帰り道
忙しいバレー部にも部活のない日はあるんだ、と知ったのは蝉が騒がしい月曜日のことだった。
「あれ、国見くんだ。部活は?」
「今日は休養日」
「そんなのあるの?」
「うん」
私が帰る時間に帰り道で彼に会うのは初めてだ。帰る方向を聞けば途中まで私と同じで驚いてしまう。今日は初めて知ることばかりだ。
取り留めのない話をしながら、2人でのんびりと歩く。じりじりと私たちを照らす太陽のせいでじわ、と汗が滲んだ。
「暑いねぇ」
「夏だからな」
取り付く島もない返事だけど、返事を返してくれるだけ優しいなと思ったあたり、私もだいぶ国見くんに慣れたということかもしれない。
チリンチリンと、背後から自転車のベルが聞こえる。避けようと思ったところ、国見くんが私の手を掴んで彼の方に引っ張った。
「わ、」
「あっぶね…」
「あ、ありがとう」
自転車はなかなかのスピードで走り抜けていって少しヒヤッとした。自転車はもう通り過ぎてしまったのに何故か国見くんは掴んだ手を放さない。そんな風にしていたら暑いはずなのに。
私も何故かそのことを指摘できないままで、結局手を繋いだまま別れるところまで歩いてしまった。
バレー部の休養日、国見くんが住む町、国見くんの手の大きさ、体温。
今日は本当に初めて知ることばっかりだった。
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