ユーリはスキンシップがすきだ。
そういった行為がすきという意味ではなく、ただ単にふれあう行為がすきという意味で。

例えば今のようにソファーに座った私にぴったりと体を添えて、座ることもそう。
ユーリはこつんと私の肩に自分の頭を預け、自分の剣の手入れをしている。
私はというと、足を抱えるようにして座り、本を読んでいる。
だいたい食事の後はいつもそうだ。
こうやって特に何の話もなく、それぞれがやりたいことをやっている。
こんな、スキンシップをユーリは好んでいる。
そしてそれは私も。
会話もない、していることも違う、だけど私たちは時間を共有し、同じ場所でそれぞれの存在を感じているだけで満足なのである。

ページをぱらりとめくる音が部屋の中に響く。
かけている眼鏡がずれているのが気になり、片手でかけ直すとサイドテーブルにおいてあったココアへと手を伸ばした。
ユーリが作るココアは世界一おいしいと思っている。
夕食後のこの時間にゆっくり本を読みながらココアを飲む時間は何物にも代え難いほどの幸福で包まれている。
しかもそんな私の隣にはユーリが居て、ユーリのぬくもりがある。
なんて幸せなんだろうと思いながらココアを一口喉へと流し込むと、温かさに思わず飲み込んだ後に幸せな溜息が漏れた。

「ナマエ」
「何?」
「明日からダンクレストの方に行くんだけど」
「了解、私も付いてった方がいいね」
「それが良いと思う」
「そだね、ジュディにも久々会いたいし」

あの決戦からもう1年が経とうとしている。
時間とは本当に早いものだとユーリの重みを感じながら過去を振り返る。

あれから私たちは魔導器と結界が無くなった世界の中で新たな生き方を見つける人々のためとし、奮闘していた。
まずは結界が無くなったことで街へ魔物が襲ってきても防げるようにと防御壁を作ることも1つ、また他のギルドとも協力し、各街に自営団として魔物撃退のための人間を設置した。
また同時並行でリタも新たなエアルの代用として用いれる可能性があるマナの研究に勤しんでいる。

つまり、みんな忙しく、一生懸命に世界のことを考えて働いている。

だからこそ私はこのゆっくりとした時間が幸せだと思うし、大切にしたいとも思っている。
それはユーリも同じ気持ちで居るだろうと私は勝手に思っていた。

「ユーリ」
「何だ?」
「・・・やっぱ、何でもない」

そういうとユーリはゆっくりと私に預けていた頭を上げた。
告げようと思った言葉は、気恥ずかしくなってやっぱりやめた。

肩が軽くなってユーリの方へと顔を向けると、ユーリは目を細めて私を見つめていた。
今度は私が頭を預けると、くすくすとユーリが笑い、ユーリの体の動きとと同じように私の体が揺れる。

「なんだよ」
「何でもない」

ユーリの体はいつも体温が高めだと思っている。
いつもユーリの体に触れていると暖かくなって眠くなってしまうのだ。
今日はこの本一冊読み切ってしまいたいのに、どうも私のまぶたはいうことを聞かない。

「なんだ?眠いのか?」
「ん〜、眠い」
「じゃあ寝るか」

そういうとユーリは私の腰に腕をまわし、ゆっくりと持ち上げられる。
それに私は甘えるようにユーリの首へと腕をまわして抱きついた。
ユーリはどちらかといえば男の人の中でも細い方だと思うけど、こうやって私をいとも簡単に抱き上げてしまうところは改めて男の人だなと思ってしまう。
ああ、すきだなとも思う。

ベッドにゆっくりと降ろされるとそのまま私の横にごろんとユーリも寝転がった。
寝転がったまま、ベッドサイドのミニテーブルにメガネをおく。
ベッドからはユーリのにおいがする。
それは私にとってとても落ち着けるにおいであり、眠気を誘うものでもある。

「何、本気で寝るのか?」
「だめ?」
「だめじゃねーけど、ちょっと寂しいと思って」
「今日はユーリはいつもより甘えたさんだね」

そう言って私の方へと体を向けて寝転ぶユーリへと手を寄せると、その手をそのままつかまれて引き寄せられたかと思えば少し強引なキスを送られる。

どうやらユーリはその気らしい。

「んっ・・・ユー、リ」
「ナマエ」

キスの合間に名前を呼ばれるとうれしくて思わずユーリへとさらに体を寄せた。
すると私の頬へとユーリの大きな手のひらが添えられてゆっくりと撫でられると私はすっかりその気になってしまうのだ。

「もう、明日早いって」
「寝坊した時は寝坊したとき、2人で遅れていけば良いだろ?」
「んっ、ジュディに、おこ、られるから」

私の部屋着の中に腕を進めながらユーリは私のこめかみにキスを送る。
私の脇腹を嫌らしく撫でる指先にはいつになっても慣れない。
声が漏れそうになるのを必死にこらえながらユーリの肩へと手をつく。

「ホントに嫌なわけ?」
「じゃ、なくて・・・」

そういうと私は上半身を持ち上げると同時に、中途半端に私の上に跨がっていた体を押さえ込み、あっという間に私がユーリの上に跨がるような形になる。

「おいおい、ナマエさんは予想外に欲求不満?」
「ユーリったら、自分がその気にさせといて何言ってんの」
「そんなに俺刺激的なことしたっけ?」
「なに?こんな私は幻滅?」

そういってユーリの首元へとがぶりと噛み付く。
ユーリはくつくつと笑い、その度に舌を通わせるのど元が揺れる。

「うわっ・・・!」

視界がぐらりと揺れて、気づいたときには今度こそ私が下敷きになっている。

「いや、むしろたまんねーわ」

ユーリから与えられる穏やかな幸せも、激しい愛の表現も、私にとってはどれも愛おしいもので幸福なものだ。
ユーリからのキスを受けながら頭の片隅で明日のことも考えながらも、やっぱり目の前のユーリのことで頭がいっぱいな私は、相当ユーリに毒されているのだろう。







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