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数十年前に生き別れたという女の思い出話を延々とドフラミンゴは語った。

「それで、その女はどうなったんだ」
「知らねぇよ。あの日炎の中に消えていったのを見たのが最後だ。それ以降は行方もわからねぇ…いや、違うな。行く島行く島で聞いてみたところ、ある島までは女の目撃情報はあったんだ。が、そこからプツリ、と消えた」
「…その女がどうなったか教えてやろう、ドフラミンゴ」
ひゅう、とドフラミンゴが息をのんだ。サングラスの奥の見えない瞳までもが動揺にゆれたのを見つけて酷く愉快な気持ちになる。よく回るはずの器用な舌をこんがらがらせて、ドフラミンゴはやっとの思いで言葉を紡ぎ出した。
「なん、でお前が、知ってんだ」
ドフラミンゴがこんなにも感情を顕にするなんて、それもとうに死んでしまったであろう女一人のことで。昂揚感に水を差す一抹の思いを押し込める。口に含んだワインはすっかり温くなっていた。
「なんだ、信じたのか。嘘に決まってんだろう?俺がそんな女のことなんて知るかよ」
一笑に、もとい大笑で吹き飛ばして仕舞うことも出来ない男を、かわりに笑ってやる。お前はいつからそんなにおめでたい男になった、なあドフラミンゴ。
「そもそも、もう生きてる訳がねぇだろう。女が一人で海賊に攫われてどうして生きていられるとでも?美しかった髪も肌も瞳もとっくの昔に魚の餌さ」


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