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軟禁倶楽部 - 2



扉の向こうから迫る光に目を細める。その明るさに目が慣れた頃、俺はそっと息を呑んだ。
正方形の部屋は四方が鏡張りとなっており、中央に鎮座された悪趣味な女神像を中心に、外へ向かって不規則に並ぶ赤い革張りのソファー。すでにその内のいくつかには人が座っており、皆が口を閉ざしたまま俺を見つめていた。

扉の内側にいた仮面をつけていた男の一人がすっと近づき、俺に頭を下げる。つい習って頭を下げようとする俺へ緩やかに首を振った男は、導くように右手を挙げてこちらを見ていた。弱々しく頷いた俺を確認し、男が歩き出す。それについて行けば、Tと書かれたカードの置かれたソファーへ案内される。


「あの、」


色々と聞きたいことがあった。だから口を開いた俺に、しかし男はまたも緩やかに首を振り、再び頭を下げ、元居た場所へと歩き出すのだった。

少し、いや今さらながら後悔している。あの日、この不気味な倶楽部から送られてきた手紙に同封されていた写真は確かに栄二だった。成長しているとはいえ、見間違うはずもないあれは栄二の姿だった。まるで目の前に人参でもぶら提げられた馬のようにここまで来てしまったが、本当に良かったのだろうか。

ちらりと周りを見回す。ソファーに座る人々はもしかしたら街ですれ違っているかもしれない、そんなどこにでもいそうなありふれた人たちばかりである。女子高生、専業主婦、フリーター、サラリーマン。そんな雰囲気を感じ取れる私服姿の彼らは、すでにこの異質な空間に慣れてしまったのか、各自好き勝手に、だが大人しく座っていた。

……今はまだ可能性にすぎないが、恐らく栄二もこの軟禁倶楽部へ訪れたはずだ。そして、誰かに軟禁されたはずなのだ。でなければ、あの同封されていた写真の説明がつかない。
そう結論付けてここまでやって来たのだが、もしもこれが俺を騙すための罠だとしたら、間抜け以外の何者でもないんじゃないか? いや、そもそもこんな倶楽部を経営できる人間が、どうして俺を騙す必要がある。――やはり、栄二はここに関わっているに違いない。




 


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