10万hit記念小説 | ナノ
2(end)
そう思わないかい?と顔に書いて俺を見つめてくる三上先生には悪いが俺にはさっぱり訳のわからない話だ。そもそもそう言う考えを持っているならだるまさんが転んだを選んだ時点でアウトではないだろうか。
まぁ一々そんな事を言うのは面倒なので、突っ込む言葉はぐっと飲み込んで
「じゃあ次俺鬼やりますね!」
と壁にベタリと張り付いた。ちょっと張り付きすぎたかなとずりずり下がって丁度良い体勢を探していれば後ろから「いいよー」と三上先生が合図してきたので二回戦目を始めた。
「だるまさんが、転んだっ!…わ、近っ」
「…ふふ」
3回くらい振り返ると、もうすぐ近くに三上先生が来ていた。何故今タッチされなかったのか不思議なくらいだ。俺はタッちゃんの器ではないというのだろうか。取り敢えずふるふると震えてみせるがそんなに悲しくもなかったのでだるまさんが転んだを続ける事にする。でも多分次で俺はタッちゃんになる。
「だーるまさんが、こーろんだ」
「…」
「え?…だるまさんが転んだ!」
「…ふふ」
「あ、だ、だるまさんが転んだ!」
「…」
なんでタッチしてこねぇんだよ!?!?
どうして何度振り返っても三上先生は同じ俺の50センチ後ろにいるの!?手伸ばせば絶対届くよね!?星屑ロンリネスは一生こねぇのか!?
何度振り返っても微笑んで俺を高い位置から見下ろしてくる三上先生と目が合い、困ったぜと眉間を押さえた。
「先生…」
「どうしたの栗島くん?」
「なんでタッチしてくれないんですか!?俺ずっと待ってんだけど!!」
一度戦は休止だと言わんばかりに俺は両手を肩あたりまで上げて壁に背中を預けた。そんな俺を見た三上先生は楽しそうにふふふと笑うと長い腕を俺の頭にぽすぽすと乗せてまたごめんね、と口にする。
「栗島くんがあまりにも可愛くて、ちょっと動けなかった」
思わずガツンと後頭部を壁にぶつけてしまった。いや、可愛いとか、俺は三上先生のペットのプーちゃんとやらに似ているらしくて良く言われるから、別にその言葉に驚いたわけではない。
ただ、俺はもう戦は休止というか終わらせるべきだと思った。
「先生俺もうだるまさんが転んだはやめる!」
「わ、ごめんね栗島くん、僕ちゃんとやるから」
続きやろ?と髪を梳かれて優しく首を傾げられて、なんとなくで頷いてしまった。
やべ、と思った時にはすでににこにこした三上先生が俺を見下ろしていた。まぁ、楽しそうだからいっか、と俺も再度壁の方を向いた。
すると、
「だーるま、ひゃぁっ!?」
「ふふ」
「な、なっ!!」
再開しようと口を開けば、つぅー、と首筋を温かい何かが伝って、俺は思わず飛び跳ねた。反射的に首筋に手をやれば湿っている。
三上先生、俺の首舐めやがった!
口をパクパクとしていたら楽しそうに目を細めた三上先生が、ゆったりと無駄に色香を溢しながら自分の唇を舐めた。
「ふふ、おいしい」
その後びっくりして腰を抜かした俺に流石に悪いと思ったのかちょっと眉毛を下げて謝ってきた三上先生の事は美味しいチョコレートをもらったから全部ゆるした。
end
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