「だからトラちゃんが性悪にキスされたことも知ってます」
「えぇ!? ちょ、止めろ黒歴史!」
「ふふふ、貴様の弱みはこっちが握っているんだぞー!」
「ぐああっ!」
酒瓶を抱えた雄樹がソファーに立ち上がって指をさす。それに大袈裟なまでに手で顔を覆えば、雄樹は「はっはっはっ!」とか笑っていた。
仁さんに注意されて雄樹がソファーから降りる。隣に座った雄樹の顔を見て、しばらく黙っていた。が、
「ぷっ」
「あはっ」
はははっ! 俺と雄樹は二人して腹を抱えて笑ってしまう。
きっと右隣にいる仁さんは、そんな俺たちを優しい目つきで見ているだろう。
だって、そうだろう。
「も、マジ、うけるっ」
「えぇっ、トラちゃんの顔も、うけんだけどぉっ」
「うっせー」
ひっ、ひっ。二人してしゃくりを上げながら笑えば、仁さんのほうからくすりと笑みが漏れる音が聞こえた。
「最高、本当、雄樹も仁さんも、さいこー!」
「知ってるー! だって俺、トラちゃんのダチだもーん!」
テンションの高い俺に、雄樹が嬉々として抱き着いてきた。
あぁ、なんでこいつはこんなに可愛いんだろうな、仁さん、貴方はもっと自慢していいですよ、自分の恋人のこと。
「おら、笑ってねぇでグラス持て」
「はーい」
仁さんに促されてグラスを持つ。すっ、と雄樹が立ち上がった。
「えー、ではトラちゃんが玲央さんと和解したことを祝しまして〜、かんぱーい!」
カチーン。俺の持つグラスに、雄樹と仁さんが自分の手にあるグラスを当てる。涼しげな音と共に、俺は口元を緩めた。
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