「なんで……なんで俺のこと、引き取ってくれたの? 俺のこと、うざいって殴ってたのに、言うこと聞いてくれたの?」
「……お前を引き取ったのは、お袋の遺言だったからだ。……けど、それだけじゃねぇよ」
「……え?」
静かに微笑む玲央がそっと、息を吐いた。
「もしお前を引き取らなければもう一生、俺たちは会うことがなかっただろうな。けど、俺はそれが嫌だった。
お前は覚えてねぇだろうけどよ、俺とお袋が家を出て行くとき、お前、すげぇ面して俺を見てたんだよ。
それが忘れられなかった。ずっと俺の心ん中に居座って、罪の意識を日に日に増やしていきやがった。
だから、お前を引き取ればそれも納まるかと思ったが……些細なことにイラだって殴れば、以前よりもひどいお前がいた」
「……だから、俺の言うこと聞いてくれ、た?」
「かもしれねぇ。けど、俺にもまだ兄貴としての優しさってのがあったのなら、可愛い弟の頼みだから聞いてやったのかもしんねぇな?」
「……っ」
どこか悪い笑みを浮かべる玲央を睨む。
茶化しているわけではない。多分、本音しか語っていない。
だから、余計に恥ずかしい。
「可愛いとか、思ってんのかよ」
「思ってるぜ? 俺なりに、だがな」
「……っ」
自分で罠にはまったようで、さらに顔が赤くなる。ちくしょう、玲央のくせに。
「……」
「他にはねぇのか? なんでも答えてやるぞ?」
「…………ううん、いい。それより、さ、少し聞いて欲しいんだ。ちょっと、や、すっげーくさいこと言うかもしんねぇけど、聞いて」
「あぁ、分かった」
玲央が自分勝手なくせに周りを見てるってことは、こうして普通に話せるようになって知ったんだ。
それと同じように、家以外での玲央を見る機会も増して、悩んで、喜んだ。
だけどそのすべてが苦しくなるくらい、俺の頭を痛めてくる。
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