テレビをつければ親が子供を殺しただとか、子供が親を殺しただとか、政治家が賄賂を行っただとか、どっかの株が急落しただとか。
明るいニュースばかりじゃない。
逆にどっかの芸能人が結婚しただとか、妊娠しただとか、大昔の遺跡の残りカスが発見されただとか。
かといって明るいニュースもある。

今進んでいく時間の中で、犯罪者も政治家も社長も芸能人も、そして俺のような小市民も過ごし方が違うにしろ、同じように存在する。

「ま、当然なんやけど」
「は?」

年が明け、約2時間。
きっと世間は大騒ぎだろう。
ここから歩いて5分ほどの道頓堀なんて人で溢れかえってるだろう。

そういえば紅白はどっちが勝ったんだろうか。
まあ、ガキ使はいつものように年明けも関係なく終わった頃だろうか。

「どしたの?」

そう言ってモゾモゾと俺の腕の中から顔を出した彼女は、つい3時間ほど前に大阪についたばかり。
そのままなだれ込むようにラブホに入って今に至る。

「ん、どーもせーへんで」
「んっ」

そのまま彼女のまぶたへとキスを送る。
するとくすぐったそうに笑みを浮かべた。

先輩のミスで年末31日まで仕事をするハメになった。
本来であれば30日までであるのに、だ。
予定の中で31日は部屋の片付けをして、電気屋に行って、食材買い込んで男の一人料理…のはずだった。
そう、今ここにいる名前の存在も本来であれば東京にいるはずだったのに。
まさかのイレギュラーが二つ重なったのだ。

「新年をどやってみんな、過ごしてるんかなぁ思って」
「んー、そやなぁ…」

そう言って、モゾモゾと腕の中からはいでてきたかと思うと、サイドテーブルにおいてあるペットボトルへと手を伸ばした。

室内は全体的に青い内装をしている。
いつも名前はセックスをする時ライトを消したがるので、暗い。
安そうな室内にはプラネタリウムのようなライトアップが設置されていて、くらい室内の中でも星空をイメージした天井へのライトで、ほんのりと照らされている。
今年の天気はバッチリ晴れだから、星も良く見えるだろう。

「あぁ、星…見とる人おるかもしれんな」
「都会では見えんけどな。ま、田舎の方やったら綺麗やろな」

でも寒そう、私いや。そう言って、ペットボトルの水をぐいっと喉に流す。
名前は寒がりだ。

「飲み屋で過ごす」
「100人中10人ぐらいかな」
「家族とコタツ入ってテレビ見て年越し」
「ん〜、100人中15人」
「ライブで年越し」
「ええ〜、100人どころかもっと少ないよ」

そう言って、ペットボトルを飲み終えると、またもとの場所に戻し、寒い寒いと言いながらベッドの中に戻ってくる。
俺はそのまま温めるように抱きしめた。
嬉しそうな声を漏らすので、首筋へと唇を寄せて、がぶりと噛み付くと、ギャーとかわいげのな声をあげた。

「もう…、でもさ、きっと一人でパソコンに向かってる人、多いよ」
「俺、お前来んかったらそれやったんでな」

そういうと愉快に笑い声をあげながら、俺の背中へと腕を回した。

「ラッキーやったな」
「ほんまやで仕事、いけたん?」

そういうと、上目使いで俺を見上げてきたかと思うと、そのまま頬を胸元へとすりつけてきた。

「尽くす女やろ?」
「…あはは、ほんまかなわへんわ」

世の中は、いろんな人で溢れていて、幸せな人もいれば、そう出ない人もいる。
一人の人もいれば、そうでない人もいる。

自分自身の現状の暖かさをかみしめながら、今年はいいことありそうだと胸の中の名前をまた、強く抱きしめ返した。

「あ、そういえば、いってなかったね」
「ん?」
「蔵之介、あけましておめでとう」

愛しいという感情と共に君へ送る言葉。


「おめでとう、今年もよろしくな」


そっと口付けると、極上の笑顔を浮かべた名前を目の前に。

「よっしゃ、ということで」
「ということで、じゃないよ。ちょっ、どこ触ってん!」

彼女がいるなら、今年も訪れる単調な日々も、疲れた鏡の中の自分自身も愛せる気がする。








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