Funny


と、いうか。
今私は二人に抱いたことのない感情を覚えていた。

小さい頃に、お気に入りのオモチャを壊された、幼稚園の友達にも抱いた感情。

"怒り"。

いや、まあね。逆に今まで抱いたことなかったってことに驚きを抱くけどね。

兄さんからの。
手紙を。
二人の。
勝手な理由で。
燃やされた。

さすがにこれは、腹が立った。


「……………………あのさ」


止まらない。


「二人の考えはよーく分かった。でもそれって、結局二人の考えなわけでしょ?私の考えは?それに二人は私に大変有難いことに好意を抱いてるようだけど、はっきり言うと私は一切感じてない」


止まらない。

まずいと分かってる。

二人の表情から、余裕が消える。


「もうね、無理。二人が何をしたいのか何を考えてるのかが分からない。ふつう、好きな人に呪文をかけたりしない。許されざる呪文とか尚更」



「それが、ハルカの考え?」



地を這うようなマルシベールの低い声。
……今まで聞いた中で、一番低い声と、殺気。

そして、笑顔。


「……そう、これが私の」


「そっか。……ハルカはもっと賢い子だと思ってたんだけど。じゃあ、そんなハルカに教えてあげるけどね」


言葉が遮られる。


「ハルカの考えだとか、ハルカの心だとか、そんなのは一切僕たちに関係ないんだよ。受け入れる、受け入れない、そんな問題じゃない。分かる?」

「そしてツルノには俺たちを拒絶する力がない。確かに……"家"と"血"はツルノ家のが強いが、今、この場に、それは無い。分かるか?」

「嗚呼、なんて可哀想なハルカ。でもね、逃がしてやらない。もしハルカが僕とエイブリーと以外の名前を呼ぶなら、その口は縫い付けるし、」

「俺とマルシベール以外の奴のもとへ行くなら、その脚は折ってやるし、」

「僕とエイブリー以外の奴のことを考えるなら、考えられなくなるまで犯すし、」

「それでも俺とマルシベールを拒絶するなら……この世界を壊して、俺たち三人だけの世界を創る」

「全部、全部壊してみせるよ。ハルカには僕とエイブリーしかいないんだって、何度でも……どんな手を使っても教え込む」

「狂ってるって思うか?まあ、思うよな。でもな、ツルノが思ってる以上に、俺たちはツルノを愛してるらしい。俺たちから逃げることは許されない。……もちろん、"死"も許さない」

「あのお方が、死を恐怖するのも頷けるよね。……いや、僕は怖くないよ。憎むべきものとは思っているけど。嗚呼、でも安心して、今はまだ知識も力もないけど……魂を縛る魔法が、あるみたいなんだ」

「あー……言ってたな。魂……そうだな、そう。それは名案だ。……うん?ハルカ、震えてるのか?」

「震えてるね。……ふふ、世間一般の……低俗な奴らが想っているような愛じゃない。さっきハルカは言ったね、ふつう、と。ふつうなんて、僕らの間には無い。これはもっと、崇高で高貴なものだよ、ハルカ。ねえ、君はもう受け入れるしかないんだ、僕たちを」


怒涛の愛の告白にどうやら無意識に震えていたらしい。
眩暈がする。
ただでさえ近かった距離が、より近くなる。

視覚に訴えてくる二人の焦りと
聴覚に訴えてくる二人の怒りと
嗅覚に訴えてくる二人の存在が、怖い。


「……卒業まで待ってやろうと思ったんだがな。まあ、ツルノの考えを聞けて良かった」

「早いか、遅いか。同意の上か、強引か。時と手段の違いだしね」


煙が上がっていた二人の杖先が、私に向けられる。


「おやすみ、ツルノ。次目が覚めたら、俺たち三人だけの世界だ」

「そこでハルカは、一生の時を過ごすんだよ」







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