どこか暗い場所から意識を無理に戻される。瞼ごしに見える照明の強い光に目を強く閉じれば、頬を叩かれた。
それが嫌でまた目を強く閉じる。
「ったく、どいつもこいつもしかたねぇな」
「お前が言っても説得力ねぇだろ」
「うっせぇよ。おい豹牙、さっきの話だけどよ、当分手は出すな」
「……見てろってか?」
「あぁ、そうだ。もう巻き込まれてんだから今はなにしたって同じだ。泳がせる」
「……未然に防げるぜ、今なら」
「防いだところで納得しねぇだろうが、こいつが。だから見てやろうじゃねぇか、この馬鹿が一体なにするのかをよ」
「……はっ、ひっでぇ兄貴」
「今更だろ」
急に体が浮いた気がした。腕がぶらんと空中に舞う。
体全体に伝わる温度に顔を寄せれば、ちくちくとしたなにかに当たった。
「あ? もう帰んのか?」
「この馬鹿が起きねぇからな。今日はありがとよ、こいつの代わりに礼を言う」
「……お前の口から感謝が出るとはな」
「はっ、うっぜ」
ゆらり。ゆらり。気持ちのいい浮遊感が体を覆う。
だけど少し揺れて止まってしまえば、なんだか面白くない。
「……豹牙、一つ言い忘れてたけどよ」
「あん?」
横から頬に風があたる。向きが変わったのだろうか。
「こいつが強いってのは他の誰でもねぇ、俺が知ってんだよ。だから二度と知った風な口を聞くな」
「…………了解、総長さん」
「はっ、」
ぐらり、ゆらり。また浮遊感が戻ってきた。
安心して身を委ねれば、深い眠りが囁くように俺を夢の中へ誘った。
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