今、夢を見ている。寝ていながらそう思う瞬間がある。
まさに俺はそれだった。
あのあと仁さんと違う話もして、眠くなった俺に彼が「寝ろ」と言ってくれて。
そう、確か雄樹とは少し離れた場所に横になったんだ。
で、それから夢を見ていた。
「ったく、なんでお前も来るんだよ」
「いいじゃん、いいじゃん。つーか仁さぁ、さりげなく雄樹くんに膝枕すんの止めてくんね? キモイ」
「うっせぇ。堂々と近親相姦してるてめぇには言われたくねぇよ」
「ひっどー。ちょ、豹牙聞いた? 怒れ怒れ」
「はいはい」
ドンッ。なにかが頭にぶつかった。
痛いわけではないが、少しだけ不愉快で身をよじる。
すると頭に手を乗せられ、撫でられた。
気持ちいい。今度は身を寄せる。
「お、近親相姦? 近親相姦しちゃう? しちゃうの玲央?」
「一緒にすんな」
「えー、でもお前、そういう背徳的なの、好きでしょ?」
「好きじゃねぇよ」
なにかが鼻をかすめる。とても安らぐ香りだ。
「うわー、じゃあ俺、玲央が小虎くん襲うのに十万かける」
「最低だな、お前は」
「はぁ? それ仁のことじゃん。ヤキモチ焼いて雄樹くん犯すとか……はっ」
「……腹立つ」
ガツンッ。なにかが音を立てる。その正体は分からない。
「おい、玲央」
「あ?」
「隆二どうしたんだよ」
「あぁ、泉のとこだろ」
「泉さんの? なんで」
「俺が泉と別れたからじゃねぇの」
「はあ? 別れたぁ?」
髪の間をなにかが通っていった。さらさらと、毛先が落ちていく音が聞こえた気がする。
「なんで、また急に」
「さぁな」
「……どうせ小虎のためだろ?」
「うぜぇ」
「マジかよ。ははっ、本当、お前いつからそんな弟思いになったわけ?」
「はぁ?」
「おー、怖い怖い。で? その大好きな弟くん、これからどうするわけ」
「どうって、なにがだよ」
「だから、巻き込む気かって聞いてんだよ」
「もう巻き込まれてんじゃねぇか」
ぐり。頭皮を押された。身をよじればまた、頭を撫でられる。
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