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司さんが悪ぶってブラックマリアを支配するように、正義を盾に散々なことを言うこの人にもなにか事情があるのかもしれない。多分、それはきっと誰にでもあるものだ。だからこそ、時に傷ついたり慰められたりするはずなんだ。


「……俺が、あなたの言うことを聞けば、事は早く済みますか?」

「……そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。こればっかりはね、人の行動に制限はつけられない、だろ?」

「特にそれがノアさんなら、ということですか?」

「あはは、少し違う。悪人ならってことさ」


この人を信じるわけではない。
今の俺には幼さに身をまかせて騒ぎ立てるほどの非力さしか武器はない。だからこの人をも凌ぐ武器を手に入れなくちゃ。

今もって抱えられる猟銃に、勝る一転を見つけるんだ。


「ところで一つ気になってるんですけど、俺はこれから自宅に帰ることはできないんですよね? どこに行けばいいんですか?」

「自宅は無理だねぇ。ノアと君を接触させるわけにはいかねーからね。だから君には部屋を用意したよ。ちなみに金銭的な工面は司にしてもらいましたー」


……話の流れにいくどとなく登場する司さん。多分、今回の麻薬組織であるノアさんと司さんのあいだには因縁深い確執があるのだろう。いや、もしかするとノアさんではなく、その麻薬組織の可能性も高い。

とにかく、まぁ。


「とりあえず、今は大人しく従います。世話を焼けと言った手前、俺がどんな家事をしても絶対に文句は言わないでくださいね」

「……おやおや、君は本当に面白い子だねぇ。とりあえず自慢のお粥、食べさせてね?」

「分かりました。お粥だけは絶対に作りません」

「えぇ!? ちょ、仙堂! 小虎くんが、小虎くんが反抗期だー!」

「自業自得でしょ、僕に振らないでください」


それまでただじっと話を聞いていた若い男性が顔をこれでもかと歪め、そう告げた。
これからの生活に不安しか覚えずにいる俺でさえ、その光景にはつい苦笑が浮かんでしまうのだった。




 


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