Funny


さて。
好きとカミングアウトされた私は、一体どうすれば良いのだろう。

これまでの行いから、「はいそうですか」とは到底ならない。
しかし狭い部屋に三人。
これまでの経験から、逃げの姿勢も迂闊な発言も許されない。

なんで私はエブリデイバッドエンドかハッピーエンドの極端な分岐点に立たされるんだ?
エブリデイ脳トレか??


「ああ、でも」


必至に打開策を考える私に、何かを思いついたのかマルシベールは言う。


「残念ながら、一妻多夫制は許されていないね」


…………ほう。
意外とまともなことを言うじゃないか。


「それもそうだな……。…………いや、それなら」

「……うん、そうだね。別に結婚しなくたっていい」


……………………ほう?


「俺たち三人が、ずっと、ずっと……誰にも邪魔されずに暮らしていける"空間"を創ればいい」

「空間創造……父上が言っていた、秘密の部屋……のような原理で……」

「嗚呼、簡単ではないが……まあ俺とお前なら出来るだろう」

「間違いないね。そうすれば、僕達は僕達の大義も、そして夢も得られる」


黙って聞いていればいるほど壮大な話になって逆に感心するレベル。
これは……困ったなあ……。
どうすればいいんだろう……。


──コンコン


不意に、窓からノック音が聞こえた。
私含め皆の注意が窓へ向く。


「……ステラ!」


外には、灰色の嘴を今も尚窓にぶつけている私の梟、ステラがいた。
正しく閑話休題。重苦しく漂っていた空気は幾分か軽くなった。
半ば泣きそうになりながら立ち上がり、感謝の念をすこぶる込めて窓を開けると、ステラは手紙を加えていた。

……その手紙を見たエイブリーとマルシベールの周囲の空気が一段と下がったのは気のせいではないだろう。
誰から送られてきたかによっては、私と送り相手の未来は保証されないかもしれない。


「……あっ、兄さんからだ!」


名前を見ずとも、主張の激しい文体と日本の魔法学校、マホウトコロの印で分かった。
良かっためちゃくちゃ安心した。
さすがにこの二人も、純血且つ愛する(?)人の兄には手出ししないだろう。
チラッと後ろを見ると、まあ、まあまあ概ね殺気を収めていた。


「……」

「……」

「……」


……まあ、この手紙をどうするか5秒くらい悩んだが、沈黙から察するに開封して読めということらしい。
プライバシーも何もあったもんじゃないが、兄さんからの手紙は日本語なのでまあまあよしとしよう。

えーと、なになに?


"ハッピーハロウィン!……の、時期だよな?
元気にしてるか?愛しのハルカよ!

日本は冬に向かって段々と寒くなっている。
そっちはどうだ?風邪とか引いていないか?

そうそう、手紙で報告するのもなんだが、早く伝えたいと思ってな!
実は婚約が決まったんだ!
冬の休暇にはイギリスに戻る予定だから、相手のことやその他積もる話はその時に話すぞ!

ハルカはどうだ?
いくつかお見合いの話がきていると父さんが言っていたが……まあ、焦ることはないさ!

なんだったら、日本の奴と、っていう選択肢もある!
妹の話を友達にしたら、是非紹介してほしいって奴がいてな。
俺の友人なんだが……ハルカも一回会ったことがあるの、覚えてるだろうか?

日本に住んでいた時に、隣町の大きい屋敷に住んでた────"


──手紙が燃えた。

緩んでいた頬は引き攣り、手中でぷすぷすと灰になって散っていく兄からの手紙を、ただただ見つめる。

何が起きたのか、ほんの一瞬だけ理解出来なかったが…………コイツらとは付き合いがそこそこなのでね。
すぐ脳の処理が追い付いた。


「……燃やすこと、なくない?」


エイブリーとマルシベールの方を振り向きながらそう言うと、思いの外近くにいた二人は案の定杖を構えていた。
顔はいつもより無表情で。機嫌がそれはとても悪い時の様子で。杖先からは煙が出ている。


「日本語は難しい、って言われるけどよ。俺たちはハルカツルノのことを理解しようと、勉強したんだ」

「リスニングはまだちょっと自信ないけど、その手紙を読めるくらいには覚えたんだよ」

「ああ、勉強していてこれほど良かったと思うことはないな」

「本当に。……ねえ、ハルカ?お兄さんにはなんて返事を書くの?」


……さて。
二人にはなんて言おう。



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