にこりと笑ってみれば、志狼は目を丸くして俺を見た。
かと思えば慌てて逸らし、疲れたように息を吐く。
「……本当、馬鹿だね」
「そうなんだよなぁ、俺、馬鹿なんだよ」
「……うん、馬鹿だ。小虎は、大馬鹿だ」
「ちょ、おい。そこまで言われると普通に堪えるぞ」
背を向ける志狼の肩が微かに揺れている。泣いているのだろうか、それとも笑いを我慢しているのだろうか。
正直な話、どちらでもいい。呆れてもいいし、馬鹿だなって蔑んでもいい。
ははっ。笑い声がして、志狼が振り返る。清々しいほど晴れた顔が、そこにはあった。
「……気が向いたら……――行くよ」
「おう、いつでも来い」
若干震える口元は見なかったことにしてやる。そう顔に書いたまま、俺は笑った。
その瞬間――ガァアアンンッ! と強烈な音が響き、廃屋の入り口がぶっ飛んだ。
俺は動けないので目だけをそちらに向けたが、志狼は体制を整えるようにして構える。
カラッ、カラァアン……。
金属音がする。鉄パイプが床に投げ捨てられていた。
明るい日の光を背にして入り口に立つのは――紛れもない、金の獅子だった。
「……れお?」
ポツリと、声が漏れる。
それが聞こえていたとでもいうのか、金の獅子は――玲央は口角をつり上げた。
「おせぇから迎えにきたぜ、馬鹿トラ」
「……はっ」
うわ、なに、それ。
ちょっと嬉しいとか思っちゃう。
そんな表情が露骨に出ていたのだろう、志狼が舌打ちをして駆け出した。
慌てて前のめりになった体がクンッと後ろに引かれる。ロープの存在を思い出して舌打ちをこぼす。
玲央の後ろには隆二さん、そして豹牙先輩がいる。
さらにその後ろには、なぜかボロボロになった不良たちまでいる。
志狼の仲間だろう不良は今いない。明らかに志狼が不利だ。
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