厄介なやつ





俺の恋人は飛んだ浮気野郎だ。
でも前まで遊びまくっていた俺が言えたたちではないんだけど…。
そう、俺は少し前まで遊びまくっていた。なんでかって?そりゃヤりたいざかりだったから…なんてね。
なぜかわからないけどそういう気分だったんだ、それに何故か俺はフツメンなのにその時期には男にモテていたし…。
まあ、今は全然で俺もその浮気野郎に落ち着いたのだけれども…。

「雅章、まじでここに連れ込むのはやめろって言ってんだろ」

俺はテレビを見ながらビールをぐびぐび飲んでいる恋人…雅章に手を腰に当てながらそう言った。

「ああ?うるせえなぁ、別にいいだろちゃんと家賃は折半してんだからよ」

そう言ってまたビールをぐびりと飲む雅章に俺はなにも言えなくなった。

「なぁ、それよりもよォ…」

コツン、と缶を机に置いて俺の元へセクシーな笑みを浮かべながら歩いてくる雅章に俺は視線を床に落とした。





チュンチュンとスズメだかなんだかが鳴いている。その声で俺は目が覚めた。

まただ。
また流されてしまった。

「はあ…」

俺は何度目かのシチュエーションに溜息を吐いた。
隣にはもう雅章はおらず体温を失った乱れたシーツだけが存在していた。
こんな朝はもう慣れた。俺は多分流されやすいとかなんだろう。

それかただ快感に弱いか。

俺はまた溜息を吐いていそいそと着替え始めた。





「おはよ、ミヤ!」

バイト先である飲食店へ入ればすぐさまそこにいる藤塚。こいつは一番厄介だ、

「あー…はよ。」

さもかったるそうに俺は返事をするがそれでもニコニコとしている、まるで犬のようだ、と俺は常日頃思っているのだが。

「今日は髪の毛、セットしてないんだねっ」

そう言って嬉しいのかなんなのか、キラキラとしたなにかを振りまくように笑顔になる藤塚。やっぱり厄介だ…

「あ、うん。」

この前のことを言っているのだろうが俺が髪の毛をセットしないことなんて日常茶飯事じゃないか。この前はたまたま…その前に雅章とデートだったからセットしただけであって、

「こっちのほうが可愛くて俺は好きだなぁ…」

ぽやぽやと幸せオーラみたいなのを撒かれるとなんだか邪険にしてるこっちが悪いみたいで俺は頭を掻いた。
いや…俺が悪いのか…?

「どうしたの?ミヤ?」

優しそうな垂れ目がこちらを心配気に見ている。やっぱり…まだ俺のこと好き、なのかな…?



こいつは俺が思うに一番厄介な奴だ。

俺が遊んでいた時…同じバイトの人とかお客さんだとかを平気で喰いまくってた。ぶっちゃけその場のノリというかなんやらで。でも唯一手を出せなかったのがコイツ。いやでも一回こいつに手を出そうとしたんだけど…でもやっぱりなんかダメな気がして…。
バイトの人たちにあーだこーだ言われてたのは俺は気付いてた。でも辞めさせられなかったのは俺がバイトの中で一番出来がいいから。ただそれだけだった。つーか、俺は誘っただけであって別に強制じゃないのに着いて来たのはあいつらだったクセに。

でも藤塚は俺にずっと着いて回ってミヤミヤ、って言ってくれて俺は嬉しかった。そしたら藤塚が好きだって、俺に言って来た。
でもその時はもう雅章と出会っててあまり遊んでなかったし、藤塚はいい友達だと思ってた。多分弟分的な感じで。だから別にどうも思ってなかったんだけど、その告白から段々藤塚の言動は積極的になっていつも可愛いだかなんだか、俺を褒める言葉ばっか。

「ミヤ?」

この心配気な瞳の裏では俺を抱きたい…とか思ってるのか?
そんなことを思ってる俺はやっぱバカなんだと思う。

「藤塚、客来たから」

そう言って俺は話を中断させた。



「ただい…」

帰ってくると同時に聞こえてくるのは喘ぎ声。足元をみると高いヒール。
散々だった。
これまでもこんなの見て来たはずなのに服がリビングに行く道に落ちてるしそれは段々下着に向かってってる。

ふざけんな、そう乗り込んでやりたかったけど、でも、俺だって同んなじ様な立場だった。だから、やめろって言うなんてこと、出来ない。


俺は音を立てない様にそっと玄関を閉めた。



「ミヤ?」

そう呼ばれてバッと反射で顔をあげた。しまった、あげなければよかった。

「ミヤ!?どうして、」

藤塚だった。その隣には可愛くてちっちゃいマシュマロみたいな女の子が藤塚の腕に絡みついていた。
俺はまた、反射で走ってしまった。
藤塚は追いかけて来なかった

多分もうだめだ。





走って、走って走って走って走った。
そしたら家の近くの公園にいた。俺は友達が少ないんだ、だって当たり前のことしてたんだもん。
男が男相手に遊んでればそりゃ噂にもなるって訳だ。だから友達もいない。女子は興味本位によって来て、質問攻め。

「ふざけんな…っ」

マジであの頃の俺、ふざけんな。
何があったからああなったわけじゃない。何もなかったからあんなことになったんだよ。
大学はお陰で自主退学。
友達の目は奇異の目をしてた。
理由は俺が遊びで付き合っていた男同士が大っぴらで喧嘩したから、遊びで付き合っていた男が大学に乗り込んで来たから。理由なんていっぱいあった。彼女がいる男と遊んでその彼女に恨まれたから。

「もうやだ…」

もう意味わかんない俺の人生。
雅章が浮気野郎だとか藤塚には彼女がいただとか。俺のこともう好きじゃないってことだよな?どうしようもねえよ、俺の人生。

よっこらせ、と立ち上がって俺は雅章が腰を振ってるであろう家に向った。




「え?」

段々近づくにつれて見えてくるシルエット。誰か部屋の前にいる?
まさか女の子?
そういえば以前雅章の浮気相手の女の子同志がばったりあっちゃって喧嘩になったことがあった。あのときは凄かった…


「ミヤ…」

「ふじつ…か?」

藤塚が泣きながら突っ立っていた。

「な、どうして、」

そう言って俺が掛け寄れば藤塚はまたダーと涙を流した。

「やっぱり俺ミヤのこと諦めらんない、だって、ミヤのこと好きだし…」

何を言ってるのかわからないが一旦家に入れよう。そう思った。
見たところ部屋には誰もいないみたいで電気は付いていなかった。多分女の子の家に行ってるんだ…とんだ絶倫だ…

「おじゃま、します。」

香るのは酷いことにセイエキの匂いとむせかえるような香水の匂い。

「あーすまん。今換気するから…」

そう言って俺が立ち上がれば藤塚も立ち上がった。

「な、…?」

ぎゅ、と抱き締められてピタリと身体が止まった。

「ね、ミヤ…やっぱり俺ミヤがいい…ミヤが嫌がってるのは知ってる…だけどミヤじゃなきゃ、俺、…」

ごめんね、
そう言われて俺はさっきの出来事と繋がった。そっか、そうなのか、

「俺、ミヤのこと、諦めようと思ったんだ…」

「それであの女の子と…」

俺がそう言えばびくりと身体を震わせた藤塚に俺は笑った。もうどうでもいいや。女の子の方が気持ち良さそうだしね、男ってフツーそんなもんだからさ。そんなのもう雅章でわかってるじゃん。

「可愛かったね、あの子。なんて名前なの?」

「つばさ、ちゃん」

名前も可愛いしね、イケメンの藤塚と可愛いツバサちゃん。お似合いだよ。ほんと、

「いいよ、もう。我慢しなくて」

きっと藤塚は優しいから、俺が可哀想になって告ってくれたんだろうけど、ツバサちゃんに本気になっちゃったからもう気持ちは無いって言いたいんだろう。だからもう別に俺に優しくしなくたっていい。そう暗に俺は言った。

「え、い、いいの…?」

肩を掴んで遠慮がちに俺の顔色を伺う藤塚に俺はコクリと頷いた。

「目、瞑って…?」

「?…わかった」

きっとその間に部屋を出てくのか…なんてロマンチックなやつだ。別に俺が振られた訳じゃないと言うのに。
ふにゅり、と唇にあたったなにか

「ん…!?」

慌てて目を開ければドアップな藤塚の顔。

「んん、ふ、ぅ」

なんで?どういうことだいったい、何が起こってんだ…?

「ん、好き、ミヤ…」

「んん!っふ、じ…ンッ」

藤塚の冷たい手がシャツの裾から入り込んで来た。その手は段々激しく俺の肌を弄んでくる

「ん、ゃ、んっ」

カリカリと胸の先端を引っかかれて思わず甘い声が深いキスの間から漏れ出てしまう。
やば、息、くるし…

「ぁ、…んっ…ふッ…」

ぎゅ、とそこにあった藤塚の腕を掴んでしまう。
ヤバイから、と必死に伝えるがキスは深くなって行くばかりでとてもじゃないが耐えられない

「ふ、かわい…」

え、という前にゴロン、と押し倒されてしまう。そしてそのまま唇を離されていつの間にか捲られていたシャツのしたの腹をべろりと舐められた。

「や、藤塚っ」

頭を押すがあまり力が入らなくて弱い抵抗になってしまう。
やば、力はいんない…

「ミヤ、かわいい…」

ちゅ、ちゅ、のキスをされて行きカチャカチャと何かの金属音

「藤塚?や、やめっ」

足をバタバタとさせるが藤塚の身体が邪魔でろくな抵抗が出来ずじまいだった。

「だぁめ、」

首元を抑えられて力が出なくなる。だめ、やだ、


「お前らなにしてんだよ」


立っていたのは雅章だった。
なんでいるの?女の子のとこに行ってたはずじゃ…
俺はふと思った。これ、雅章から見たら浮気じゃね?と。いやでも雅章だって浮気してるはずだからきっと怒らな

「ふざけんじゃねえよォ!どけてめぇ!」

そう言って蹴りが飛んでくる。どういうことだよ…。

「ちょ、ミヤっ。こいつだれ?」

藤塚が俺を抱き上げて避ける。
俺を置いてけよ!あぶねーだろ!

「てめぇのが誰だっつんだ、よ!」

またしても蹴り、
もうこれ俺がいるとか関係ないじゃん…どんだけ雅章は俺のこと気にしてないんだよ…

「よくわかんないけど、逃げよ、ミヤっ」

そう言って慌てて靴を履いて外に出る藤塚に俺は何も言えずただ腹が痛い…と思っていた。
あ、俺の靴は…。




「はぁー凄い走ったなぁー」

ふふ、と気持ち悪い笑いをする藤塚に何故だか俺もつられて笑ってしまった。

「バカじゃねえの、お前」

ここは藤塚のアパート。
藤塚は追いかけてくる雅章をひょいひょいとかわしてここまで来た。どんだけ力持ちなんだよ

「ミヤはかわいーなー」

「あーもー」

さっきからこればっか。
かわいいかわいいって意味わかんねぇ。だいたいこんな俺の顔を見てかわいいなんて言うの頭湧いてる…

「ねぇ、ミヤ。あの人だれなの?」

そう言って俺の頬に手を当てる藤塚。やることがいちいちキモい…

「あーんー。彼氏…」

そう言ってちらっと藤塚の顔色を伺う。

「…そう、彼氏か…そっか…」

「あ、と、「でも、もう別れるよね?」

「え?」

そう言われて藤塚の顔をみれば藤塚は笑顔だった。なんだ?冗談か?
いやでも…さっきの様子だと藤塚の言うようにあの家戻っても多分別れるだろうし…

「まあそうだな」

「そっか!ミヤ、俺と付き合お…だめ?」

きゅ、と藤塚に手を握られてそう言われる。

「……」

「…だめ、かな…?」

じんわりと涙が浮かんでいる。

「…べ、別に、ダメじゃない…」

そう言わざるを得なかった…ような気もする…。

「よかった、ミヤ大好き!これからはもっとずっと一緒に居ようねっ」

まずは二人で住もうかっ、と笑顔で提案してくる藤塚に俺は子どもを見てるみたいで可笑しくてクスリとわらった。


「ああ、ずっと一緒に居ような」

そう俺が言うと藤塚はまたふふ、と笑った。


「うん、ずっと…一緒に」



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