「んっ・・・んぁっ、ぁッ・・・!」

なんだかここまでがんばって耐えようとしている姿は見る人に寄ればすごくかわいそうに見えるのかもしれないし、無理な我慢してと呆れる人もいるかもしれないが、残念ながら俺はそのどちらでもなく、興奮するほうである。

20歳も半ば近くになってくるとそれなりにこっち方面の経験値も増えてくるわけで、それなりに付き合った人数も増えれば、やった人数も年齢が上がるに連れて増えていった。
女がどうすれば気持ちよくなるのだとか、俺自身がどんなシチュエーションでやると興奮するだとか、自然と自分自身のことも分かるようになってきた、と最近特に思う。
特に、コイツと付き合うようになってから。

「んんっ、こ、こうすけッ、も、やだッ・・・ッ」
「もうちょっと、な」

そう言って中に入れた手をぐるりと回転させるとかわいそうなほど敏感に体を揺らして反応すると、ぎゅっと俺の右手をつかむ指の力が強くなった。
声を出してしまえば多少なりとも楽になりそうなのに、そうしない、名前なりの俺への抵抗だと俺は解釈することにしている。
その抵抗が俺は申し訳ないほどに、好きだったりもする。



名前との出会いは大学時代にさかのぼり、それも友人の幼なじみというポジションで、当時は付き合った人いないんじゃないかと思うほど純粋なお嬢様タイプの女の子だった。
飲み会に行けば男の人と話すのもやっとというような慌てっぷりで、当時そんな名前を俺はどちらかというと敬遠していた。
昔から付き合う人はいつもそれなりに話しやすさや馴染みやすさが決め手になっていたような気がする。
高校の頃唯一付き合った女の子もどちらかというと女の子らしくは合ったがまるで友達のような気軽に話しかける子だったし、その後もバイト先の友達だったり、何かと友達から発展することが多かった。
女の子らしい子が好みではあったが、根っからの女の子はどちらかと言えば苦手だ。
可愛らしいとは思うが、どうも会話が噛み合ない気がしていたからだ。

当然その頃は名前と仲良くなろうとも思わなかったし、もちろん仲良くなることもなかった。
それがこんな関係まで発展してしまったのは、残念ながらお酒の力ってやつだ。
人生どうなるかなんて本当に分からない。


付き合って思ったことは、思った以上に普通の女の子だったってことだった。
本当に、どこにでもいそうな普通の女の子だった。
見た目も特にかわいいというわけではなく、強いて言うなら困った顔がかわいいというぐらいだろうか。

そしてその困った顔がかわいいと感じたのはマニアックなポイントだと思うだろうが、またそれがセックス中になると一段とかわいいと感じてしまう。



「ン・・・ぁ、ぁんッ、あッ」

必死に声を押し殺そうとしているのだろうけど残念ながら漏れてしまっている。
唇に押当てようとした腕は俺が片手でまとめあげてしまい、何も覆い隠せずがんばって顔をシーツに埋めようとしているのだが、腕を俺に頭上でまとめられているためその自分の腕のせいでそれもかなわない。
顔を見せることすら恥ずかしいようで必死で顔をそらそうとするのだが、それもかなわない。
何ともかわいそう。

「あ、んんッ、こう、すけッ・・・!」

足が小刻みにぴくぴくと痙攣したのを見て、ああ、もう限界が近いと俺は中をえぐるようになで上げながら手をゆっくりと抜いた。
その動きに腰をびくつかせる名前に追い討ちをかけるように、ぬるぬるになった指でその上についている突起を何度かこすると先ほどよりも大きく反応を示す。

「あっ!やだッ!、やッ、ンッ!」

名前は中よりもここの方が感じやすい。

「なに、もう入れてほしいの?」
「そんなこと、言って、ないッ!」

息を半分切らしながらそんなことを言うので、俺は思わずいじめたくなってしまう。
この流れはいつものパターンなのに、どうも学習能力がない。

「あッ!、やだッ、ンッ、んんッ」

そのまま何度も突起を優しくマッサージしてやるように触れてやる。
大きな快感に思わず閉じようとした足の間に体を挟むと、そのまま何度も続けてやる。
その間もなんとか抵抗しようとするのだが、上手くいかない名前はうっすら目を開けて、その潤んだ瞳でやめてと訴えかけるように俺を見上げる。
名前はそれが男を煽るのだということも分からぬまましてしまうのだから、自分の首を絞めているようなものだ。


俺は大きな声で喘ぐ女が嫌いだ。
正直過去にそんな女がいたのだが、いい感じのところで抱え込んだとたんに耳元で大音量であんあん喘ぐもんだからうるさいし、なんだか演技じみてるしで思わずなえてしまった経験が過去にある。
一般的な男が全員そう言う女が嫌いかどうかと聞けば必ずしもそう言った結果は出ないであろうが、俺はその手の女が苦手だ。
性格もいいし、性格面の相性も悪くなかったのだが、思わず数日後別れを切り出した。
体の相性というやつも、長く付き合っていく中では大事だと感じた瞬間だった。

その点名前は絶対と言い切れるほど、大きな声で喘がない。
むしろ、がんばって喘ぐのを無意識で我慢してしまう方である。
そして名前と付き合っている数ある理由の中の1つとして俺は、その名前の癖というべきか、その行為を俺は大変好んでいる。
言い訳をすると、それがよくて付き合っているというわけではない。
もう一度述べるが、付き合っている理由の中の数ある1つだ。


「はっ、ん、んんッ、こう、すけぇ・・・も、やッ」

俺の手のひらにつかまれたままの名前の両手に力がこもり、強い力でつかみ返してくる。

「名前、いきそう?」
「ッ、ンッ・・・」

言葉で返すかわりに首を立てに何度も振る。
これもいつもの調子で、絶対にそう言った言葉も言わない。

おれはそれの返事をするように少し今までより強めにこすってやると、さっきよりももう少しだけ声が大きくなったかと思うと、息つく間に全身を何度か大きくびくりと波打つようにびくつかせると、深い息を何度も繰り返し始める。
どうやらいったようだ。

「も、それ、嫌いって、いつも言ってる・・・」
「だって名前、気持ち良さそうだし」

そう言って俺はにやりと口角を上げると、そのまままた手を動かし始める。
まさかまた俺がそんな行動に出るとは思わなかったのだろう、先ほどよりもびくりと体をゆらすと、とっさのことで対応しきれなかった声がもれた。

「やあッ!、んっ、も、やめ、てッ!」

目を見開いた瞳は涙でじわりとぬれ、今にも大きなしずくがこぼれ落ちそうだ。
その瞳を見たとたん、自分の背中にぞくぞくと快感が駆け上がる快感にまたひとつ、口角を上げる。
名前はそんな俺の表情を見て、どう思っているだろうか。
いや、こんな潤んだ瞳からは俺の表情もしっかりと視覚に入ってきていないのかもしれない。
むしろそんなことも考えられないほど、快感に溺れているのか。

いま、言い訳のようになるのは承知で言わせてもらうと、俺は元々こんなS気のあるタイプでもなければ、こんな女の子を責め立てるようなセックスを好んでいたわけでもない。
あくまで、本当に普通のタイプだったと思う。
まあ普通がどんなものか定義しにくいのだけど。

「こう、す、けッ!」

名前の右目からぽろりと大きなしずくがこぼれ落ちると、そのままひとつ間を置いて、左目からもこぼれ落ちる。
その瞬間、俺は衝動的に名前の両手をつかんでいた手を離すと、そのまま名前の頬を撫で、そのまま真実の耳の後ろに優しくキスをする。
なんだか名前の目から涙が出ると一瞬の罪悪感を感じ、こうやって耳の後ろや胸元、頬へキスをしたくなるのだ。
そして、そんな名前はというと、そんな俺に強い愛を感じるのか心底うれしそうな顔をするもんだから、せっかくそうやって優しく振れている手がまた、泣かせたいと獰猛に動き始めてしまうのだ。

「・・・孝介」

そう言って俺の頬を包んだ時には、俺は自分の欲望のまま自分自身を息をつく間もなく進めると、そのまま自分の快感にあわせて腰をひたすら激しく動かす。

「名前っ、名前ッ!」
「あ、あッ、こ、こうすけっ、んっ、んんっ・・・!」

そんな俺にぎゅっとしがみついて快感に耐えながらまた涙を流すもんだから、もう収拾がつくはずもなく、いつもの流れだ。



そうしてまた、今日も深い夜へと俺たちは包まれていく。
俺が結局何を言いたかったのかと言えば、俺は決してSではないということだ。







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