取ろうとしていたわけでもなかった、ただ俺をいじめて遊んでいたんだ。

俺は全身をその黒い人たちに拭われて、なにかいい匂いがする液体を頭からつま先まで塗り込まれた。…途中、股間にも触れられて吃驚したが、されるがままだった。
もう身体が疲れ切っていて、拘束はされていなかったが抵抗するなんて話じゃなかった。身体を拘束されて強制的にあんなことを人前でされたんだ。俺はもうこれ以上はないだろうと身体から力を抜いてダランと四肢を投げ出したまま布団に横になっていた。


「…これでお前も清められた。」

「…らいが…、」

琥神は立ち上がったかと思うと近づいて来て膝を折った。
そのまま身を屈めて俺のさらけ出された喉元に唇を付けた、ちょうど喉仏くらいだ。

琥神は俺の脇から腕を入れ、膝の下にも腕を入れた。黒い人が琥神の寝所の方の襖を開けた。
俺は別に痩せぎすなどではない、それでも琥神はふらつくことなく俺を持ち上げて自身の寝所に足を踏み入れた。

「お前が意外と頑丈でびっくりしたぜ
余計に鍛えた甲斐があったってもんだ」

「…もう、うちに帰してくれ」

「あぁ。お前の穢れを全て払ったら、帰してやる」

「………」

これ以上何があるって言うんだ。
あんな辱めを受けて、更にその上があるのか?

「もう、…やめてくれ、…」

ポロリ、と目尻から涙が落ちた。

「…お前は、こんな顔も持っていたんだな…」

少し掠れた様な声でそう言われて、琥神を見た。
琥神は何だか興奮した様に目尻を赤くして微笑んでいた。

「…やだ、…なんだよその顔、」

「ああ、動くな。落ちるぞ。」

「………」

一瞬にして真顔になった琥神に、本当に落とす気があると悟った俺は諦めて口を閉じた。

「さあ、念願の同衾だ。」

「…どうき、…」

一緒に寝るってこと、だよな…?そんなことのためにわざわざあんなことを?
馬鹿じゃないのか、そんなの…意味がわからない。

「下ろすぞ。」

「……」

少し身構える俺に琥神がクスリと笑った。俺はたまらず琥神を睨みつけたが意味はないみたいだ。
普通に、寝床に下ろされてから、琥神が後ろについていた黒い人から何かを受け取っていた。

「なに、…」

「お前が傷つかないようにするものだ。」

「……」

透明のボトルに入っている液体を目の前で揺らす琥神は、嫌な笑みを浮かべている。
なに、なんなんだ…その顔…。

「ほら、足を広げて綺麗になったところを見せてみろ。」

「なっ!やめろっ…」

「あいつにも手伝わせるか?もっと人を呼んでもいいぞ。」

そばにいた黒い人を指す言葉に、俺は身体が硬直した。
なに?今からなにをしようとしてるんだ、…

なにとは言えない嫌な予感がして、俺は思わず琥神の目を見つめた。

「…ほら、赤子のようにして見ろ。」

「……、…」

股を広げるように、足を持ち上げられた。俺は疑問に思いながらも黙って従った。
また、あの大勢に足を広げられるくらいなら…。

「赤くなっているな、…」

「っゎ…」

さらりと撫でられたその窄まりに、びくりとして力を込めた。
ひっかかりに指をかけて来る琥神に、俺は足を閉じようとしたが、身体を押し込まれて阻止された。

「ちょ、っと…本当にやめて…」

「これからイイコトをするんだ。じっとしてれば気持ちよくなる。」

「え、…ぁ、ああっ!なに、…」

ぬるりと尻に琥神の指が滑って、それからにゅるりと体内に侵入してきた。
思わぬ異物感に拳を握ると、琥神が俺の腹に唇を落としてきた。

「増やすぞ」

「っぇ、…ぅぅう…っ」

気持ち悪い気持ち悪い気持ち悪い。
なんだか、芋虫が腹のなかで蠢いているような感覚に陥る。
異物を押し出そうと身体が頑張っているが、それは俺の意思に反して動きまわる。

「はっ、はあ…」

奥の奥の方まで割り開くように指は奥まで入ってこようとする。
もうやだ、なんで俺がこんなことをされなきゃいけないんだ…。
さっさとこんな可笑しな所、出ていけばよかった。

「ぁ、ぁ…あっ…へ、?…なに、…」

急に股間を触られてびくりと反応してしまった。

「お、反応が良いな」

そう笑いながら股間をいじられて、更に顔が熱くなる。

「っ!」

「こら、顔を隠すな」

「も、なんでこんな嫌がらせ…」

俺は腕で顔を隠しながら、琥神にそういった。

「嫌がらせ? そんなわけないだろう
可愛がっているだけだ……」

「は、…?ぁ…っ」

急に琥神の手が早まって、そっちを見ると指をわっかにして凄い速さで上下に擦られていた。
無意識にびくびくと腰が動いてしまい、まだ入っている中の指が変な所を擦る。

「ぁ、もう…や…ぁ、」

「ほら…こんなに涎垂らしてるぜ」

先っぽをピトピトと触られて、糸を引く瞬間が見えた。
なんでこんな奴に触られて、反応してるんだよ…。

「あ!っあ、あ…」

先っぽをクリクリと撫でるように触られて、もうどうしようもない。
すると急に中の指が何かを探すように動き出した。

な、なんでこんなことを同時にやるの…意味わからない。

「ここは、良さを覚えると凄いらしいぞ
…お前はどうなっちまうんだろうな」

「は、ぅあ…わ、あ、あ、あ…」

腹が引きつるような感覚に、局部への快感、もうどうしたらここから逃げ出せるかしか考えられない。
……だってそうしないと、気が緩み快感の渦に飲み込まれてしまいそうだから。

「ァ…ああっ!」

俺はその衝撃と自分の声にびっくりして、思わず琥神を見上げた。
琥神もビックリしていたようで、動きを止めて俺を見た。

「…あ、……え、?」

目が合った瞬間に琥神が満面の笑みを浮かべて、俺は怖くなって思わず声が出てしまった。

「ぁああっ、あっあっ…ん、やめてっ!」

「ここがお前の秘密の場所か」

「あっあっ、うぅ…ん、んふ…」

自分の声がおぞましくて、手で自分の口を塞いだがそれでも尚漏れる声。
もうなにも考えられなかった。

「ふ、ふぅ、…ぁ……」

「永、…早くお前をすべて手に入れたい…」

「ふ、ぅぅ……っあ…」

ビクビクと身体が小刻みに痙攣して来て、次いで一気に快感の渦が弾けた。
しまった、と思いそこを見ると何も出ていない。

「ぇ、ぇ…なんえ…っ」

「はは、かわいいな」

「ぁ、え…もうやだ……むり、…っふぐ、」

もう与えられる快感から逃れたくて腰を捩ったはずだが、全然身体が言うことを聞かない。
下半身に力が伝達していなかった。

「ぁ、ぁ、あっ…ああっ…」

腹筋が脈打つように波を立てている。それを見た瞬間、目の前が真っ白になった。

「…ぁ…え、…ふ…はあ、」

ハアハア、と荒く息を吐く。
もう身体が言うことを聞かない、まるで琥神に操られているみたいだった。

「…濃いな、」

「………」

霞みそうな意識のなか、琥神が俺の腹に手を伸ばしているのが見えた。
え……、ウソだろ……。

白濁が自分の腹を汚している。しかし、俺には出した覚えが無かった。
でも、どう考えても俺のものだった。

「……は、…ねむ、」

「ああ、後始末は任せとけ……よく頑張ったな」

目を閉じる前に見えたのは、やけに嬉しそうな琥神の顔だった。
俺は深く息を吐いてから、すぐに意識を飛ばした。


「まずはキモチイイを覚えることから始めるとするか
……まだまだ時間はたっぷりあるからな」



×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -