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モデルが変わった状態で撮影はつづくが、玲央はずっと不機嫌なままだ。
おまけにカメラマンの様子も時間が経つにつれ、なぜか険悪となっている。
撮影に慣れたはずのモデルたちは怖い顔をするカメラマンに萎縮してしまい、それを見たカメラマンはさらに怒気をはらむ。延々とつづく悪循環。
匡子さんをはじめとしたスタッフの顔色も悪くなるばかりだ。

それでもなんとか外での撮影が終わりを迎え、次はスタジオへ移動らしい。
匡子さんは来たときと同じ車に俺を乗せてくれた。おかげでその間だけは気を抜けたが、次はいよいよ玲央と……か。
車内が重い空気に包まれていることに気づけずに、俺は不機嫌な玲央を想像して一人ゾッとしていた。


「……玲央、言わなくても分かるな?」

「あぁ」


スタジオについて準備を終えたカメラマンが、やはり不機嫌なまま玲央を睨む。
ついて早々この空気の中で撮影か……二重で緊張するのだが。

こちらを見た玲央の目に、思わず唾を飲む。こ、こわい。
そんな俺を見かねて匡子さんが背中を押してくれるが、それでも俺の緊張は解けずにいる。

玲央のやつ……なんでこんなに不機嫌なんだよ。
しかもなにも話して来ないし。いや、まぁ、俺は声出せないけど、なんつーか、もっとこう……。

玲央の不機嫌が移ってしまったのか、ブツブツ考え事をしながら歩いていると、突然足を引っ張られた。いや、なにかのコードに引っ掻けたようだ。
倒れる! そう思って目を瞑った瞬間、よく知っている香りが鼻腔をくすぐった。


「……あ」

「……前見て歩け」


倒れる俺を助けてくれたのは、玲央だった。
でもやっぱりその顔は少し不機嫌なままで、俺の身体を支える手はすぐに離れていく。
思わず伸びそうになった手の存在に気づき、俺はスカートの裾を握りしめた。




 


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