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したらば俺の争闘戦線 - 2



おしゃれハゲの不良さんがギロリとこちらを睨む。自分の制服を汚したミコにゃんを見下ろし、すっとその手を伸ばした。
俺はすかさず妹の前に立ちふさがり、ガタガタ震える足を堪えて財布を出す。


「い、妹がごめ、ご迷惑をおかけしました! あ、あの、クリーニング代はもちろん出しますのでっ、」

「あ? クリーニング代? おいおいお兄ちゃんよぉ、アンタの妹が打つかって痛んだ俺への慰謝料どうしてくれんだよ?」

「もち、もちろん出します! 出しますから!」


俺の背中に隠れて震える妹の手に、ここは俺がなんとかしなきゃと意志が固まる。たいして中身のない財布から今月のおこづかいを引っ張り出すが、その途中で財布ごと奪われた。


「チッ、しけた中身だなぁ、おい」

「すっ、すみません!」

「あ? いいよいいよ、足りない分はお兄ちゃんが払ってくれんだろ? な、お兄ちゃん?」

「え……――ぐっ!?」


まさか。思考がグラリと揺れる間もなく強烈な痛みに襲われた。クラッと世界が回って吐き気を催すが、おしゃれハゲの後ろにいた仲間たちが妹に手を伸ばしたとき、俺はすかさずその幼い体を自分の腕の中に閉じ込めた。


「やっぱさぁ、お兄ちゃんじゃダメだろ? ぶつかったのは妹なんだし、反省すんのはそっちだよな? なぁっ!」

「いっ……!」

「おに、いちゃ……っ」


妹を庇って背中を見せる俺に、不良たちの躊躇いもない強烈な蹴りが飛ぶ。痛みに顔をしかめて汗が流れる。そんな俺の耳に届くか弱い声に、そっと微笑んだ。


「大丈夫、だいじょーぶだよ、尊(みこと)、お兄ちゃんが守るかっ、ら……」

「おにっ、ちゃん!」


尊が涙をボロボロこぼして叫ぶ。俺はそんな尊に微笑み腕の力を強める。この腕だけは、絶対に離さない。
そう強く決意した瞬間――、


「俺も混ぜろよ」

「ラミットちゃんスペシャルロケットアターック!」


やけに色気を含んだ男の声と、それに被さるほど強烈な単語を放った楽しそうな声が木霊した。




 


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