俺はいつものようにパソコンと向かい合い、情報収集に励んでいた。趣味の延長で始めた仕事ではあるが評判は上々で、俺に情報を求める顧客は後を絶たない。最近では池袋に行くことさえままならないほど忙しく、朝から夜まで座りっぱなしで一日を過ごすことが多くなっていた。
波江にも朝から出勤してもらい、なんとか定時で帰してあげたい気持ちはあるのだが如何せん、忙しすぎてそれも難しい。更に彼女には食事まで作ってもらっている。彼女は本当に良く出来た秘書で、仕事面も素晴らしく優秀に加えて料理の腕も素晴らしい。きっと愛する弟の為に料理の腕を磨いたのだろう。実に美味い。

目まぐるしいほど忙しくても、良く出来た秘書は必ず食事を用意してくれる。そしてその食事が必ず美味いとなれば、いくら猫の手さえも借りたくなるような状況であろうと俺は仕事を中断してでも波江の用意する食事を食べる。
彼女を雇うまではサプリメントやカロリーメイトなどで済ませていた食事は激変し、不摂生極まりない俺の食生活は改善された。仕事面でも彼女には大分助けてもらっているが、生活面でも彼女には十分お世話になっている。まったく本当に良く出来た秘書である。


そんな生活に慣れてしまった俺は、いつしか頼んでまで波江に食事を作ってもらうようになった。



「なーみーえー……今日のご飯はぁ?」

「まだ決めてないけど、何か希望でもあるのかしら?」

「んー特に希望はないけど、強いて言うなら温かいものがいいな。最近寒いし」

「なら鍋ね。手軽だし」

「いいね、鍋!鍋は好きだよ」

「だったら少し食材が足りないから買い出しに行ってくるわ。私の仕事は区切りついたし」

「あ、それならついでにこの書類届けてもらってもいい?この会社、池袋にあるから俺が直接行くより君が行く方が絶対早く帰ってこれるし」

「…ああ、平和島静雄に見つかったら大変ですものね」

「そうそう。今はシズちゃんと鬼ごっこしてる暇ないし、だから頼んだよ」

「分かったわ。貴方はそれまで仕事に一区切りつけてちょうだい」

「はーい」



そんな会話を交わし、波江は食材を買い揃えるためと俺のお使いのために池袋に向かって行った。そして俺は鍋を心待ちにしつつも再びパソコンに向かい合った。

後は波江が帰ってくるまでにある程度の仕事を終わらせ、波江が用意してくれた鍋を食べて和む予定だった。
野菜をあまり好まない俺に、きっと波江が「きちんと食べなさい」と咎めの言葉を吐くのだろうな、とそんな想像をしていたのだ。






 
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