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採ってきた花を祖母に見せると、祖母は「あらあら」なんて笑いながら、嬉しそうに受け取ってくれた。
意味が分からなくて首をかしげるが、やはり祖母は笑うだけなのだった。

それから車に乗り込み、目的地までゆったりとした時間を過ごす。
後部座席で隣に座る玲央は景色を眺めていたけれど、なんだか無性にその手を握りたくなってしまった俺は、一緒についてきた達郎を撫でまわしておいた。
しばらくして墓地につくと、車を一番に降りた達郎がどこかへ駆けだしてしまう。
祖父は笑いながら「大丈夫」と言っていたが、心配だった俺は荷物を持ったまま達郎を追いかけることにした。


「達郎!」


犬なだけあって、足が速いな達郎。

行先は決まっているのか、達郎は迷わずグングンと前へ進んでいき、迷路のような墓地の中を俺は走りつづけた。
角を曲がってしまった達郎を追う頃には息が上がってしまい、少し減速しながら俺も角を曲がると、お墓の前でお座りをする達郎の姿を見つけた。
そして、その隣には髪の長い女性が一人、達郎と同じお墓を並んで見つめている。


「たつ……ろ……」


盛大に肩で息をしながら達郎の名を呼ぶと、こちらを振り向いた達郎がワンッ! と吠えた。げ、元気ですね、達郎さん……。


「小虎」

「え?」


うしろから聞こえた玲央の声に振り返ると、ポコンとおでこになにかが当たる。地味に痛かったので手で擦ると、少しだけ肩で息をする玲央がため息をついた。


「勝手に行くんじゃねぇよ、馬鹿トラ」


それからじとりと俺を睨んできたので、大人しく頷いておく。
いつのまにか足元に来ていた達郎が尻尾を振りながら玲央の足に自分の前足を上げていた。
先ほどのお墓を見ると、女性の姿はもう、どこにもなかった。




 


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