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守りたい

空は薄暗い紫色をしていて、無数の流れ星のようなものが空を走っていた。
綺麗に見えるはずの月も、不気味に思える。
聴覚機能は様々な機械の音を聞き取り、これから何をされるか分からないと言う事に恐怖を感じずには居られなかった。
下半身は縄で縛られて上手く動けず、口はガムテープで塞がれて言葉を上手く喋る事も出来ない。

――ワイリーに連れて来られて、この状態になった。
普段通りに研究所で過ごしていた時起きたワイリーの襲撃。
研究所は殆どの部分が破壊され、休日だったメンバー全員がそこにはいた。
唯一いなかったのは――買出しに出ていたロックだけだった。
ボク達を使って、世界を征服すると全国放送をかけたワイリー。
そんな事、ボク達は何があろうと協力する訳がなかった。
――仲間が改造されていく光景を目の当たりにするまでは

「次はお前の番じゃ。この天才科学者ワイリー博士によって、より良いロボットして生まれ変われる事を光栄に思うのじゃぞ?」

そう言ってワイリーが歩み寄ったのは――アイスだった。
怯えた様子を見せるアイス。
今にも泣きそうな表情で、自由の効かない身体を何とか動かして後退りした。
気付いた時、ボクは座り込んでいた身体を何とか動かして、アイスの前に勢いよく飛び出していた。

(それ以上近付くな)

声に出せない言葉を表情に出して。

「なんじゃ、タイムマン。先に改造して欲しいのか?」

ワイリーはそう言いながら不敵な笑みを浮かべる。
ボクの後ろにいるアイスの表情は気になったが、ワイリー以外を見る余裕は今のボクには無かった。
ふと、背中に重みを感じる。
アイスが、全身をボクに寄せて来たからだ。
驚き、コアが高鳴るのを感じた。
その時ようやく若干の余裕が生まれ、アイスを見る事が出来た。
しかし、表情は酷く悲しそうで、顔を何度も左右に振った。
何かを言いたそうに。

ボクはそんなアイスに、微笑んで見せた。
微笑んで見せた、つもりだ。
大丈夫だ、そう伝えるように。
自分でも驚いた――こんな時に、普段すらあまり浮かべる事のない微笑みを見せた事を。
アイスは穏やかな、しかし恐怖を感じているのも伝わってくる表情を見せて、ボクの背中に全身を密着させてくれた。
ワイリーが先程以上の不敵な笑みを浮かべて、ボクへと歩み寄ってくる。

――視界が暗くなる。
チップが取られるのを感じた。

その後の記憶は暫くなかった――

***

ワイリーに連れて行かれて、そこで改造される前の話が書きたかったんです…。
改造されそうになるアイスをタイムはかばってたら良いな…と…´`* 2015/04/29
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