飛び散った鮮血がシーツに染みた。
俺は必死に体を丸めて、できるだけ大事にならないよう、いるかも分からない神様にただ祈っている。
力強く恐ろしい罵声が耳を刺すと、その次の衝撃を予想すると同時に背中を蹴られた。
痛い、とか。
怖い、とか。
もうそんなん当たり前で、ただただ事が終わることを待っていた。
――それが、唯一覚えている親父の記憶だった。
話は変わるが、俺、朝日向小虎(あさひなことら)の親父は中学卒業と同時に他界した。
これでやっと解放される、俺は自由だ――それが親父の死を知ったときの俺の感想である。
最低? 最悪? 知ったことか。
万々歳! 万々歳!
これからの俺の人生は光り輝く自由な世界だ!
とか思っていたら。
「今日からここに住め」
両親が離婚した際、離ればなれになった兄に引き取られたのである。
これが優しい兄であったのなら俺だって2LDKの部屋に鍵をつけ、ひたすらに閉じこもることもなかった。
なぜって……両親が離婚した理由というのが、今や唯一の血縁者となった兄の暴力だったからなのである。
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