燦々と降り注ぐ日輪を全身で浴びながら、俺は屋上のフェンスに凭れて空を仰いだ。むかつくぐらい真っ青に晴れた大空とは違い、俺の心は曇り気味で少しだけ晴天である本日の青空が恨めしい。



「臨也、いつまでも拗ねてないでいい加減ご飯食べなよ」

「……別に拗ねてないし」

「どこがだよ。不機嫌丸出しの面してよく言うな」

「うるさいシズちゃんのばーか死ね」

「はぁ……今の手前に言われても怒る気しねぇ…」



そう言って、購買のパンに噛り付くシズちゃんにもう一度うるさいと言い捨て、視線を彼よりも後ろに向けた。そこには屋上と室内を繋ぐ唯一の扉があり、それは固く閉ざされたままで開く気配はない。それだけで曇り気味な俺の心ではポツリポツリと小雨が降り始める。早く来ないかなあ、と心の中で呟きながら俺は溜息を零した。
それが聞こえたのか、シズちゃんは鬱陶しそうな目で俺を睨み付け、新羅はやれやれとばかりに苦笑する。けれど今の俺には二人がどんな反応をしようが関係ない。今は一刻も早く、あの扉が開くことを祈るばかりだった。



「……前から思ってたけどさ、どうして臨也はそこまで門田君に固執してるんだい?」



突然、新羅が何の脈絡もなくそう尋ねてくる。どうして門田君に固執してるんだい、新羅はそう俺に尋ねてきたのだ。

どうして?寧ろ、そんなことを聞く新羅の方が俺からしてみれば「どうして?」だ。何故そんなことわざわざ改めて俺に聞く必要があるのだろうか、意味が分からないな。やっぱり首なしにしか興味ない変態解剖マニアには分からないのだろうか。



「そういやそうだな。門田にだけはいっつもベッタリだし、妙に素直だしな」



何てこった。変態解剖マニア以外にも分かってない奴がここにもう一人いた。いやでもコイツは化け物だし、俺みたいな人間の心は理解出来ないんだろうな。よし理解した。
けれど、だとしてもコイツらはあまりにも分かってなさすぎじゃないか?だってあのドタチンだよ?あんなに優しくて男前で格好良い人間なんて、俺は他には知らないね。ていうか、いるの?いるわけないよねぇ、だってドタチンだもん。誰も足下にすら及ばないな。流石はドタチン、格好良すぎる。



「…………色々考えているとこ悪いけど、全部口に出てるよ臨也」

「あ、マジで?ドタチンのことを考えると口が勝手に動くんだよね。うっかりうっかり」

「……本当に門田だけには良い子ちゃんだな。いつからそんな風なんだよ」

「いつから…?」

「あ、それは僕も気になってたんだよね。だって僕達が門田君と知り合ったのは君繋がりだし、その頃には既にこんなんだったし」



ねぇ、いつから?と首を傾げながら楽しそうに尋ねる新羅と、何故か真剣な表情で先を促すようにじっと俺を見てくるシズちゃん。新羅は兎も角として、シズちゃんが俺のことを聞いてくるなんて珍しい。それだけ俺がドタチンに懐いていることが不思議なのか。俺にとっては当たり前ことだけど、二人にとってはそうではないらしい。そっちの方が不思議でしょうがないけどね、俺にしてみれば。

それに、いつからだって?そんなこと聞くまでもないことだろう。俺にしてみれば愚問である。



「最初からだよ」



俺は、あの日――――入学式の、この場所で、ドタチンと初めて出会ったあの時から、彼に惹かれたのだ。






 

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