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デスリカで兄と接触したあの日から、俺の日常には大きな変化が二つあった。
一つは全校生徒に玲央と兄弟であることが知れたこと、そしてもう一つは……このマンションに来てから作り続け、食べられることのなかった兄の分である料理が、一週間に一度くらいの割合で食べてもらえるようになったこと、である。

とは言っても、一口二口かじっているだけなのだが。




「ねぇトラちゃーん、種目なにがいー?」

「種目?」


いつものように調理室でサボっていれば、らくがきだらけの紙をひらひらさせた雄樹が俺の近くに腰を下ろす。


「そ、種目。もうすぐ体育祭だからー、先生が決めてくれって。ほら、俺ら教室いってねーから〜」

「あー……確かに。いつもここ直で来てるもんな、俺たち」


力が絶対なこの不良校において、授業というものが行われることは滅多にない。そのため場所取りにて調理室を手に入れた俺と雄樹は教室など向かうことなく、いつもこの場所で過ごしていた。
そんな言い方をするとまるで俺が不良のように聞こえるが、断じて違う。俺は不良じゃあない。


「で? 種目ってなにあんの?」

「んーとね、色々」

「いや、その紙見せろよ」


なぜか口で説明しようとする雄樹に軽く突っ込み、らくがきだらけの紙をその手から奪い取る。
変な丸い生物らしきものは無視するとして、種目ってほとんど人決まってんじゃん。
えー、空いてんのは……


「障害物、借り物……スプーンレース?」

「それねー、俺も知らなくて聞いたらー、なんかスプーン咥えて走るんだってー。ピンポン玉乗せてねー」

「……へー」


不良校には似合わない競技だと思いつつ、不良には似合わない種目だけが残っていることに気づき、俺は冷ややかな目で紙を見た。
やつら不良というのはプライド重視なのだ。恐らく、雄樹にはそれが通用しないだろうけれど。




 


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