crash&crash
その後、なんとかデータ復旧に成功して一安心した。しかし、あの時の瞬間ストレスは伊達じゃなかったのか、登庁してから胃が痛い。今は自分のデスクに座って落ち着いているが、体の中でハリネズミを飼ってるようでなんていうかこう、つまり死にそうだ。
「殺気立ってるけど、どうかしたのか」
同僚のエイブが、僕の顔を覗き込むようにして尋ねてくる。純粋に疑問に思ってそう言ってきたのがわかるあたり、「どうした、生理か」なんて言葉を投げつけてきた(そう、正しく投げつけられたかのような衝撃だった!)警部より…比べるのはよそう。馬鹿馬鹿しい。
「なに、ちょっとストレスが限界値を超えただけさ。これでも峠は越したんだ、問題ない」
「なんだ、わりと死にそうだったんだな?」
書類の確認はしっかりしろよ?と少し笑いながら去っていくエイブ。そうだな、もしかしたらミスを犯すかもしれない。気をつけよう。
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結論:やっちまった。
なぜメールに書いてしまったのか。
そもそも、なぜ文字に起こしてしまったのか。
いや確かに、休日に仕事上乗せしてくるのは悪い。今朝のジョークもかなり不快だった。それはあちらに非がある。
しかし、そんな文句でも導火線に火は着くもんで。
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From:アイザック警部
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Title:
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よくわかった。
END
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声をかけてこないあたり、かなりキレてる。
詳細を説明しよう。
ストレスがピークに達していて気が立っていたところに、警部の下品なジョークで変なスイッチが入った僕は、ストレスを外部へ逃がすためにPCへありったけの文句を書き込んだ。
それでひとまず気が済んで、デリートキーを押した。と思ったらエンターキーを押していた、というわけである。
しかし、謝るにしても今は勤務中だ。一斉送信してしまったなら話は別だが、これは個人間での問題なので、出来れば周りに漏らしたくない。まぁ、退勤した後に時間はいくらでもあるだろう。久しぶりに奢ってやるか。
──そう思っていた自分を呪わずにはいられない。