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悪魔は甘美な罠を張る - 9



*瀧本side**


瀧本組といえば極悪非道のド外道の集まりと悪評高い極道だ。
そんな家に生まれた自分は自分でもどうかと思うくらい、ゲスなキチガイだろう。
だからといって変わろうとも思わないし、変えるつもりもない。

人を知るため大学までは通え、という母親の命令で所属する高校もサボリ気味のある日、親父がカタギを轢いたというので興味を持った。
久方ぶりの高校で俺を目にした教師の怯えた瞳に飽き飽きしながら、馬鹿な女が誘ってくるので泣き叫ぶまでハメたあと、自分の教室へ行けばゴミ箱を漁る冴えない幸薄そうな男を見つけた。
ゴミ箱から取り出されたボロボロの教科書を見て、すぐ合点がいく。

あぁコイツ、苛められてんのか、納得。

大方、服の隙間から覗く怪我の痛みに気が散って、親父の車に轢かれたのだろう。そのとき擦ったという右頬のガーゼに確信を得て、俺の脳内は目まぐるしく回る。


「親父に轢かれた野郎に興味があって久々に登校したけど、来て良かったわ。
堀田、だっけ? お前さ、俺の使いどころを間違えんなよ?」


カチ、と出た結論がすぐ口から飛び出た。
笑う俺を見る男は、堀田は頷くことも首を横に振ることもせず、ただじっと俺を見上げていた。

その日から俺は堀田を側に置き、幼稚だが執拗な苛めから守ってやった。分かりやすい関係の変化にアホ共は悔しそうに堀田を睨んでいたが、誰も俺に逆らおうとはしなかった。
そんな俺に守られ、孤立から脱した堀田が縋るのも時間の問題だ。そうなりゃこっちのもん。ぐずぐずに溶かしたあと、今の苛めが可愛いと思えるくらい地の底まで突き落としてやる。

そのとき見せるだろう絶望に染まった顔が、ただ見たい。理由なんぞそんなもので十分だろ。




 


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