ボタン
「げっ!」
友達に用事があって訪れていた隣のクラス。少し離れたところから慌てたような声がした。
「何してんだよ芽生〜」
「引っかけちまった…」
どうやらブレザーの袖のボタンが何かに引っかかって外れてしまったらしい。困っている様子の白馬くんを見て思わずタッと駆け寄ってしまった。
「あの!」
「お、おぉ、どうした」
「私、ボタン付けるよ」
「え?」
キョトンとした白馬くんに、しまった出しゃばり過ぎたかなと一気に後悔が襲う。特に仲良くもない他クラスの女子にそんなこと言われたら確かに戸惑うだろう。
「白馬、その子家庭科部だから裁縫上手だよ」
見かねた友達が助け舟を出してくれる。そのおかげか「まじ?じゃあ、頼んでもいいか?」と白馬くんはブレザーを脱いで渡してくれた。
「昼休みに返しに来るね」
「サンキュ」
そう約束して急いで自分の教室へ戻った。
昼休み、ご飯を食べ終えて裁縫セットを取り出す。制服に使われている糸に一番色が近いものを選んで針に通した。ボタンが取れたのは一ヶ所だけだったからものの数分で終わる。道具を片付けて隣の教室へ向かった。急いで渡さなきゃ。教室は空調が効いてるとはいえ、上着なしで廊下に出たら寒いに違いない。
「白馬くん、これ」
「お〜!ありがとな!すげぇ上手じゃん」
何の変哲もないただのボタン付けなのに、白馬くんは手放しで褒めてくれた。やっぱりいい人だなぁ。
「悪いな、わざわざボタン付けてもらって」
「いいの。この前カイロくれたからお礼したくって」
そう言えば「なんだ、気にしなくて良かったのに」と彼は屈託なく笑う。
「苗字いい奴だな!」と言われて、咄嗟に「白馬くんもだよ」と返す。
白馬くんとお昼を食べていた昼神くんが「なにこれ?」と横から突っ込みをいれていた。
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