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それから仁さんお手製絶品オムライスを堪能し、よく分からないハイテンションで飲みまくったあと、おぼつかない足で家へと帰宅する。
明りのついていない部屋を見て落胆する反面、今日はいいことだらけだったのだと自分自身を奮い立たせた。

鍵を開け、ギョッとする。
兄の靴がそこにあったからである。

瞬時に体が反応し、息を止める。バレないように、そっと靴を脱いだ。


「……」


物音一つ立てずにリビングまでくれば、どうやら兄の姿はない。寝ているのだろうか? 珍しい。
そんなことを思いつつ緊張したまま自室を目指せば、さらに俺の目は見開くこことなった。

信じられないことに、キッチンに置かれたダイニングテーブルの上に……オムライスがあったのだ。
ケチャップはつけられていないがラップのされた、黄色いオムライスが確かに置かれていた。


「……う、そ……」


ありえない、けど、夢じゃない。
いや、もしかして酔っぱらってるから幻覚でも見てるんじゃないだろうか?
鈍い動きで頬をつねる。うん、痛い。

じゃあこれは――。


「夢、じゃ……ない?」


理解した途端、俺はなりふり構わず兄の部屋に飛び込んだ。
激しい物音が静寂な部屋に鳴り響く。その音で起きてしまっただろう兄が恐ろしい殺意を俺に向けてきた。

と、いうのに。
正直、このときの俺はどうかしていた。

……俺は、部屋に飛び込んだその勢いで兄に抱き着いてしまったのである。
上半身を起こしながらこちらを睨む、その逞しい体に……だ。


「あ、あれ! あの、オムライス……っ!」

「……」

「作ってくれたんだろ!? え、俺のため!? わ、わ……どうしよ……っ」

「……」


なんだか馬鹿みたいに興奮しながら、緩んできた涙腺から涙らしきものが湧いてくる。
それなのに、俺は笑みを浮かべながら兄を見上げた。


「う、れ……しい……っ!」


ぽろり。たった一粒だけ、兄のベットシーツに俺の涙がこぼれた気がした。




 


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