「やっばいっ! トラちゃん俺やっばいよっ!?」
「おー、記念に写メ撮ってやろうか? はい、チーズ」
「いぇーい!」
パシャリ。雄樹のスマホで今しがた撮影した写メを見せると、雄樹は更に興奮しながらニコニコとメールを打ち始めた。多分、添付して仁さんに送るのだろう。
俺の隣でくすくすと微笑んでいた志狼と目を見合わせて、苦笑する。
「小虎はどうだった?」
「まぁ、いつも通りだな。志狼は?」
「んーまぁ一応、進学校にいたからね、俺」
あぁ、そういえばそうでした。
志狼の答案用紙に書かれた赤字のオール百という数字に目を細める。
ちなみに雄樹は平均九十台で、俺は九十と八十台でバラバラだ。つまり、仲良し三人組の中に追試はいない。それが結果である。
志狼が俺たちの高校に転校してから数日経つが、まるで以前からそうであったかのように、名目上はカシスト支店の調理室にてダベっている俺ら三人は、追試なし祝いとして各自お菓子を取り出し、同じように持ち込んだ炭酸水で乾杯する。
「けど雄樹が小虎より頭良いとは思わなかったな。カンニングしてないよね?」
「ちょっと、シローくん失礼ですよそれー」
「ごめんごめん」
確かに、尋常では考えられない記憶法で恐ろしい点数を叩きだす雄樹には驚かされるが、今回のように全教科高得点というのは初めてだ。志狼が持って来たポテチを頂きながら理由を問うと、雄樹はアホ面満開で笑った。
「今回のテストで良い点とったら、進学は美容専門学校でも良いって親と約束したんだー」
「「美容専門学校?」」
思いがけない返答に俺と志狼の声がかぶる。
うんっ! と元気な返事をする雄樹は頬を染めてふにゃりと笑む。
「俺、将来美容師になりたくて」
「お前……だから髪色コロコロ変わってたのか」
「ん? それは俺の趣味」
趣味かよ、と真顔で突っ込む俺にケラケラと雄樹は腹を抱えるのだった。
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