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俺の身柄自体は新山さんが預かっているということで、彼の車に乗せられやってきたのはネオン通り近くにそびえ立つ高級マンションだった。バイト先へも激近。なんて思う俺をよそに、俺以上にはしゃいでいる新山さんに引っ張られて部屋へと案内された。


「やっほー、小虎くん」

「司っ!」


そんな高級マンションの一室にて、我が家同然という顔で寛いでいたのは司さんである。あぁどうも、と俺が返事をするよりも早く、彼の姿を認めた豹牙先輩が怒鳴りを上げ、司さんの胸倉を掴んで持ち上げた。


「えっ!? ひょ、豹牙先輩っ!?」

「小虎、ちょっと黙ってろ。おい司、てめぇこれはどういうことだ」


実の兄であり、体の関係もある司さんに向けるには剥き出しの怒りを抑えながら、豹牙先輩は一度唸る。そんな弟である豹牙先輩を見つめる司さんは、ひどく冷めきった目を彼に向けていた。


「なぁーに怒ってんの、ひょーが? 落ち着きなよ」

「てめぇ……いい加減にしろよ。わざわざ新山引っ張り出して一体なに企んでんだよっ!」

「落ち着きなって言ったよな? 見ろよ、当事者の小虎くんのほうが冷静じゃん。頭冷やしておいで、ひょーが」

「司っ!」


飄々とした司さんの態度が気に食わないのか、豹牙先輩が再び声を張り上げる。次の瞬間、そんな豹牙先輩は床に倒れていた。一瞬のことで意味が分からず目を瞬かせる俺に、隣に立っている新山さんが「こえー」なんて言っていた。

豹牙先輩を恐らく殴っただろう司さんは、ずれた眼鏡を戻しながら床に倒れる弟を一瞥する。


「黙ってろ。てめぇの役目は見届けることだ」


と、俺には分からない一言を告げると、未だ床に倒れる豹牙先輩の襟元を掴み、近くの部屋に放り投げた。その光景に絶句している俺を余所に、いつのまにやら逆隣りに立っていた仙堂さんが「見習わなくてはいけませんねぇ」などと呟いている。

くるり。こちらを振り返った司さんのいつもの笑みに、今度こそ俺は恐怖に竦んだ。




 


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