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それから部屋に戻ると、ちゃんとお粥を食べたらしい豹牙先輩がどこか照れくさそうに「おかえり」と言ってくれた。それに微笑むと、恥ずかしそうに豹牙先輩が俺の頭を撫でる。


「お粥、ありがとな」

「いいえ。俺、そのくらいしかお役に立てませんから」

「謙遜すんな。お前はすげーよ」

「あはは、なんですかそれ、褒めてもなーんも出ませんからね?」


と、無邪気に笑う俺を見つめる豹牙先輩の顔は、どこか少しだけスッキリしていて、俺もなんだか安心できたのである。

翌日、元気を取り戻したらしい豹牙先輩が作ってくれた朝食にありついていると、テレビを見ていた新山さんが「あ」と呟いた。思わずそちらに目を向けた次の瞬間、俺は食べていた玉子焼きを軽く噴いた。


「うお、かっけーなオイ。最近の若者って手足長いと思わない? ねぇ、仙堂」

「すみません新山さん、こんなに手足が長くて」

「いや俺、お前に言ってねーよ?」


なんて朝から漫才を繰り広げる二人の間から見える画面に映るのは、あの日から一向に連絡を寄こしもしない玲央の姿なのであった。

どこか野性味溢れた服が乱れるのも構わず、画面の中で一心に走る姿は汗一つでも美しい。たまにアップになって少し乾いた唇が吐く息の音が、耳元で聞こえてきそうなほど艶めかしい。バックで流れる女性の歌は、表記されてもいないのに歌詞と玲央の姿が重なって、涙が出そうになるほど切ない。

音が徐々に小さくなり、画面には「新曲発売」の文字。これは、多分以前言っていたMVなのだろうと、頭は理解しているが気持ちはまったく追いついてこなかった。


「なに、これ」


ぽつりと呟く。


「なにってMVだろ」


誰かが応える。いや、誰かじゃない、誰かなんて分かってる。この声は、


「またなんか溜めこんだ顔してんなぁ、馬鹿トラ」

「……れお」


正真正銘、本物の玲央だ。




 


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