Funny


ホグズミード当日。
正直二人が言ってたことはめちゃくちゃ怖いことなので、飴だけ買ったらさっっっと帰ってくる。
任務は飴の購入だ。いいな?自分。


「……」

「おやおや、これはこれは。我がスリザリンのツルノ嬢ではないか」

「……」

「一人でホグズミードとは、私がエスコートをしてもよろしいかな?ああ、安心してほしい。シシーや他のレディ達は今日はいない」

「……」

「きみはスリザリンであり、そして高貴なる血が流れている。……マグレと言ってもね。話をしてみたいとずっと思っていたんだが……きみのナイトには参ったよ」

「……」

「そうだ。あそこ……見えるかな?あの目を引く石造りの建物が見えるかい?あそこのケーキが美味しいんだ。一緒にどうかな?」


ハニーデュークスどころか、ホグズミード村にすらまだ辿り着いていない道中。
大変厄介なマルフォイ先輩にエンカウントしてしまった。
しかもナイトだのなんだの、色々つっこみたいところであるが……つっこむ暇も、そして拒否する暇も与えてくれない。
スリザリンは横暴な奴だらけだ。
少しだけ歩幅を大きくする。


「私はね、ツルノ嬢。ツルノ家にも、ハルカにも興味があるんだ。」

「はあ……」

「エイブリー家とマルシベール家。そしてブラック家。魔法界に名を轟かせる名家が、きみを欲している」

「はあ……?」

「きみも知ってると思うが、私はシシー……ナルシッサという許嫁がいる。彼女はブラック家だからね、きみの話はよく聞いているよ」

「はあ……」

「弟くんがいるだろう?シシーの弟ではないが……ブラック家の本家の」

「ああ……」

「彼のね、婚約者にって。正式にツルノ家当主に申し出をしているらしい」

「はあ……、…………えっ!?」

「だがそれは受諾されていない。何故だか分かるかい?」

「え、ええ……」

「きみの父君は、どういうわけか血にこだわりを持っていないようで。結婚相手は娘自身に決めてもらうと言ってきかないらしい」

「はあ……」

「まあエイブリー、マルシベール両家からの圧力っていう噂もあるけどね」

「圧力……?」

「二人はたいそうきみを気に入っている。気に入り方はどうであれ、ね。それにはきみも気付いているんじゃないかい?」


いいえ。
言葉をぐっと飲み込み、はあ、とまた一言呟く。
……私より私を取り巻く環境に詳しい先輩は、それを私に教えて一体どうしたいんだろうか。


「きみは考えてることが顔に出やすいようだ。それじゃあ……教えてさしあげよう。先も言ったが、私はきみに興味がある。その興味とは、」


――、



「……!?」



「恋情だよ」



ちゅ、と。
軽く、軽く、先輩の唇が私の唇に当たった。
柔らかいとか、そういう感想しか出てこない程に私は冷静で、そして混乱している。


「な、なん、な、なに、な、」

「このことはシシーに秘密にしておくれ。……残念。時間のようだ。それじゃあまた今度。」


ヒラヒラと手を振りながら、相も変わらずスマートにホグズミード村へと歩いて行ってしまった先輩。
時間だ、と言いながら目を向けた先には、人を一人……とは言わず、無差別に大量に殺していそうなエイブリーとマルシベールがいた。





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