ギン乱



▽ギン乱(ギン語り)


あの日。きらきらとお星様が降る夜にお星様よりもっと綺麗で、まるで太陽の様な女の子を拾った。乱菊はすごく優しくて、太陽みたいに暖かい。可愛い可愛い気まぐれな子猫だった。僕のことを、優しいねって笑って、大好きだよって言ってくれた。今までずっと、僕は一人なんだと思ってたから。それが凄く凄く嬉しかった。僕は何もそう、十分な食べ物さえも持っていなかったから乱菊に何もしてあげられなかった。暖かい寝床も、美味しいご飯も、綺麗な着物も、何にもあげられた無かったけれど乱菊はそれでも私は幸せなんだと微笑んだ。ギンに逢えて、ギンに拾って貰えて幸福なんだと、そう言って僕を抱きしめた。僕はその度に、じくりと胸を刺された様な気持ちになる。ごめん、って乱菊に謝りたい。僕は子供だから十分に乱菊を護ってあげられたない。ぼろぼろと、心臓の内側でいつも泣いていた。夜の様な僕の心で、只ひたすらに乱菊が夜明けを連れて来るのを待っている。

気を抜けば胸の内側の蛇に呑まれそうになるから、暗い夜道を必死になって逃げてきた。躓きながらも余計なものなど見ぬ様に、固く瞼を閉ざして。立ち止まって目を開けて、濁流の様な光に飲み込まれるのが恐かった。光に溢れた世界は、きっと視界も全部光で満たされていて何にも見えない。見えないことは恐ろしい。何処に敵がいるかわからないから。でも。それでも。僕は知ってしまった。手放すことの出来ない、七色に輝く太陽の光を。暗い世界の為だけの閉じた瞼は、じゅうと音を立てて眩しすぎる光に溶けて消えた。


(あの日から、君が僕の全部)






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