本当はついていく必要などなかった。だけど、やはりカシストに戻れば「もう今日は早退しろ」なんて仁さんに言われるし、隆二さんたちについていけば行ったでため息をつかれるし。
あぁもう、なんなんだよ。ちくしょうめ。
いつ何時でも兄貴が招集をかければチームの者は集わなければならない。そんなルールのもとに集まった不良たちはざっと五十人だろうか?
よくもまあ存在していたと思う廃工場の中で、各自不思議な顔をして待っている。王者の、総長である兄貴の言葉を。
俺は志狼と共に少し離れた場所に立っており、そんな様子を呆然と眺めていた。
「小虎、ごめん」
「え?」
「なんかまた、巻き込んだ」
「あー……いや、俺もなんでここにいるのか分かんないだけどさ、でもそれ、別に志狼のせいじゃねーから」
「……ありがとう」
「おー、いいっていいって」
応急処置をされた志狼が眉を下げる。
いや、それよりこっちのほうが謝罪をすべきなんだよな。早く病院連れてってやりてぇんだけどな。
そんなことを思いながらまた兄貴たちのほうを見る。兄貴は煙草を吸いながら立ったままだ。近くのソファーは汚いので座りたくないのだろう。
隆二さんが携帯で時間を確認していたかと思えば、すぐに閉まって窓のほうを見る。つられて見れば、闇の中に光が浮いていた。あれは――。
――ガシャアアァアアンッ!
なにか言う間もなく、バイクが窓から突っ込んできた。
「……えっ」
しかもそのバイクに跨ってる人は俺の知る――豹牙先輩だったのである。
着地したバイクが集まる不良たちのほうへ滑って行けば、そのまま何人か巻き込んでからやっと、止まった。ちょ、いきなり大惨事じゃねーかよ。
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