Funny
授業以外は部屋に閉じこもり、食事も直接厨房から持ってきて部屋で食べる生活を繰り返してきた。
そしてついに。
ハロウィンパーティーがやって来てしまった。
「……」
正直、ずっとずっと部屋に閉じこもっていれば、私の安全は保証されてもう何もかも解決なんじゃないかって思ってる。
この際成績にプラスされるダンスもいらん。
そもそもドレスとか用意してないしね。
ただ、
「さすがにまずい」
授業を受け、厨房へ行き、部屋に閉じこもる生活は、確実に私の脂肪蓄積生活だった。
確実に太ってきている。
身体を動かしたい。あと、木登りがしたい。
今日はハロウィンパーティー。
不参加の人はそうそういない。
ということは。ということは。
レギュラスも成績が関係してくる以上、私以外のパートナーを見つけて参加するだろう。
問題のエイブリーマルシベールは、今日一緒に勉強会(?)する予定だったけど、私の本気の逃走劇のおかげもあってここ最近私に絡んで来ることはなくなった。
ジェームズはなんやかんやリリーがいる。
ということは。ということは。
外に出て遊び放題なのでは。
「準備しよ」
思い立ったら即行動。
久しぶりに校内を気ままにブラブラできる喜びは、私の足を浮き足立たせた。
「来たね」
「遅い」
まさか。
まさかさ。
談話室で出待ちされてるとは思わんじゃん。
話し声も物音も聞こえない、人の気配もしない、p無音の談話室に。人がいるとは思わんじゃん。
まさか、エイブリーとマルシベールがいるとは思わんじゃん。
「久しぶり」
「傷もだいぶ良くなったな」
「あれからだいぶ避けられてたもんねぇ」
「というか部屋にずっと閉じこもってたからな」
さて。
私は一体どうすればいいんだろう。
光の速さで部屋に戻る。
……これは駄目だ。相手は無言呪文を使える化け物な上に、逃げの姿勢は確実に相手を怒らせる。
当たり障りのない会話をする。
……無難な気もするが、相手のペースに飲み込まれてしまう。そうなったら終わりだ。却下。
無視をする。
……これが一番無難だろうか。
「……」
「……あれ、無視?」
「嫌われちまったなぁ」
「エイブリー、君が手加減しなかったからだよ」
「あれ手加減難しいんだよ」
「なら……次は手加減しやすいのにする?」
「嗚呼……良いな。何にする?」
「僕まだ磔の呪い上手くかけれないんだよね」
「俺も教えて貰ったばっかだし手加減は難しい
なぁ」
「うーん……じゃあ……縛って……何かする?」
「……悪くない。俺丁度溜まってたんだよな」
「へぇ、どっちが?」
「どっちも」
「サンドバッグ兼性処理かぁ……それこそ手加減できる?」
「難しいな」
黙って聞いてれば、穏やかではない会話が繰り広げられていく。
……高度な呪文も使えるし、前々から思ってたけど。
この2人本当に14歳?
14歳って友達をサンドバッグにしたり性処理に使おうとする?
少なくとも私はしないかな……。
「ふ、二人はさ」
「ん?」
まずい、と思った時には、もう私の口から言葉がするすると流れていった。
「私のこと……どう、思ってる?……友達をその……そういう風にしようって、普通は……考えなくない?」
恐る恐る、けれど確かに。私は私の疑問を二人に伝えた。
すると二人はきょとんとした表情で、お互いがお互いの顔を見合わせる。
「どう、って」
「生憎、俺達は普通じゃないからなぁ」
「ハルカのことは友達としか思ってないよ」
「……嗚呼、でも、お前が俺達以外の誰かと話しているとすっげえ苛つく」
「あと僕達以外の名前を出したりとかね」
「レギュラスがツルノ家にあれこれ言ってるってのも、あいつとお前を殺そうか、って思ったくらいには腹立ったな」
「マルフォイにキスされた時もだね。どっちも殺したくなったよ」
「あとは、お前が俺達以外の奴に笑顔を見せてんのも気に食わない」
「なんなら、僕達以外に顔を見せるのも、声を聞かせるのもかな」
「だからここ数週間は良かったよな」
「うん。ハルカが部屋という狭い空間に閉じこもってくれて、僕達も安心できたよ」
「ずっと俺達だけを考えて、見て、聞いて、感じてればいいのにな」
目眩がする。頭も痛い、耳鳴りもする。吐きそうだ。
なんて歪んだ"友情"なのだろう。
何より、計らずも私は二人の思い通りに動いて、考えてしまっていた。
悔しい。
「俺達、なんだね。どっちか片方、じゃなくて」
「当然だろ」
「だって僕達は」
「「友達だから」」
…………友達。
友達、友達、友達。
友達って何なんだろう。
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