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食らわば皿まで - 10



*浜津side**


そんなアホアホ古滝と過ごすうち、俺はあることに気がついてしまったのである。

食べ物以外に興味のない古滝が、俺以外の人間の名前を覚えていないのだ。いや、家族は別として。
しかも俺を友人として認めてくれたのか、周りとの扱いに違いを見せてくれるようになったのである。とは言ってもそのブラックホールから取り出すどこで売ってるかも知れん食べ物をタダでくれるだけではあるが。

しかしこれにはまたも度し難いことに、胸が熱くなった。ついでに古滝を抱きしめたくなった。めちゃくちゃ抱きたくなった。いや重症だな俺。

ふと思えば古滝とつるむ様になってから、そういや俺、女抱いてなくね? 誘われても気が乗らねーつぅか。


「諏訪くん! 古滝くんと付き合ってるって本当!?」

「あ? あー、本当」

「嘘やだ、なんでー!?」


――そんなある日のこと。珍しく寝ぼけている古滝にアーンしてやっていると、廊下で女子が悲鳴を上げてこれまたアホな話をしていた。

古滝が、諏訪と、付き合っている?

いやいやいや、無いわー。マジないわー。
だって古滝だぞ? この古滝だぞ? 食べ物にしか興味のない、友人は俺しかいない古滝だぞ?
目の前で口を開けて次の食べ物を待つ古滝の舌を、箸で掴んで引っ張った。


「おい古滝、てめぇ諏訪と付き合ってんのかよ」

「ふぁー?」

「そう、諏訪。いつ付き合い出した? つーかどこで出会った?」

「ふぁー?」


ふぁー、じゃねぇよコラ。真面目に答えろ。箸を離して古滝を見ると、奴は首を傾げて俺を見上げる。


「うーん?」

「……」


あぁ、うん。このまったく身に覚えがありませんって顔は間違いなく古滝だ。さっきの話は俺の聞き間違いか。いや重症だな俺。

と、思っていたがその翌日から諏訪に呼び出されるたび古滝がのこのこ着いていくようになった。不審に思ってあとを追うと、なんとアホ古滝は餌付けされていた。そんで抱きしめられていた。俺の血管もブチ切れていた。しかしここで飛び出すほど俺も子供じゃない。けど古滝、てめぇのブラックホールはいつかまた燃やしてやる。

さて、とりあえず古滝を取り戻そう。帰ってきた古滝に「どこ行ってた?」と聞いても「なんか食べ物くれた」と答えているうちは、古滝の中で諏訪の存在は無いのだから。そう、焦ることはない。だが古滝、てめぇ覚えてろよいつか絶対ブチ犯す。



 


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