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食らわば皿まで - 14



*諏訪side**


「ほれ、あーん」

「あー」


ぱくり。もぐもぐ。今日も今日とて餌付けの時間。自分の甲斐甲斐しい一面に反吐が出そうだが、なんでも喜んで食べる辺り、やはり古滝はどうしようもないほど馬鹿らしい。
しかしつくづく思うのだが、コイツ、細すぎやしねーか?


「古滝、ちょっと両手挙げてみ」

「?」


素直に両手を挙げる古滝。馬鹿だ。
とは言わずに脇腹を手で掴む。あれだけの量が一体どこに消えているのか疑わずにはいられないほど、古滝の体は細かった。
下から徐々に上へと手を滑らせる。くすぐったそうに体をよじる古滝につい、思わず気がついたら、俺は古滝を抱きしめていた。


「……ほっそ……」

「太らない体質らしいです」

「あ、そー……」


それ聞いたら一部の女子が騒ぎそうだな。しかし抱き心地いいな、コイツ。細いからすっぽり収まるし、こう力を込めるとぴったり体がくっつくのがたまら……。いや、何してんだ俺。

平静を装い離れたが、古滝は古滝で気にも留めていない顔をしていた。
このときの俺は欲求不満なのだろうと思い込んだ。思い込んで、それから古滝とは少し距離を取った。空いた時間で女を抱いた。両腕で抱きしめてもみた。なのに頭をよぎるのは、あの大ぐらいの細い馬鹿の華奢で今にも折れそうな体。
抱くのなら、少しくらいふくよかなほうが抱き心地がいいことを知っているのに、忘れられない細い細い、古滝の体。

悶々としながら過ごすある日。俺は目の前の光景に動揺が隠せずにいた。
古滝が、浜津とキスをしていたのだ。いや、実際はしていないのだと思う。角度的にそう見えただけ。腕に絡まる女も同じように見えたのか、ニヤニヤと心底嫌らしい笑みを浮かべている。

なのに、俺は古滝に声をかけていた。普段の自分からは想像もできないほどひ弱になっていた。言質を取っただけの付き合いだろうとなんだろうと、古滝は自分の恋人なのだと慢心していた。古滝は、俺の名前すら憶えていなかったと言うのに。


「古滝、あーん」

「あー」

「うぜー、お前マジでうぜー」


男同士などクソだと今でも思う。だけどとりあえず、餌付けをつづける俺を心底嫌う浜津よりは、古滝に俺を見ていて欲しい。




 


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