ひまわり
丁度良いところにいたからと担任の先生に捕まってしまった。
外の花壇に咲いたひまわりを来客なんかが使う正面玄関のところに飾りたいらしい。花瓶を見せられて、適当に切ってこいと鋏を渡された。普通の鋏よりごついそれは、きっとお花を切る専用のモノなんだろう。
太陽の光を燦燦と浴びながら、熱中症で倒れたら訴えてやると大きな花をつけたひまわりを切っていく。ひまわりだって切られたりせずこのまま咲いていたいだろうな、と少し申し訳ない気持ちになるけど許して欲しい。花瓶が割と大きかったのでついたくさん切ってしまった。一人で持てるかな、と少し心配になる。
なんとか抱えることはできたけど、前が見えづらい。えっちらおっちら運んでいたら誰かに背中を小突かれた。
「わ!」
「…少し寄越せ」
私を小突いた誰かが抱えていたひまわりを半分以上持ってくれた。そのおかげでやっと顔が見える。
「国見くん?」
「あのままじゃいつか転んでたぞ」
国見くんはにべもなくそう言って歩き出した。
「部活中じゃないの?」
「金田一に言ったから大丈夫」
「そっかぁ。ありがとう。正直困ってたの」
素直にお礼を言うと部活着の国見くんは淡々と「この前ボディシート貸してくれたし」と言う。お礼のつもりらしい。気にしなくていいのに。
「苗字、こういう生命力強い花似合うな」
「え、そう?」
ひまわりって生命力強い?と首をかしげる。
「強いだろ。繊細な花と違って、種さえまけば割とどこでも育つじゃん」
「待って、急に褒められてる気がしなくなった」
「褒めてねぇよ」
ふ、と国見くんが笑う。
国見くんってこんな顔で笑うんだ。ヒマワリに埋もれるように笑う国見くんはまるで絵画みたいだった。顔がきれいってすごいなぁ。
「国見くんもひまわり似合うよ」
「は?」
「国見くんきれいだから」
「…男にきれいとか言うな」
プイと顔を前に向けて国見くんが足を速める。どうやら気に入らなかったみたい。
正面玄関にセッティングされた花瓶にひまわりを活けていく。運び終わった時点でもういいよって言ったけど、国見くんは最後まで手伝ってくれるつもりみたいだった。意外と優しい。
「苗字って一生懸命とか好きだろ」
「うーん…嫌いじゃないけど好きでもないよ。でも一生懸命になれることは悪いことじゃないと思う」
そう答えると彼は「ふーん」とだけ言ってもくもくとひまわりを活け始めた。なんでそんなこと聞いたんだろう。
ひまわりを活け終わって先生に声をかけると、出来栄えに満足してくれたらしく。褒美にパピコを授けられた。今の季節限定のレモン味。
職員室で食べていって良いというので、お言葉に甘えて2人ソファーに座ってお行儀よくパピコを分け合う。クーラーも効いていて最高だ。
「国見くん美味しいね」
彼と顔を見合わせると、まんざらでもなさそうな顔でこくりと頷いてくれた。
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